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本編
レゲムアーク皇国来歴
しおりを挟む――ザルトベルン大陸中部。
大陸最高峰のエルトラン山脈を背に位置する、レゲムアーク皇国。
その裾野の先には、大平原エクスプレドが広がっている。湿地帯が広く分布し、多種多様な動植物が独特かつ豊富な生態系を形成した平原は、その広大さゆえに外敵の侵入を困難にする。
さらに西に大渓谷、東に荒々しくも清らかな水を湛えた大河が横たわり、天然の要塞を形成している。
かつて魔導の民を率いて皇国を興したレゲムアーク初代皇王フォーレ・レゲムアークは、平原の南端を国境と定め、北部に広がる平原全体を不干渉地帯とした。
長く、平和な時代が続いた。
水源に恵まれた豊かな大地と、魔導技術によって育まれた繁栄を謳歌する皇国だったが、あるとき大平原エクスプレドの向こうから脅威が訪れた。北部に散らばる小国を侵略し、勢力を拡大したヴァイド帝国が皇国へと攻め込んできたのだ。
戦を知らなかった皇国の民はヴァイド兵の侵入により恐慌状態に陥り、多くの血が流れた。そしてその爪痕は深く残った。
だが、ヴァイド帝国は戦いに勝利できなかった。
強き魔導の血脈を受け継ぐ皇国貴族らの果敢なる反撃と、魔導公ゼス・トウルムントの驚異的な英知によりもたらされた攻撃魔導術式によって、遠く国境の向こうへと退けられたのだ。
こうして国境は戦線となり、以降十五年の長きに渡り攻防戦を繰り返している。
皇国を守る騎士は、現在総勢二千名あまり。単純な数でこそ帝国の軍には敵わないが、いずれも魔導に優れた精鋭揃いである。彼ら魔導騎士団の活動する国境駐屯地の中で、もっとも危険な戦線は、第一魔導騎士団駐屯地だ。
――ここに、一人の新人魔導騎士が配属される通達が届いたのは、皇国歴二百二十五年の早春のことだった。
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