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王妃様登場
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殿下は下女を見つめて、なにやら生き生きとしているが、重ねて帰れと言われれば、側近たちは立場上、帰らない訳にはいかない。
余計、疑問が広がった。
「保身のためにも王妃様に言いつけておこう」
「そうしよう」
そして眉をこれ以上しかめられないくらい寄せた王妃様が、足音もトゲトゲしくやってきた時、王子殿下は、満面の笑顔で下女に餌付けしていた。
「さあ、たんとお食べ」
実は先日、王子殿下は、学園でミーミー泣いている哀れな子猫を見てしまったのである。
先に子猫を発見した令嬢たちが、薄汚れてガリガリに痩せた子猫に、学園の食堂で調達したらしい食べ物をあげていた。
子猫はガツガツ食べている。
「おお……」
殿下はうらやましそうにその光景に見入った。
殿下が足を止めたので、イケメンで有名なその側近たちも足を止めて、子猫の餌やりを見物した。
令嬢たちは、哀れな子猫にエサをあげている慈悲深い自分たちの姿に殿下たちが見惚れているのかと思って、それはそれは熱心にエサをやり続けたが、殿下の視線は子猫に釘付けだった。
「か、かわいいっ」
殿下の心の声を側近たちは聞き逃さなかった。おおっ?
「なんて……なんてかわいいんだ」
自分も哀れな子猫を助けてやりたい。殿下は心の底から願った。愛くるしい瞳が必死に訴えかけてくる。
ゴハン、クダサイ。
殿下が飼いたくても、泥だらけでノミとかダニとか寄生虫も飼っていそうなミックスの野良猫なんか、絶対許可がでないに決まってる。
殿下が飼いたいと言えば、優雅にブラッシングされた長い血統書付きの猫が贈られてくるに決まっていた。
だが、殿下が欲しいのは、ガリガリに痩せて、殿下しか頼れない子猫なのだ。
守って、かわいがって甘やかしたい。
今、その夢がなかったのだ。下女だけど。猫じゃないんだけど。
「さあ、もっとお食べ」
殿下は優しくパンを差し出し、
「あ、肉の方が良かったよね」
と言って、下女にソーセージを差し出した。あいにく厨房に魚がなかったのである。下女はガツガツ食べる。殿下は目を細めた。
「こんなに痩せて。さぞ辛かったろう」
殿下はしみじみと言った。
その時、バーンと扉が開いた。王妃様と筆頭侍女以下数名が遂に現場に到着したのだった。
余計、疑問が広がった。
「保身のためにも王妃様に言いつけておこう」
「そうしよう」
そして眉をこれ以上しかめられないくらい寄せた王妃様が、足音もトゲトゲしくやってきた時、王子殿下は、満面の笑顔で下女に餌付けしていた。
「さあ、たんとお食べ」
実は先日、王子殿下は、学園でミーミー泣いている哀れな子猫を見てしまったのである。
先に子猫を発見した令嬢たちが、薄汚れてガリガリに痩せた子猫に、学園の食堂で調達したらしい食べ物をあげていた。
子猫はガツガツ食べている。
「おお……」
殿下はうらやましそうにその光景に見入った。
殿下が足を止めたので、イケメンで有名なその側近たちも足を止めて、子猫の餌やりを見物した。
令嬢たちは、哀れな子猫にエサをあげている慈悲深い自分たちの姿に殿下たちが見惚れているのかと思って、それはそれは熱心にエサをやり続けたが、殿下の視線は子猫に釘付けだった。
「か、かわいいっ」
殿下の心の声を側近たちは聞き逃さなかった。おおっ?
「なんて……なんてかわいいんだ」
自分も哀れな子猫を助けてやりたい。殿下は心の底から願った。愛くるしい瞳が必死に訴えかけてくる。
ゴハン、クダサイ。
殿下が飼いたくても、泥だらけでノミとかダニとか寄生虫も飼っていそうなミックスの野良猫なんか、絶対許可がでないに決まってる。
殿下が飼いたいと言えば、優雅にブラッシングされた長い血統書付きの猫が贈られてくるに決まっていた。
だが、殿下が欲しいのは、ガリガリに痩せて、殿下しか頼れない子猫なのだ。
守って、かわいがって甘やかしたい。
今、その夢がなかったのだ。下女だけど。猫じゃないんだけど。
「さあ、もっとお食べ」
殿下は優しくパンを差し出し、
「あ、肉の方が良かったよね」
と言って、下女にソーセージを差し出した。あいにく厨房に魚がなかったのである。下女はガツガツ食べる。殿下は目を細めた。
「こんなに痩せて。さぞ辛かったろう」
殿下はしみじみと言った。
その時、バーンと扉が開いた。王妃様と筆頭侍女以下数名が遂に現場に到着したのだった。
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