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第90話 公爵の義務
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殿下は嬉々として騎士数名と一緒にグレイ様を連行してしまった。
アデル嬢は紅茶をがぶ飲みした後、例の大柄な女騎士に連れられて、元来た道を戻って行った。
「いや、本当にグレイ殿、気の毒でしたよね」
その後ろ姿を見送りながら、セス様はのんびりと言った。
残ったのは、当初のプランとは異なり、私をセス様の二人だけだった。
あと、モロゾフの客。
「どうしてこうなったのか、納得できません」
なぜ、殿下が不満そうに途中から乱入してきたのか、どうして罪人のアデル嬢をこんな店にわざわざ呼んで、グレイ様に疑惑を掛けて、公開断罪しなくてはいけなかったのか。
アデル嬢は見るからに殺る気満々だったし、どう考えても有罪だろうが、毒を融通しただけのグレイ様が協力犯とはとても思えない。それに私を殺す利益がない。私が死んだら、グレイ様は困ったと思う。
それに、このモロゾフでの騒ぎで、何が気に入らないって、あれはないでしょう、アデル嬢。
みんなが興味津々で、聞き耳を立てているど真ん中で、私のことをけなしやがった。許せん。
せっかく秘密にしていたのに。だから、こんな派手なドレスは嫌だったのよ。
アデル嬢がそんなことを言った途端、モロゾフのギャラリーの視線が一斉に私の胸に集まったじゃないの。
明日には、アランソン公爵ポーシャ嬢・貧乳情報が社交界を駆け巡るわ。
「では、デザートもコーヒーも済んだなら、帰りましょうか」
「どこへ?」
「あなたのご自宅ですよ」
私はモロゾフのオーナーを呼び出して、人数分の料金を払うようにセス様に言い付けた。
あらためてオーナーを見ると、濃い茶色のひげと髪を蓄えたなかなかどうしてのイケメンだった。腹をのぞいては。
自分の職業に忠実な彼は、脂肪をたっぷり貯蓄していた。
「本日は……」
葬儀でも始まるかのように粛々としゃべりだした彼を、私は止めた。
「毒殺犯におごりたいって言うなら、止めないわよ」
オーナーは真っ青になった。
「いえ。そんな。私どもは……」
「不測の事態になったので、帰るわ。セス様、馬車を呼んでちょうだい」
「ハイ、ポーシャ様」
セス様は笑いを含んだ声で返事した。何が面白いのかしら?
自宅に帰った私は、仰天した。家じゅう花だらけだった。
メイフィールド夫人を始めとした侍女たちは、いや侍女だけではない、下は洗濯女から、やっと領地管理に帰れることになった臨時執事カールソンまでがにこにこ笑顔だった。
「これで私も安心です。ルーカス殿下がお婿様に決まれば、誰一人としてこの屋敷に手は出せないでしょう」
「え……」
花は全部殿下からだった。
「殿下がお嬢様はお花がお好きなのだと、やっと気づかれたようで……」
違う。
生鮮物は返しにくい。だからどうしても受け取ったままになる。それだけのことだ。
私は今、グレイ様から頂いてしまったドレスの代金をどう返済すべきか悩んでいる。
モロゾフの飲食代も、大見栄を切って全額負担してしまったが、一体いくらかかったのか。怖すぎてセス様に聞けないでいる。
「そうだ、バスター君を呼んで!」
私は、ようやく自分の立ち位置を理解した。
夏の終わりの大舞踏会では、私は大勢の紳士たちに囲まれた。
正直なところ、浮かれなかったといえば、嘘だ。
もしかして、私って魅力的かもとか、心の奥底でちょっぴり思ってしまった。
大間違いだったけどね。
あの中で一番熱心で、共通するところがあると感じたグレイ様だって、冷静になって考えてみれば、あれほどお金をかけてプレゼントをする必要はない。アデル嬢の意見は参考になった。
