【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

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番外編 

『好き』のもっと好きは『大好き』

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 ――最近のネウクレアは、セディウスの天幕に同居している。

 
 全面戦争で負傷した後、看護のために運び入れたときから、彼はここが自身の居場所だと認識してしまったようだ。

 天幕の片隅に、ネウクレアの食料である固形物と飲料液の入った木箱がいつの間にか置かれているのを見たセディウスは、頭を抱えそうになった。


 もともと、寝起きを共にしている状態だったのだから、今さらと言えば今さらではあるのだが。


 結果、食堂ではなくこちらで昼食を済ませることの多いセディウスは、そのたびに彼の風変りな食事風景を目の当たりにすることになった。

「ネウクレア、その食事は変えないのか」
「変更の必要性を感じない」

 テーブルの向かい側で、兜を外したネウクレアは小さく口を開けては両手で持った固形食をかじり、もぐもぐと咀嚼している。

 その姿が、実にあどけなくて可愛い。

「この固形食は、効率的な栄養摂取に最適だ」

「……そう、か」

 その言葉を聞いて、胸が軋むような思いがした。

 ネウクレアは研究機関から離れて一年以上が過ぎた今でも、非人道的な育成の檻から抜け出せていないのだ。

 固形食は手のひら程度の長さの細い棒状で、それほど量はない。飲料液と合わせても小腹を満たせる程度の量だ。

 ファイスが彼を南街に連れて行った際に、串肉一本すら食べきれなかったと聞いた。

 まるで小鳥のような小食ぶりだ。

 それでいて痩せ衰えもせず、肌艶も保たれているのは、固形食と飲料液が栄養価に優れているからだろう。

 固形食を食べ終え、飲料液の瓶を持ってこくこくと飲む姿も可愛い。

 副官二人からの報告で恐ろしい不味さだと知っているだけに、ネウクレアが表情も変えずにいるのが不思議でならない。

 幼少期からこうだとしたら、とうに味覚は壊れていると考えていい。

 食事を終えたネウクレアは立ち上がって、空瓶と固形食を包んでいた油紙の袋を返却用の木箱に片付けた。

 彼の体は特殊だ。

 入れ墨だけの話ではない。色素が失われた髪や肌からして、別の施術や投薬もされている可能性がある。

 安易な考えで常人の型に当てはめて、人並みの幸せを与えることは、難しいように思う。

 だが、それでも、実験体ではなく……心を持つ生身の人間として、ネウクレアの日々に生きる上での楽しみを少しでも増やしてやりたい。

「ネウクレア、お前の好きなものはなんだ」

 食事の手を止めて、布巾で口元を拭ってから問い掛けた。

「好きなもの……」

 ネウクレアはじっとセディウスを見て何度か瞬きをした。そして、淡い色をした唇をゆっくりと開いた。

「砂糖菓子」

 寝る前にねだられて与えている砂糖菓子。たった数粒のそれだけではあまりにも、ささやかだ。

「……他には?」

 さらに問いかけると、彼は木箱のところから近寄ってきて「貴方だ」と答えた。

「わ、私……だと」

 純白の長い睫毛に縁どられた漆黒の瞳が、逸らされることなくセディウスを見つめている。

 その潤みを帯びた瞳は純粋な輝きを秘めていて、白く端正な顔はいつも通り無表情だ。
 

「大好き」


 ――涼やかな声が、天幕の空気を震わせた気がした。

 どくどくと心臓が激しく脈打ち、顔に血の気が上がって火照るのを感じた。

「……ファイスが『好き』よりも、もっと『好き』は『大好き』だと言っていた。自分は、貴方が供給してくれる砂糖菓子が好きだが、それよりも、もっと好きなのは貴方だ。つまり、貴方のことが自分は大好きなのだと断定できる」

 いつもと変わらない論理的な口調だが、なんとも可愛らしい結論だ。

 純粋かつ明快。

 飾り気のない言葉が、胸に強く刺さる。美辞麗句で飾られた言葉などでは届かない、心の奥深い場所まで貫かれたのをセディウスは感じた。

「ネ、ネウクレア……」

 感極まりながら立ち上がり、頭を胸元に抱き寄せてそっと撫でてやると、ネウクレアは「ん……撫でられるのも、大好き」と、あどけない口調で言いながら背中に腕を回して抱き付いて甘えてくる。

「ぐっ、か、可愛い……っ!」

 鎧越しなのがもどかしい。

 華奢な体を直接抱き締めてやりたい衝動に駆られながら、額や頬に何度も口づけを落とし、しっかりと抱き締め返して純白の髪に鼻先を埋める。

「んっ、……貴方の口づけも、体温も、すべてが心地いい……大好き……」

 なんの照れもなく、大好きと繰り返し伝えてくれる彼に、これ以上ない総毛立つほどの愛おしさを感じた。


「私も、お前が大好きだ」


 ほのかな甘い体香を胸いっぱいに吸い込み、頭に頬擦りをする。

「ん……」

 心地よさそうに吐息を漏らしたネウクレアが、背伸びをして頬を擦り寄せる仕草を返してきた。


「ああ、ネウクレア……」


 とてつもない至福である。


 セディウスは食事の途中だったことも忘れて、時間が許す限り彼を愛でた。
















































































「ファイスは串肉が『大好き』だと言っていた」

「(一瞬で正気を取り戻した)……食べ物と人とでは『好き』の意味合いが違う。覚えておくといい」

「了解した(胸板に頬ずり中)」

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