【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

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番外編 

南街特別訓練・5「夕暮れの帰還」

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 もうすぐ陽が暮れるという頃合いに、二人は駐屯地に帰り着いた。

 
 馬を厩に戻して水と飼葉を与えたところで、セディウスとリュディードに捕まってしまった。

「貴方という人は!」

「いってぇ!」

 お馴染みのリュディ-ドの拳骨が、ファイスの脳天を直撃する。

「まったく、なにが特別訓練ですか。変な書き置きを残していくんじゃありません! 出かけるのなら手順を踏みなさいといつも言っているでしょう。事前の書類の一枚や二枚、面倒くさがらずに提出なさい」

「うう、書類……、嫌いだ」

「好き嫌いの問題ではないと、何度言ったらわかるんですか貴方は」

 リュディードの小言の矛先は、当然ながらネウクレアにも向けられる。

「ネウクレア、ファイスの真似をしてはいけませんよ。きちんと事前に申請をしてください。心配ですから」

「リュディードが『心配』だから事前に申請が必要……了解した」

 ネウクレアが『心配』という私情を挟んだ言葉を拾ったのを受けて、リュディードは自分の失言に気付いた。そして、「あっ、心配というのはその、語弊がありましたね」と、慌てた顔で取り繕う。

「その、つまりですね、国の防衛に関係している騎士団に所属している以上は、休暇中の素行についても管理する必要があります。そのための手続きは必須なんですよ」

 やや早口で公的な立場の説明をして、失言を揉み消す。

「そうか。理解した」

「……心配したぞネウクレア、お前はどうして何も言わずに外出したのだ」

 怒るでもなく努めて穏やかな声でセディウスが問い掛けると、ネウクレアは「隠密行動だからみんなには内緒だと、ファイスから指示があった」と、ありのままの答えを返す。

「……ふむ。そういった場合でも、騎士団長である私はお前たちの行動を把握しておく必要がある。今後は特別な訓練であろうとも、私に報せてくれ」

「了解した。内緒にする場合でも、団長に報せる」

「ファイス! 貴方、ネウクレアになんてことを吹き込んでいるんですか!」

 彼らの横合いで、リュディードの二発目の拳骨がファイスの頭に振り下ろされた。

「いてっ!」

「まったく、ろくなことをしませんね。南街で何かしでかしていないでしょうね?」

「お、俺は何もしてないぞ。あっ、そうだ! 団長、南街でネウが人さらいをボコボコにしたぞ!」

 突飛なファイスの報告に、二人の目が見開かれた。

「……それは、一体どういうことなのだ。詳しく説明をしてくれ」

「ファイス、貴方が付いていながら何があったんですか!」

 辛うじて冷静を装えたセディウスとは対照的に、目を吊り上げてリュディードがファイスに詰め寄る。

 その迫力に圧されて、ファイスは彼から逃れてネウクレアの後ろに素早く隠れた。

「リュデ、落ち着けよ! ちゃんと説明するから! ネウ、頼んだ!」

「了解した」


 ネウクレアは至って冷静に、詰所で答えた内容をそのままセディウスたちに説明した。


「まさか、そんなことが南街で起こるとは……」

 そう言いながらセディウスが眉をひそめ、「はぁ……」と、深いため息をついたリュディードは、頭痛でもしているのか眉間を指で押さえた。

「災難でしたね。人さらいに遭遇したのが、貴方たちで良かったとも言えますけれど」

 これが無力な子どもであれば、今頃はどこかへ連れ去られていた可能性すらあるのだ。

「ネウクレア、怪我はしていないか」

 そうセディウスが問うと、ネウクレアは「無傷」と短く答えた。

「ならばいい。よく無傷で制圧できたな。偉いぞネウクレア」

 セディウスはフード越しに、ネウクレアの頭を優しく撫でた。

「ん……」

 ネウクレアは、されるがままに大人しくセディウスの手を受け入れる。

 そんな二人の姿を目の当たりにしたファイスは、「あれっ? 団長、ネウに凄く甘いな!」と、驚きも露わに叫んだ。

 セディウスは部下に対するさりげない気遣いを欠かさないが、特定の者にこれほど甘い態度で接するのは珍しい。

 ファイスの無邪気な指摘に、セディウスはネウクレアの頭からさっと手を離して「し、指導の一環のようなものだ」と言って軽く咳払いをした。

「貴方がやんちゃ過ぎるんですよ」

 思わず苦笑してしまったリュディードが、ファイスの頭をコツンと軽く小突く。

「反省なさい。貴方のことも……心配、しているんですからね」

 するとファイスは首をすくめて「うっ、ごめん……」と、今度ばかりは素直に謝った。

「さあ、もう陽が暮れる。今日のところは休むといい」

「了解!」

「了解した」

 元気な足取りで天幕の方へ向かうファイスに、ネウクレアが続く。

 何事か話しながら連れ立って歩くその姿は友人同士のそれで、まるで仲のいい兄弟のようにも見えた。

「ファイスとネウクレアは、すっかり友になれたようだな」

 慈しみに満ちた眼差しで二人の背中を見送りながら、セディウスが小さく笑う。

 すると、リュディードがふうっと少し疲れたため息をついて「確かにとても息が合っているようですし、良いことなのかもしれませんが……」と、言葉尻を濁した。

「ファイスのやんちゃさが、ネウクレアに移るのを懸念しているのか」

「ええ。……ですが、ネウクレアは………情緒があまりにも未熟で不完全に思えます。ファイスのような感情豊かな男が付いていた方がいいとは、思っていますよ」

 好奇心旺盛で人懐っこさの塊のような性格をしたファイスは、感情の起伏が小さく受け身になりがちなネウクレアを引っ張り、彼に様々な刺激を与えている。

 時折、今日のように暴走する嫌いはあるが、実に相性のいい関係なのだ。

「私もそう思う。やんちゃをするようなら、お前や私が諫めればいい」

「そうですね。さすがにネウクレアに拳骨を落とすのは、抵抗がありますけれど」

「必要があるならそうすればいい。それも経験のうちだろう」


 ……まるで、手の掛る子どもの話をしているようだ。


 そのことに同時に気付いた二人は、顔を見合わせて小さく苦笑した。

「そろそろ戻るとするか」

「ええ。そうですね」

 そうして夕暮れの陽光が射す中を、ゆったりとした足取りで歩いていったのだった。
 



















































 ――翌日の昼。

「なあリュデ、昨日のネウと団長、親子みたいだったな。団長、息子がいたらあんな感じになるかもな。あっ! もしかしてネウは団長の隠し……(拳骨)いてぇっ!」

「馬鹿ですか、馬鹿なんですね。ええ、知っていましたとも。馬鹿にも程があります(ぐりぐり)」

「いててて! やめろよ!」

「あり得ませんからね。滅多なことを言うんじゃありませんよ、ファイス」

「いてぇ……でも、ネウは団長に撫でられてるとき、嬉しそうだったなぁ。団長といると安心できるんだろうな。団長も顔が凄く優しかったしな!」

「おや、そう見えましたか(鈍いようでいて鋭いですね……思わず頭なでなで)」

「ぬあ! 撫でるなよ! また酔っぱらってんのかリュデ!(両手で頭をかばう)」

「よ、酔ってなんていませんっ……!(手を引っ込めて赤面)」













※南街特別訓練、終了です。
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