それに、爵位があって財力は国でも一、二を争うと言われているけど、実際に使えるお金はなくて苦労している。
だからハウエル商会からのお金はとっても大事だった。
それは自由に使えるお金だから。私が稼いだお金だ。私の実力、ポーション作りの才能がお金になったのだ。
そのうえ、貧乳情報。せっかく黙っていたのに。
セス様が何か言いたそうに邸内に残っていた。
「ポーシャ様、バスターさんも直きに来られるそうで、この際ですから、帳簿を確認なさいませんか。カールソンさんも、領地の管理お仕事に戻られることになりましたので」
「あ、はい」
公爵の務めってわけね。
これまでは学業だの、悪獣退治だので、ろくすっぽ領地経営にかかわってこなかった。
自分のことで精一杯だった。
だけど全然知らない領民とやらも、大勢私の広大な領地には住んでいるらしい。その人たちの面倒も見なくちゃいけないんだっけ。
国王陛下が国の舵取りをしているように。
公爵って忙しそうだよね。ポーション作りに専念しているわけにはいかないかもしれない。
私は、とことことセス様のあとを大人しくついていった。
「まあ、正直、私も帳簿関係は苦手な方ですが……」
書斎は立派な部屋で、壁は深緑のアラベスク模様があしらってあって、家具はマホガニー製らしかった。
重々しい雰囲気で大きな机の上には、綴られた帳簿がどっさり乗っていて、私は震え上がった。
多分見ても全然わからない。
借金まみれだったらどうしよう。
遂に公爵家の実態と向き合う日が来たのだ。出来れば、関係ない感じで過ごしたかったのに。
セス様がクスッと笑った。
「期間を切って、四半期ごとに収支の報告を出させています」
しはんきって何のことかわからない。
「アランソン公爵領の主な産業は農業ですから、ごくごく普通のことしかしていません。手元に残る資金はこれくらい」
指し示された金額を見て、私は驚いた。私のポーション代なんか問題にならないくらい大きな金額だ。
でも、他の貴族はどうなのだろう。みんな、これくらい稼いでいるのかな?
「これだけの額を手元に残せる貴族は居ません。筆頭公爵家と言われる所以です。それと言うのもひとえに……」
ここで言葉を切ってセス様は意味深に私の顔を見た。
「ジョン・スターリンのおかげです。農地改革を行い……それには資金がかかりましたが、彼は立派にやり遂げました。もっとも、そのおかげで増えた収入は、主に娘二人の社交に使われていたようですけど。ジョン・スターリンは娘とルーカス殿下の婚約を狙っていました。王家の歓心を買って、公爵家を簒奪しようと考えていましたからね……本物のアランソン公爵令嬢が出現してしまっては、全部パアです。ポーシャ様にとっては財産が増えてよかったですけど」
ジョン・スターリンがちょっとだけ気の毒になった。わがものになると思えばこそ、特別に力を入れたのだろう。
それをあっさりと巻き上げられてしまった。
「小麦の作付け面積が増え、生産量も増加しました。おそらく今後もこれが続いていくと思われます。そして、こちらが、ジョン・スターリンが私財として横領していたあなたの財産です」
こっちは険悪な目で眺めることが出来た。
これこそ泥棒だ。しかも多額だ。一年間の領地収入より多い。
「ところで、ポーシャ様、あなたは私が最初の頃にお送りした、金貨の袋はどうされたのですか?」
セス様が尋ねた。
「金貨の袋?」
「ええ」
セス様がうなずいた。
「ジョン・スターリンがアランソン公爵を詐称していたとばれてから、あなたはすぐに公爵令嬢としてデビューするはずだった」
うーん。そうかしら?
「そりゃ、お付きの侍女たちがそろわなかったことは認めます。平民出身の男性の私では難しかった。だけど、お金はあったでしょう」
そう言えば、あの金貨の袋はどうしたかしら?
