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第31話 デブ専で被虐待性癖趣味の噂
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私のドレスはだんだんとみじめな格好になってきていた。
何とかしたいけど、どうしようもなくて、思わずモートン様に愚痴ってしまった。
彼、お金もない学生だし、婚約話は中途半端なままで進んでないし、本格的にただの文通相手になりつつあったけど。
その分、気楽に色々相談しちゃった。
『私から父上にお伝えしましょう』
あっ! その手があったか。頼もしい! でも、父は義母には甘いかもしれない。義母の言うことを聞けとか言う内容の手紙が来たら、ショックが大きい。
『父に負担はかけたくないと思っています。モートン様を煩わせるつもりはございませんでした。お忘れくださいませ』
義姉たちは評判が悪いらしい。
ドレス問題でより親しくなった下位貴族な人たちが、噂を次から次へと届けてくれる。
「最近は、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様につきまとっていらっしゃるとか」
うっわー。
「どのようにつきまとってらっしゃるのかしら?」
うっかり自分の家の家族に敬語を使ってしまった。けれど、聞かずにはいられなかった。
だって、あれだけ冷たくあしらわれていたのよ? 近付いても、無視されると思うのだけど。
「そこは侯爵令嬢ですから。高位貴族から話しかけられたら、表立っては伯爵家以下では無視できなのだと思いますわ」
かわいそうな令嬢たちに対するのと同じ手を使いおって。それはそうと付きまといとは、一体どんなことをしてるのかしら。
「でも、あの三人、デブ専だという噂がありまして」
一人がコソコソと耳打ちする。
「デブ専!」
「さらにツンデレだと言う噂まであり」
「まああ!」
コソコソ話の声が少し大きくなり、何人か顔見知りの令嬢たちが近付いてきた。
「冷たくあしらって迷惑そうにしているけれど、実はお義姉様方のことがお好きなのではないかと噂が流れてきております」
さすがに、そんなことはないと思う。ウチの客間では、三人とも思いっきり嫌そうな顔をしていたもの。
しかし、ここは調子を合わせた方がいいみたい。
「では私へのお手紙は口実だったと言う訳なのね? 実は私は中身を読んでいませんの」
「えっ? 本当ですか? どういうことですか?」
「私も不思議だったのよ。どうして、私に文面を見せてくれないのかって」
「そのお手紙、エレクトラ様宛てでしたのよね?」
「もちろん。ですけど、中身を知らないのです。もしかすると、私宛てと言う体裁を取っていても、内容は義姉たち宛てだったかもしれないわ。義母が、私抜きで、お茶会を開いたのもそのためだったのかもしれないわ」
「あの、エレクトラ様抜きでお茶会を、伯爵邸で、ですか?」
「そうなの。私が学園にいる間に、義母と義姉たちが三人を呼んでお茶会を開いていました」
事実だ。私は嘘は言っていない。
「それはなんだか変ですわ。それにお茶会を一人だけ除け者にするだなんて。ひどいですわ」
私はしおらしく目を伏せた。被害者ポジションって、なかなかいいんじゃないだろうか。
「ですから、その手紙には何か別なことが書いてあったのでは? と思うのです」
何が書いてあるんだろうな。まあ、どうでもいいか。
なんだかよくわからない噂だけど、そう言う噂が流れただけでも、ハネ眉とおちょぼ口のルイス様とその他二名と義姉たちは、手一杯にならないかしら?
「そのことはアーネスティン様やマチルダ様、ローズマリー様もご存じですわ」
「まああ!」
名前を口に出すだけで神々しい。彼女たちはひれ伏した。
彼女たちが私を大事にしてくれるのは、私が学園トップの高貴な方々とお付き合いがあるからかもしれない。
しかし、少なくともこの件に関しては、どう見ても好奇心が勝利をおさめていた。
「では、噂は本当ですわね」
なんでアーネスティン様に話したからって、噂が真実になるんだ。
「だって、王弟殿下のご息女様に嘘は言えませんわ」
そういう意味なのね。それはわかる。しかし、私が話したのは、手紙とお茶会の件だけで、噂の話はしていない。
「アーネスティン様、マチルダ様、ローズマリー様のお耳に、その下品なうわさ話は入れていませんのよ」
私は注意したが、誰も聞いてはいなかった。
「デブ専でツンデレ!」
「でも、殿方のツンデレって、実は、言いにくいのですけど、被虐性愛者趣味がある場合が多いそうですの」
一人が顔を隠しながらヒソヒソと言い出した。
なに? 被虐性愛者趣味って?
「「「まああ!」」」
その場にいた数人がざわめきたった。
「なんてことでしょう!」
「辻褄が合いますわね」
だからどういう意味なのですか?
