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第26話 メタモルフォーゼ
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殿下はどんどん歩いていく。
なんでこんな怖い顔をしているんか、見当がつかない。
「先の見通しの甘い奴だ」
殿下はポツリと言った。
そんなことはない。私はムッとした。
殿下も協力してくれているし、アランソン公爵の一件さえ丸く治まれば、私はポーション作りとして店を持つ。または、どこかでポーション作りとして働くんだ。
ポーションって、正直だ。一生懸命作れば、答えてくれる。うまくいかない時もあるけど、コツコツまじめにやっていれば、それなりの成果が出る。まあ、商品がヒットしないこともあるけど、風邪薬や痛み止めはどんな時だって必要なんだから。
私はこの紛争が片付いた後の見通しを持って、バスター君に近づいているのです!
そう力説したら、殿下の手を握る力がギュッと強まった。
「痛いです、殿下」
「なぜ、俺を頼らない?」
手を強く握ったまま、殿下は食堂の椅子に座った。手を取られたままなので、一緒に座らないといけなくなってしまった。
周りの生徒たちの目が痛い。
みんな見ないようにして見ている。ルーカス王子が最近、訳の分からない汚らしい平民の娘と一緒にいることは有名になっていた。
「殿下はポーション屋じゃないでしょう! 職業は王子様でしょう! 何をどう頼れっていうんです?」
私は周りに聞こえないように、強い調子で殿下に抗議した。
「ポーションくらい好きに作ればいいだろう!」
「え?」
私は殿下の顔を見つめた。作らせてくれるの?
「王太子妃ではない。ただの、王位継承権と縁のない王子妃だ。趣味の時間は十分ある」
趣味じゃない。
「違うんです。ほんとに使って欲しいの。貧乏人にも金持ちにも」
私は訴えた。
「そうすればいい」
「お金を稼ぎたいの。慈悲なんかじゃない。そんな一方通行じゃない。必要とされて、お金を出しても買いたい、そんなポーション。私のポーションが世の中の一員になって、動かしていく。みんなにいきわたって、それを実感したいの」
「やればいい。誰も止めない」
殿下の青い目が一生懸命に見つめてくる。
これは溺愛劇場の続きなの? 文句ばっかり言っていた殿下がなんだかイエスマンになってしまった。しかも手を放してくれない。みんなが見ていることも聞き耳を立てていることもわかっていたが、だんだん周りが気にならなくなってきた。殿下の存在だけが大きくなってくる。
だが、奥の方でガタンとイスをひっくり返した音が食堂内に響いた。
おおお。忘れていた。ここは食堂。今の音は何?
まずい。なんかが起きてる。
威風堂々とした姿が二つ近づいてくる。そのうしろから数人の令嬢が付き従っている。
どう見てもアランソン公爵令嬢ご一行様だ。
「どうします? 殿下?」
私は盛大に焦ったが、殿下は動じなかった。
「逃げましょう!」
私は提案したが、無慈悲な殿下は却下した。
「君を溺愛しているとわかってもらわなくちゃいけない」
溺愛……
そんなんどうでもいいから、トラブルやめましょうよ? あの人たち、譲らないんですよ? 怖いじゃないですか。
完全にご令嬢方は怒っていた。顔をゆがませている。
「殿下、ごきげんよう」
き、来たー。
うっわー、アランソン公爵令嬢、迫力あるうう。
姉のベアトリス嬢が、まず口を切った。
「私ども、婚約者候補を差し置いて、こんな平民の娘をご寵愛なさるなんて、どういうことですの?」
「僕は彼女を愛している」
私は、うっかり目をグリンと回して、殿下を見物してしまった。
どんな顔をしてこんな言葉をいうのかしら?
「彼女なしでは生きていけない」
ばっさばっさと鉄扇入りのクジャクの羽をあしらった扇が、音を立てて大きく揺れる。
「国や約束を裏切るおつもり?」
殿下はアランソン公爵令嬢の方を見ない。じっと私だけを見つめている。
「そんなものは意味を失くしてしまった」
おおっ! 決めゼリフ!
「わたくしも貴族の端くれ。こんな平民の、顔も平凡で、これと言って何の取り柄もない娘をお好みになるわけがわかりませんが、愛妾としてそばに置きたいとおっしゃるなら……」
アランソン嬢、殿下の決めゼリフをサラッと無視しました。しかも、第二夫人コースですか?
「何を言われても変わらない。君は恋をしたことがあるか?」
アランソン公爵令嬢は固まった。彼女は、そんなことはあまり考えたことがなかったに違いない。仲間だ。
「理性が反対するのに、僕の口は彼女を語り、手も足も彼女のところに向かってしまう。僕には止められない。運命だと思っている」
殿下は私の手を取って口づけた。
食堂中が、かすかなキャーと言うような悲鳴のような声で満たされた。
これが平凡顔のもっさり田舎娘でなければ、何とかなったところなんだが。
ものすごく残念なことに、殿下が極めて見目麗しく、世の王子様と言う王子様の見本のような見かけであるのにも拘らず、相手の私がとことんもっさり、平凡極まりない……だが、その時、見ていた人々から本気の悲鳴が漏れ出した。
「髪の色が……変わって……いく。……姿が違う」
自分の顔は見えないけれど、目や頬にかかる毛の色は、茶色から銀のような色に代わり、くるくると巻いていった。
なんでこんな怖い顔をしているんか、見当がつかない。
「先の見通しの甘い奴だ」
殿下はポツリと言った。
そんなことはない。私はムッとした。
殿下も協力してくれているし、アランソン公爵の一件さえ丸く治まれば、私はポーション作りとして店を持つ。または、どこかでポーション作りとして働くんだ。
ポーションって、正直だ。一生懸命作れば、答えてくれる。うまくいかない時もあるけど、コツコツまじめにやっていれば、それなりの成果が出る。まあ、商品がヒットしないこともあるけど、風邪薬や痛み止めはどんな時だって必要なんだから。
私はこの紛争が片付いた後の見通しを持って、バスター君に近づいているのです!