「あれは、あの、自分のものではないような気がして……」
「あなたのものですよ。公爵家の令嬢なのだから、公爵家のお金を使うことは当然です」
私は首をひねった。でも、あれは私のお金ではない気がした。
「すぐにドレスを仕立てることだってできたし、高い宝石を買い込むことだって可能だった。クラスを変わることも出来るはずだった。むしろ、誰もがそのことを期待した」
「それは……納得がいかなかったのよ」
私は説明しようとした。身分が変わっても、私は変わっていない。
「自分の力で得たものじゃないお金は、使えなかったの」
「きっと外の人たちからは、奇妙に思われたのではないでしょうか」
私は考えてみた。
そんな上面はどうでもいい。
私は、それよりポーションを作りたかった。
それは人の命を救い、思いもかけない夢をかなえる。無理だと信じてあきらめていた夢を。
水虫が治るとか、目の濁りを取って再び目が見えるようにするとか。
そして、お金を稼ぐ。
お金を稼ぐことは必要とされたからだと思っている。
必要だからお金を払ってくれるのだ。たとえ、それが命にはかかわりのない美肌クリームだったとしても。
そのお金は私のお金で、好きなことに使えるお金だ。自由なお金だ。
でも、公爵領からのお金は、そうじゃない。だって、私の手柄じゃないもの。
私がつかえながら、そう説明すると、
「そんなことを言っていたら、いつまでたっても公爵令嬢になれませんよ」
と、セス様が言った。
「領民からお金を搾取して、じゃんじゃん使って、景気のいいところを社交界で見せて歩くんです。それが貴族なんです」
「それが……私にとって気になるところで……」
「王様だってそうでしょ? 軍隊を持って、他国を威圧する。国内の貴族も威圧する。そのおかげで国が荒れない。スターリン男爵みたいのが、大勢出てきて戦国時代を始められたら、農民は大迷惑です。農地は踏み荒らされるし、徴兵されるし」
「それは国単位の王様の話で……」
「公爵領だって、似たようなものですよ。誰からも手を出されないように、立派な公爵、頑張ってください。お金だけはあるんだから。おばあさまが宮廷服を堂々と着こなし、戦争があれば率先して赴いてらっしゃるように」
私は顔を上げた。
「ええ? あのおばあさまにそんな深い考えが?」
「ありません」
ないだろう。何も考えていないに決まってる。
「大体、ベリー公爵夫人がもう少し公爵家の行く末に興味を持って、責任のある態度を取っていれば、ポーシャ様もここまで、方向転換で困ることはなかったはずです」
アデル嬢は紅茶をがぶ飲みした後、例の大柄な女騎士に連れられて、元来た道を戻って行った。
「いや、本当にグレイ殿、気の毒でしたよね」
その後ろ姿を見送りながら、セス様はのんびりと言った。
残ったのは、当初のプランとは異なり、私をセス様の二人だけだった。
あと、モロゾフの客。
「どうしてこうなったのか、納得できません」
なぜ、殿下が不満そうに途中から乱入してきたのか、どうして罪人のアデル嬢をこんな店にわざわざ呼んで、グレイ様に疑惑を掛けて、公開断罪しなくてはいけなかったのか。
アデル嬢は見るからに殺る気満々だったし、どう考えても有罪だろうが、毒を融通しただけのグレイ様が協力犯とはとても思えない。それに私を殺す利益がない。私が死んだら、グレイ様は困ったと思う。
それに、このモロゾフでの騒ぎで、何が気に入らないって、あれはないでしょう、アデル嬢。
みんなが興味津々で、聞き耳を立てているど真ん中で、私のことをけなしやがった。許せん。
せっかく秘密にしていたのに。だから、こんな派手なドレスは嫌だったのよ。
アデル嬢がそんなことを言った途端、モロゾフのギャラリーの視線が一斉に私の胸に集まったじゃないの。
明日には、アランソン公爵ポーシャ嬢・貧乳情報が社交界を駆け巡るわ。
「では、デザートもコーヒーも済んだなら、帰りましょうか」
「どこへ?」
「あなたのご自宅ですよ」
私はモロゾフのオーナーを呼び出して、人数分の料金を払うようにセス様に言い付けた。
あらためてオーナーを見ると、濃い茶色のひげと髪を蓄えたなかなかどうしてのイケメンだった。腹をのぞいては。
自分の職業に忠実な彼は、脂肪をたっぷり貯蓄していた。
「本日は……」
葬儀でも始まるかのように粛々としゃべりだした彼を、私は止めた。
「毒殺犯におごりたいって言うなら、止めないわよ」
オーナーは真っ青になった。
「いえ。そんな。私どもは……」
「不測の事態になったので、帰るわ。セス様、馬車を呼んでちょうだい」
「ハイ、ポーシャ様」
セス様は笑いを含んだ声で返事した。何が面白いのかしら?