「つまり、そういう趣味ですわ。女性に痛めつけられるのがお好きだと言う……」
「アン様とステラ様は、人をいじめるのが好きそうですもの。ピッタリですわ。いたぶられるのがお好きだったのね」
もしもし? それで行くと、アンとステラが加虐性欲者になってしまうわ。
「そう言う趣味の方は、お相手としてはちょっと。難しいですわね」
「そんな方と婚約したらスキモノと思われますわ」
あれ? 話がどんどん一人歩きを始めたわ? いいのかしら? これ。
何とかしたいけど、どうしようもなくて、思わずモートン様に愚痴ってしまった。
彼、お金もない学生だし、婚約話は中途半端なままで進んでないし、本格的にただの文通相手になりつつあったけど。
その分、気楽に色々相談しちゃった。
『私から父上にお伝えしましょう』
あっ! その手があったか。頼もしい! でも、父は義母には甘いかもしれない。義母の言うことを聞けとか言う内容の手紙が来たら、ショックが大きい。
『父に負担はかけたくないと思っています。モートン様を煩わせるつもりはございませんでした。お忘れくださいませ』
義姉たちは評判が悪いらしい。
ドレス問題でより親しくなった下位貴族な人たちが、噂を次から次へと届けてくれる。
「最近は、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様につきまとっていらっしゃるとか」
うっわー。
「どのようにつきまとってらっしゃるのかしら?」
うっかり自分の家の家族に敬語を使ってしまった。けれど、聞かずにはいられなかった。
だって、あれだけ冷たくあしらわれていたのよ? 近付いても、無視されると思うのだけど。
「そこは侯爵令嬢ですから。高位貴族から話しかけられたら、表立っては伯爵家以下では無視できなのだと思いますわ」
かわいそうな令嬢たちに対するのと同じ手を使いおって。それはそうと付きまといとは、一体どんなことをしてるのかしら。
「でも、あの三人、デブ専だという噂がありまして」
一人がコソコソと耳打ちする。
「デブ専!」
「さらにツンデレだと言う噂まであり」
「まああ!」
コソコソ話の声が少し大きくなり、何人か顔見知りの令嬢たちが近付いてきた。
「冷たくあしらって迷惑そうにしているけれど、実はお義姉様方のことがお好きなのではないかと噂が流れてきております」
さすがに、そんなことはないと思う。ウチの客間では、三人とも思いっきり嫌そうな顔をしていたもの。
しかし、ここは調子を合わせた方がいいみたい。
「では私へのお手紙は口実だったと言う訳なのね? 実は私は中身を読んでいませんの」
「えっ? 本当ですか? どういうことですか?」
「私も不思議だったのよ。どうして、私に文面を見せてくれないのかって」
「そのお手紙、エレクトラ様宛てでしたのよね?」
「もちろん。ですけど、中身を知らないのです。もしかすると、私宛てと言う体裁を取っていても、内容は義姉たち宛てだったかもしれないわ。義母が、私抜きで、お茶会を開いたのもそのためだったのかもしれないわ」
「あの、エレクトラ様抜きでお茶会を、伯爵邸で、ですか?」
「そうなの。私が学園にいる間に、義母と義姉たちが三人を呼んでお茶会を開いていました」
事実だ。私は嘘は言っていない。
「それはなんだか変ですわ。それにお茶会を一人だけ除け者にするだなんて。ひどいですわ」
私はしおらしく目を伏せた。被害者ポジションって、なかなかいいんじゃないだろうか。
「ですから、その手紙には何か別なことが書いてあったのでは? と思うのです」
何が書いてあるんだろうな。まあ、どうでもいいか。
なんだかよくわからない噂だけど、そう言う噂が流れただけでも、ハネ眉とおちょぼ口のルイス様とその他二名と義姉たちは、手一杯にならないかしら?
「そのことはアーネスティン様やマチルダ様、ローズマリー様もご存じですわ」
「まああ!」
名前を口に出すだけで神々しい。彼女たちはひれ伏した。
彼女たちが私を大事にしてくれるのは、私が学園トップの高貴な方々とお付き合いがあるからかもしれない。
しかし、少なくともこの件に関しては、どう見ても好奇心が勝利をおさめていた。
「では、噂は本当ですわね」
なんでアーネスティン様に話したからって、噂が真実になるんだ。
「だって、王弟殿下のご息女様に嘘は言えませんわ」
そういう意味なのね。それはわかる。しかし、私が話したのは、手紙とお茶会の件だけで、噂の話はしていない。
「アーネスティン様、マチルダ様、ローズマリー様のお耳に、その下品なうわさ話は入れていませんのよ」
私は注意したが、誰も聞いてはいなかった。
「デブ専でツンデレ!」
「でも、殿方のツンデレって、実は、言いにくいのですけど、被虐性愛者趣味がある場合が多いそうですの」
一人が顔を隠しながらヒソヒソと言い出した。
なに? 被虐性愛者趣味って?
「「「まああ!」」」
その場にいた数人がざわめきたった。
「なんてことでしょう!」
「辻褄が合いますわね」
だからどういう意味なのですか?
「つまり、そういう趣味ですわ。女性に痛めつけられるのがお好きだと言う……」
「アン様とステラ様は、人をいじめるのが好きそうですもの。ピッタリですわ。いたぶられるのがお好きだったのね」
もしもし? それで行くと、アンとステラが加虐性欲者になってしまうわ。
「そう言う趣味の方は、お相手としてはちょっと。難しいですわね」
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