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しおりを挟む「慶也!!」
校舎の中に入ろうとしていた人物を呼び止める。
幼い頃からずっと見続けていた背中に向かって、琥珀は思わず声をかけた。
記憶を取り戻した今、記憶をなくす前にもその姿を見ていたはずなのに、なぜかとても懐かしく感じた。
「琥珀…?」
慶也は驚いたように目を見開き、琥珀の方へと振り向いた。
そして、じっと琥珀の顔を見つめる。
「ちょっとだけ話したい。いい?」
「…うん、大丈夫だけど…」
戸惑いを隠せないまま、慶也は琥珀の後をついて歩いた。
着いた場所は、琥珀が事故で記憶を失う直前にいた場所だった。
「琥珀、ここは…あの時の…」
「慶也さ、この前言ってただろ?
俺が風邪引いた時、なんで俺が慶也の部屋にいたかって」
「…うん」
「あれさ、俺がせっかく慶也の部屋に遊びに行ったのに、帰りたくなくて駄々こねたから、慶也の母さんが仕方なく慶也の部屋で看病してくれたんだよ」
琥珀の言葉を聞いた瞬間、慶也の表情が固まった。
まるで息を呑んだように目を見開く。
「琥珀、まさか…」
「あと、遠足のお菓子、俺が強奪したとか言ったけど、それは言い方酷すぎる。
あのあと、ちゃんと駄菓子買って返したじゃん」
慶也は固まったままだ。
「慶也のお父さんと三人で行った遊園地も最高に楽しかったよ。あの時は二人で必死に俺のこと探してくれてありがと。」
「っ…琥珀…記憶、戻ったのか…?」
「うん」
琥珀は口元に小さな笑みを浮かべたまま言った。
その瞬間、慶也からふっと体の力が抜け、勢いよく琥珀のことを抱きしめた。
「良かった。本当に良かったっ…」
慶也は片手で自身の顔を覆い、込み上げる何かを押さえ込むように唇を噛み締めた。
「もう一生記憶が戻ってこないんじゃないかって、あの日から毎日不安だった。
もっと大切にしたら良かったとか、初めからやり直したいって数えきれないくらい後悔した。」
そう言うと、慶也は琥珀の存在を確かめるように強く抱きしめた。
耳元で何度も「ごめん」と繰り返す慶也を引き離すことなく、琥珀は言葉を続けた。
「俺の方こそ、迷惑ばかりかけてたよな。
俺が小さい頃から、慶也はなんだかんだ言いつつずっとそばにいてくれた。
慶也のおかげで全然寂しい思いなんてしなかった。」
「違う、それは俺が琥珀と一緒にいたかったからだ。」
慶也は琥珀の背中に回していた腕の力を強めた。
「慶也が初めて彼女作った時、ムカつきすぎて、慶也のこと一週間無視したりしたよな」
琥珀は自身の行動に呆れたように笑った。
それを聞いた慶也は、渇いた笑い声を漏らす。
「でも、それは本当に俺が慶也のことを好きだった証拠だよ。
大好きだった。どんな人が現れてもずっと慶也だけを好きでいられる。
彼女ができてもそんなの関係ないってくらい好きだった。
だからこそたくさん迷惑もかけたし、慶也の邪魔をたくさんした。ごめんなさいっ…」
琥珀の目には大粒の涙が浮かぶ。
抱きしめられた慶也の肩に、ポタポタと涙の跡が残る。
「琥珀のせいじゃない。全部、曖昧な態度ばかりとってた俺のせいだから。
ずっと伝えられなかったけど、今、正直な思いを言いたい。」
慶也は琥珀の肩に手を置き、真正面から向き合う形になると、はっきりと告げた。
「琥珀、ずっと好きだった。」
「え…?」
琥珀の耳には周りの音は全て消えて、慶也の声だけがはっきり聞こえた。
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