自宅に帰った私は、仰天した。家じゅう花だらけだった。
メイフィールド夫人を始めとした侍女たちは、いや侍女だけではない、下は洗濯女から、やっと領地管理に帰れることになった臨時執事カールソンまでがにこにこ笑顔だった。
「これで私も安心です。ルーカス殿下がお婿様に決まれば、誰一人としてこの屋敷に手は出せないでしょう」
「え……」
花は全部殿下からだった。
「殿下がお嬢様はお花がお好きなのだと、やっと気づかれたようで……」
違う。
生鮮物は返しにくい。だからどうしても受け取ったままになる。それだけのことだ。
私は今、グレイ様から頂いてしまったドレスの代金をどう返済すべきか悩んでいる。
モロゾフの飲食代も、大見栄を切って全額負担してしまったが、一体いくらかかったのか。怖すぎてセス様に聞けないでいる。
「そうだ、バスター君を呼んで!」
私は、ようやく自分の立ち位置を理解した。
夏の終わりの大舞踏会では、私は大勢の紳士たちに囲まれた。
正直なところ、浮かれなかったといえば、嘘だ。
もしかして、私って魅力的かもとか、心の奥底でちょっぴり思ってしまった。
大間違いだったけどね。
あの中で一番熱心で、共通するところがあると感じたグレイ様だって、冷静になって考えてみれば、あれほどお金をかけてプレゼントをする必要はない。アデル嬢の意見は参考になった。
それに、爵位があって財力は国でも一、二を争うと言われているけど、実際に使えるお金はなくて苦労している。
だからハウエル商会からのお金はとっても大事だった。
それは自由に使えるお金だから。私が稼いだお金だ。私の実力、ポーション作りの才能がお金になったのだ。
そのうえ、貧乳情報。せっかく黙っていたのに。
セス様が何か言いたそうに邸内に残っていた。
「ポーシャ様、バスターさんも直きに来られるそうで、この際ですから、帳簿を確認なさいませんか。カールソンさんも、領地の管理お仕事に戻られることになりましたので」
「あ、はい」
公爵の務めってわけね。
これまでは学業だの、悪獣退治だので、ろくすっぽ領地経営にかかわってこなかった。
自分のことで精一杯だった。
だけど全然知らない領民とやらも、大勢私の広大な領地には住んでいるらしい。その人たちの面倒も見なくちゃいけないんだっけ。
国王陛下が国の舵取りをしているように。
公爵って忙しそうだよね。ポーション作りに専念しているわけにはいかないかもしれない。
私は、とことことセス様のあとを大人しくついていった。
「まあ、正直、私も帳簿関係は苦手な方ですが……」
書斎は立派な部屋で、壁は深緑のアラベスク模様があしらってあって、家具はマホガニー製らしかった。
重々しい雰囲気で大きな机の上には、綴られた帳簿がどっさり乗っていて、私は震え上がった。
多分見ても全然わからない。
借金まみれだったらどうしよう。
遂に公爵家の実態と向き合う日が来たのだ。出来れば、関係ない感じで過ごしたかったのに。
セス様がクスッと笑った。
「期間を切って、四半期ごとに収支の報告を出させています」
しはんきって何のことかわからない。
「アランソン公爵領の主な産業は農業ですから、ごくごく普通のことしかしていません。手元に残る資金はこれくらい」
指し示された金額を見て、私は驚いた。私のポーション代なんか問題にならないくらい大きな金額だ。
でも、他の貴族はどうなのだろう。みんな、これくらい稼いでいるのかな?