そう力説したら、殿下の手を握る力がギュッと強まった。
「痛いです、殿下」
「なぜ、俺を頼らない?」
手を強く握ったまま、殿下は食堂の椅子に座った。手を取られたままなので、一緒に座らないといけなくなってしまった。
周りの生徒たちの目が痛い。
みんな見ないようにして見ている。ルーカス王子が最近、訳の分からない汚らしい平民の娘と一緒にいることは有名になっていた。
「殿下はポーション屋じゃないでしょう! 職業は王子様でしょう! 何をどう頼れっていうんです?」
私は周りに聞こえないように、強い調子で殿下に抗議した。
「ポーションくらい好きに作ればいいだろう!」
「え?」
私は殿下の顔を見つめた。作らせてくれるの?
「王太子妃ではない。ただの、王位継承権と縁のない王子妃だ。趣味の時間は十分ある」
趣味じゃない。
「違うんです。ほんとに使って欲しいの。貧乏人にも金持ちにも」
私は訴えた。
「そうすればいい」
「お金を稼ぎたいの。慈悲なんかじゃない。そんな一方通行じゃない。必要とされて、お金を出しても買いたい、そんなポーション。私のポーションが世の中の一員になって、動かしていく。みんなにいきわたって、それを実感したいの」
「やればいい。誰も止めない」
殿下の青い目が一生懸命に見つめてくる。
これは溺愛劇場の続きなの? 文句ばっかり言っていた殿下がなんだかイエスマンになってしまった。しかも手を放してくれない。みんなが見ていることも聞き耳を立てていることもわかっていたが、だんだん周りが気にならなくなってきた。殿下の存在だけが大きくなってくる。
だが、奥の方でガタンとイスをひっくり返した音が食堂内に響いた。
おおお。忘れていた。ここは食堂。今の音は何?
まずい。なんかが起きてる。
威風堂々とした姿が二つ近づいてくる。そのうしろから数人の令嬢が付き従っている。
どう見てもアランソン公爵令嬢ご一行様だ。
「どうします? 殿下?」
私は盛大に焦ったが、殿下は動じなかった。
「逃げましょう!」
私は提案したが、無慈悲な殿下は却下した。
「君を溺愛しているとわかってもらわなくちゃいけない」
溺愛……
そんなんどうでもいいから、トラブルやめましょうよ? あの人たち、譲らないんですよ? 怖いじゃないですか。
完全にご令嬢方は怒っていた。顔をゆがませている。
「殿下、ごきげんよう」
き、来たー。
うっわー、アランソン公爵令嬢、迫力あるうう。
姉のベアトリス嬢が、まず口を切った。
「私ども、婚約者候補を差し置いて、こんな平民の娘をご寵愛なさるなんて、どういうことですの?」
「僕は彼女を愛している」
私は、うっかり目をグリンと回して、殿下を見物してしまった。
どんな顔をしてこんな言葉をいうのかしら?
「彼女なしでは生きていけない」
ばっさばっさと鉄扇入りのクジャクの羽をあしらった扇が、音を立てて大きく揺れる。
「国や約束を裏切るおつもり?」
殿下はアランソン公爵令嬢の方を見ない。じっと私だけを見つめている。
「そんなものは意味を失くしてしまった」
おおっ! 決めゼリフ!
「わたくしも貴族の端くれ。こんな平民の、顔も平凡で、これと言って何の取り柄もない娘をお好みになるわけがわかりませんが、愛妾としてそばに置きたいとおっしゃるなら……」
アランソン嬢、殿下の決めゼリフをサラッと無視しました。しかも、第二夫人コースですか?
「何を言われても変わらない。君は恋をしたことがあるか?」
アランソン公爵令嬢は固まった。彼女は、そんなことはあまり考えたことがなかったに違いない。仲間だ。
「理性が反対するのに、僕の口は彼女を語り、手も足も彼女のところに向かってしまう。僕には止められない。運命だと思っている」
殿下は私の手を取って口づけた。
食堂中が、かすかなキャーと言うような悲鳴のような声で満たされた。
これが平凡顔のもっさり田舎娘でなければ、何とかなったところなんだが。
ものすごく残念なことに、殿下が極めて見目麗しく、世の王子様と言う王子様の見本のような見かけであるのにも拘らず、相手の私がとことんもっさり、平凡極まりない……だが、その時、見ていた人々から本気の悲鳴が漏れ出した。
「髪の色が……変わって……いく。……姿が違う」
自分の顔は見えないけれど、目や頬にかかる毛の色は、茶色から銀のような色に代わり、くるくると巻いていった。
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