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優子暗殺計画 2

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 優子暗殺計画 2


ー中野優子はEカップのくそったれー

 川瀬理恵は昨日出会った女子の事が忘れられない。同性愛の甘い感情などではなく、メラメラと燃える嫉妬の炎が理由。

(日本で一番巨乳な小6はわたし……ずっとそう思っていたのに)

 朝からずっと胸中のプライドはガタガタだった。だからなのだろう、今日はDカップの谷間やブラをチラ浮かせたりはしない。いつもなら勝ち誇るように悩め香しくサービスし、周囲から尊敬や焦がれるような目線をもぎ取っていた。理恵の谷間やブラを拝みたいと思う男子はたくさんいて、彼らにしてみれば理恵は女神さまのようなモノだった。

(まさか同じ小6でEカップがいるなんて……)

 授業中も表向きはふつうだが、内心は内戦のように乱れまくる。白いノートにシャーペンで何度も同じことを綴った。まるで呪いがけみたいに何度もくり返す。

ー優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべし。優子消えるべしー

(ダメだ……)

 シャーペンの芯を折ってしまうほど心に平穏は訪れない。なんとかならない? と思ったので、暗殺できないかと考えてみたりする。

 暗殺。人知れずターゲットを歴史のゴミ箱に葬ること。古来なら毒殺が主流だったという。だが隠し事が不可能な近代において完全犯罪はほぼ不可能。ではどうすればいいのか……どうすれば中野優子を暗殺できるのか……理恵は昼休みの間ずっとスマホで検索した。お手軽にできる暗殺方法! みたいな記事はないのかと探した。そして何も見つけられなかった。

「チッ……どうすれば優子を暗殺できるのかなぁ……」

 学校が終わっても暗殺って2文字が頭から離れない。

「マジで暗殺ロボットとか欲しいわ」

 しつこいまでに考え続ける。カバンを肩にかけ、Dカップの胸に腕組みをし、よく車にはねられないな……って感じに歩き続けた。

「あん?」

 ハッと気がつくと思いもしない場所に来ていた。自分の帰宅コースからは大きく外れている。とあるトンネルが目の前にあって、幽霊とか死者のたましい噂が脳をピリピリさせる。だけどもずーっと向こうにある出口の明るさがちいさく見えるから、勇気をもって進んで行こうとする。

「幽霊が出たら手なづけて優子を襲わせたいわ」

 なかなかたくましい事をつぶやきながらトンネル内へ入った。

「ぅ……」

 薄暗くて生っぽい風が頬に当たる。それだけでもちょいドキドキするのだが、前方に誰かがいると見えたらヤバいって気もする。

(ま、まぁ……だいじょうぶっしょ)

 怪しい人影っていうのは律儀に端によって座っている。何やら前に並べているが、気にせず進んで無視すればいいと理恵が歩き続ける。

(うん?)

 歩きながらそれとなく目を向けてギョッとする。ウソか真かぶっそうなモノが並んでいるではないか。たとえば銃器だったり手榴弾だったり、猛毒なんでしょう? とか思えないデザインの瓶だったり、刃物だったりオノだったり日本刀だったり、弓矢だったり生きたサソリだったりなどなど。

「ちょっとそこのお嬢さん、お待ち!」

 不意に声をかけられた。

「はひぅ!」

 変な声を出しながら青ざめピーンっと背筋を伸ばしてしまう。

「なにか入り用かな?」

 怪しいを通り越して、すぐ逮捕しろよ! と言いたくなる感じの男がいた。年寄りっぽいから少しばかり薄められるが、理恵の心臓はドカドカやりまくるバスドラみたいな状態。

「な、なにって……べ、べつにわたしは……」

 ドッキン・ドッキンと心臓を鳴らしながらも、暗殺に使えそうって感じの代物には目が行く。

「ふふん、誰かを葬りたいとか思っておるな? そういう心がドロドロの油みたいに吹き出ておるよ」

 なんと相手に自分の状態を見透かされてしまった。ジャストヒット! という感じだから、バカ正直にググっと息を飲んでしまう。

「まぁまぁ気にする事はなかろう。今どきは腹の立つことが多い世の中じゃからなぁ」

「あ、あのさぁ……並んでいるモノって……ホンモノ?」

「もちろんすべてホンモノじゃよ。大特価で売ってあげるために並べているんじゃよぉ」

 ここでククっと男が笑う。ひんやり悪魔的でチョーおそろしいというのに、話そのものには惹きつけられた。脱日常。問答無用の破壊。それら不謹慎が理恵の好奇心をツンツンするせいだ。

「実はさぁ……暗殺したいって思うやつがいるんだよね」

 理恵は手短に要点を抑えながら事情を説明した。

「それなら手榴弾を投げつけるかの?」

「手榴弾……」

 男に言われて理恵はちょっと考える。アニメやマンガなどで知っている限りの情報を引っ張り出す。手榴弾はおそらく投げるとキブンがいいだろう。だけども、それなりの距離から投げねばならないし、その姿は暗殺とは言い難いように思える。

「なに? 遠距離攻撃がしたいと?」

「そ、そりゃぁ……距離のある方がいいじゃん。どこから攻撃したかわからなくてさ、それでターゲットが消滅したら最高の仕事ってことじゃない?」

「それもそうじゃぁ、最高の仕事とかいい表現を使うのぉ」

「ま、まぁね、えへへ♪」

「それならこのスーパーバズーカーとかオススメじゃ!」

「スーパーパズカー?」

「そうじゃとも。その飛距離はなんと10km、10kじゃよ? 歩いたら3時間くらいかかるような距離でも威力を保てるのじゃよ? すごいじゃろ! しかも女の子でも担げるくらいに軽いんじゃぞ?」

「10k? ちょ、ちょっと待って、ちょっと待って!」

 理恵はまずクッと広げた両手の平を見る。それから指を折りながら想像してみた。10kとはどういう距離なのか? を理解しようと努力を開始する。

 10k……意外とわからない。けども怪しげな男は、歩いたら3時間くらいと言った。その事を利用して考えてみると、なんとなく透けて見えてきた。

(わたしの学校と忌々しい優子がいる学校……これって……3k? 4K? だったらバズーカーって楽々届くじゃん! 優子がいる場所に向かってぶっ放せるじゃん!)