「これだけの額を手元に残せる貴族は居ません。筆頭公爵家と言われる所以です。それと言うのもひとえに……」
ここで言葉を切ってセス様は意味深に私の顔を見た。
「ジョン・スターリンのおかげです。農地改革を行い……それには資金がかかりましたが、彼は立派にやり遂げました。もっとも、そのおかげで増えた収入は、主に娘二人の社交に使われていたようですけど。ジョン・スターリンは娘とルーカス殿下の婚約を狙っていました。王家の歓心を買って、公爵家を簒奪しようと考えていましたからね……本物のアランソン公爵令嬢が出現してしまっては、全部パアです。ポーシャ様にとっては財産が増えてよかったですけど」
ジョン・スターリンがちょっとだけ気の毒になった。わがものになると思えばこそ、特別に力を入れたのだろう。
それをあっさりと巻き上げられてしまった。
「小麦の作付け面積が増え、生産量も増加しました。おそらく今後もこれが続いていくと思われます。そして、こちらが、ジョン・スターリンが私財として横領していたあなたの財産です」
こっちは険悪な目で眺めることが出来た。
これこそ泥棒だ。しかも多額だ。一年間の領地収入より多い。
「ところで、ポーシャ様、あなたは私が最初の頃にお送りした、金貨の袋はどうされたのですか?」
セス様が尋ねた。
「金貨の袋?」
「ええ」
セス様がうなずいた。
「ジョン・スターリンがアランソン公爵を詐称していたとばれてから、あなたはすぐに公爵令嬢としてデビューするはずだった」
うーん。そうかしら?
「そりゃ、お付きの侍女たちがそろわなかったことは認めます。平民出身の男性の私では難しかった。だけど、お金はあったでしょう」
そう言えば、あの金貨の袋はどうしたかしら?
「あれは、あの、自分のものではないような気がして……」
「あなたのものですよ。公爵家の令嬢なのだから、公爵家のお金を使うことは当然です」
私は首をひねった。でも、あれは私のお金ではない気がした。
「すぐにドレスを仕立てることだってできたし、高い宝石を買い込むことだって可能だった。クラスを変わることも出来るはずだった。むしろ、誰もがそのことを期待した」
「それは……納得がいかなかったのよ」
私は説明しようとした。身分が変わっても、私は変わっていない。
「自分の力で得たものじゃないお金は、使えなかったの」
「きっと外の人たちからは、奇妙に思われたのではないでしょうか」
私は考えてみた。
そんな上面はどうでもいい。
私は、それよりポーションを作りたかった。
それは人の命を救い、思いもかけない夢をかなえる。無理だと信じてあきらめていた夢を。
水虫が治るとか、目の濁りを取って再び目が見えるようにするとか。
そして、お金を稼ぐ。
お金を稼ぐことは必要とされたからだと思っている。
必要だからお金を払ってくれるのだ。たとえ、それが命にはかかわりのない美肌クリームだったとしても。
そのお金は私のお金で、好きなことに使えるお金だ。自由なお金だ。
でも、公爵領からのお金は、そうじゃない。だって、私の手柄じゃないもの。
私がつかえながら、そう説明すると、
「そんなことを言っていたら、いつまでたっても公爵令嬢になれませんよ」
と、セス様が言った。
「領民からお金を搾取して、じゃんじゃん使って、景気のいいところを社交界で見せて歩くんです。それが貴族なんです」
「それが……私にとって気になるところで……」
「王様だってそうでしょ? 軍隊を持って、他国を威圧する。国内の貴族も威圧する。そのおかげで国が荒れない。スターリン男爵みたいのが、大勢出てきて戦国時代を始められたら、農民は大迷惑です。農地は踏み荒らされるし、徴兵されるし」
「それは国単位の王様の話で……」
「公爵領だって、似たようなものですよ。誰からも手を出されないように、立派な公爵、頑張ってください。お金だけはあるんだから。おばあさまが宮廷服を堂々と着こなし、戦争があれば率先して赴いてらっしゃるように」
私は顔を上げた。
「ええ? あのおばあさまにそんな深い考えが?」
「ありません」
ないだろう。何も考えていないに決まってる。
「大体、ベリー公爵夫人がもう少し公爵家の行く末に興味を持って、責任のある態度を取っていれば、ポーシャ様もここまで、方向転換で困ることはなかったはずです」
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