【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

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番外編 

駄犬の嗅覚

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 団長が変だ。

 

 ファイスは最近、団長の雰囲気が変わったと感じていた。

 たまに少しだけ緩んだ顔で微笑んでいたりする。それを見てしまうと、鼻先がかゆくなるようなムズムズした気分になる。

 嫌な感じではないが、見ているこっちがどうも落ち着かないのだ。



「団長、何かいいことあったのか? 最近なんか顔が緩んでるぞ」

 そんなことを言ったら、「い、いや、特にはないが。そんなに緩んでいるように見えるのか」と、逆に聞き返された。

「うん、ちょっと変だぞ」

「……変か」

 口元を手のひらで覆って擦りながら、団長は難しい顔をした。

「わかった。気を引き締めよう。指摘してくれてありがとう、ファイス」

「う、うん」

 団長の顔が、少し赤い。

 手のひらで口元を覆ったまま、ふらふらとした足取りで歩いていってしまった。

「大丈夫なのか? あれ……」

 変になっている理由は、結局わからなかった。





「なぁリュデ、団長見てるとなんかムズムズするんだ。どうしてだ?」

 昼時に同僚のリュディ-ドに質問すると、「……なんですかそれは」と聞き返してきた。

「上手く言えないけど、変なんだ。団長が」

「変ではありません。良いことがあったんですよきっと」

「なんだよそれ。リュデ、知ってるんだろ。教えろよ!」

「心当たりはありますが、今の段階では貴方に言っていいのか……いえ、団員に知られてもいいのか……判断できません。その、団長の引退後の立場にも関わることなので」

「引退後? 団長、もう引退するのか!」

 ファイスはぎゅうっと胸が痛くなって、ついリュディードの腕を掴んで引っ張ってしまった。

「違いますよ。すぐではありません」

 ぐいぐいと引っ張り返しながら、リュディードがこつんと頭を小突いてきた。

「いてっ!」

「大人しくなさい。変なのではなくて、団長は単に幸せなんですよ」

「幸せ……?」

「ええ。だからそっとしておいてあげてください。いずれ、公の形で何かしらはっきりわかる日がきますから」

「うーん、そうかぁ。団長、幸せなのかぁ! まっ、それならいいや!」

「そのときがきたら、団長がもっと幸せになれるように貴方も力を貸してください。私も一緒に頑張りますからね」

「わかったぞ! 俺も頑張る!」

「ふふ、よろしくお願いしますね」




 ……やはり、ファイスは鈍いようでいて妙なところで鼻が利く。


 ニコニコと無邪気に笑っているファイスの顔を見ながら、リュディードはそう思った。

 彼なりに察していたのだと思うと、胸が温かくなるのと同時に頼もしくも感じたのだ。


 引退した後も……副団長ではなくなっても、この人懐っこい駄犬と肩を並べられる日が続くだろう。


 そう考えると、先ほどとは違う温かさで胸が満たされていく。




 

 リュディ―ドの口元は、本人も気付かないうちに幸せな笑みの形に緩んでいた。





 ※とてもいい距離感。
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