 カチっとコンロのスイッチ音らしきモノが聞こえた。ボワ! っと悪い火が心の中に立ち上がった。そんなのいけないことだよ! ではなく、すげぇ! やってみてぇ! という感情が炎を支配する。

「どうじゃ? 撃ってみたいと思うじゃろう?」

 タイミングよく興味を煽る男の声が耳に入る。

「で、でもさ……めちゃくちゃすごい遠距離なんて、向こうが見えないじゃん」

 そこは大事なところと理恵がつぶやく。

「心配は無用じゃ! 装着されているスコープなら、10k先までしっかり見える。しかもロックオン機能までついておる。な? すごいじゃろう? まさにファンタスティックじゃろう?」

 男の説明というのは、理恵の心をムンズと掴んでしまった。おそろしい話でありながら、これはもう買うっきゃないっしょ! という流れになってしまう。

「それでその……いくら?」

 理恵がよろしくないドキドキで質問をかます。

「ウルトラ大特価! バズーカー本体は1万円! 弾丸は一発5000円! どうじゃ? これはもう買うしかないじゃろう?」

「えっと……合計すると……弾丸ニ発で購入するなら2万円」

 理恵の胸にすーっと悩め香しい風が吹く。Dカップのふくらみにグッと腕組みをすると、真剣そのものな表情でひっしに考えた。

 買い物に必要なのは2万円。ふつうに考えればひねり出せない金額。しかし! 理恵にはお年玉貯金というのがあって、2万円までなら自由に引き出すことを許されていた。つまりその気になれば買えてしまう。日常破壊の一撃を優子に向かって放つことが可能。

(で、でもなぁ……バズーカー放ったら優子はどうなるんだろう)

 ここで一度いい人思考が舞い降りる。このいい人思考っていうのは実に曲者だ。人として正しいって考えは、結局人を成功に導かない。やさしい人間は負け犬が約束されている。臆病な人間は敗残者が確定。まぶしい成功をゲットするためには、いい人思考は役に立たないのだと……理恵の意識が悟りに向かっていく。

「チッチ、やさしい人間なんて損するだけじゃよ」

 これまた絶妙なタイミングで男が煽ってきた。

「人生で成功するのはろくでなしと決まっておるんじゃ。よい人でいたいって事は、惨めなおちぶれに甘んじるって事なんじゃ」

 男はグイグイと理恵の背中を押す。はっきり言って最低な人間であろうが、商売という観点で言うならすばしい。成功とは非人間的なのだと教えてくれる。

「あ、あのさ……コンビニでお金下ろしてくるから……それまで待ってくれる?」

「午後18時くらいまでは待とう」

「今すぐ下ろしに行ってくる、わたしカード持ってるし2万円までなら抜いても怒られない。だからスーパーバズーカーと弾丸ニ発は誰にも売らないで! 約束だよ? すぐ戻ってくるから」

 川瀬理恵が急ぎ足でコンビニへと向かっていく。形容し難い興奮がDカップの胸を揺さぶる。急ぎ足だからユッサユッサではなく、不謹慎な物語へのワクワクで揺れ動く。

(2万円で優子を葬れるなら安いもんだよ)

 コンビニ内のATMで金を引き下ろす。1万円札が2枚っていうのは、ほんとうなら使うことに躊躇するような金額。しかしこの場の心はまったく怖気づかない。2万円を笑って捨てられるなんて生まれて初めての経験だった。

「おぉ、えらく早いお帰りじゃな」

 男は戻ってきた理恵をホメる。

「2万円あるから、バズーカー本体と弾丸ニ発もらう」

 理恵が金の入った封筒を差し出そうとする。だがここで素朴な疑問も付け添えた。どう見てもバズカー本体に弾丸ニ発は持ち歩くのが難儀。仮に持ち歩いたとしても人目を盗むのは不可能。すぐ通報され逮捕されてしまう。それでは引き下ろしたお金が死に金に転落してしまう。

「心配はいらん」

 男はそう言うとバズカー本体にあるスイッチを理恵に見せながら押した。するとどうだろう、バズーカーは理恵の手の平に乗るようなサイズにまで小さくなった。

「もう1回押すと元の大きさになる。すごいじゃろう?」

「すご……でも弾丸は?」

「弾丸が入ったこのケースも、このボタンを押すと小さくなって、もう一度押すと元に戻る。しかも小さくしたときは軽くなって全然重たくない。すごいじゃろう? 魔法みたいな話じゃろう」

「なんか都合のいい話が揃いまくりって感じだね」

「固いことは言いっこ無しじゃ! そんなつまらん人間になっては成功できんぞ」

「じゃぁこれ2万円」

「ではバズーカー本体と弾丸の入ったケースじゃ」

 こうして両者は悪しき交換を成した。片方は2万円を、片方は物騒なモノを、それぞれに差し出して受け取って売買は無事に終了。

(やった!)

 買った品物をカバンの中に入れる理恵がいた。ドックン・ドックンと緊張しながらトンネルの出口へと向かっていくのだが、罪悪感を追い払うため自分に言い聞かせるためつぶやいた。

「ふん、何をやってもバレなきゃ罪にはならないんだからね!」
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