【完結】エレクトラの婚約者

buchi

文字の大きさ
30 / 72

第30話 自慢大好き。アンとステラ

しおりを挟む
ところで、私は例の高貴なお友達の他にも、学園内のお友達は山ほどいた。

と言うのは、アーネスティン様の侍女になる予定の私は、経営学とか農業学の科目も取っていたからだ。そう言った実学を高貴の方々はお取りにならない。経営学だの農業学だのを好んで取るのはいわゆる身分の低い人たちだった。だけど、友達になるのに、身分は関係ない。アーネスティン様だって、私と付き合ってくださっているではないか。

伯爵令嬢としての高貴さが全く身に付いていないと、義母には叱られるが、それが何なのよ。私のお友達は、私が私だから付き合ってくれる人たちばかりだ。

「アン様とステラ様が、また新しいドレスの自慢をしに来られましたのよ?」

経営学の友人の一人が私に言いつけた。

「それ、絶対、私が発注したドレスよ。また、ドレスメーカーに掛け合って変更させたのですわ」

私は怒って言った。道理で届くのが遅いと思った。サイズ直しにも来なかったもの。
義母付きの侍女デイジーが、直接ドレスメーカーへ足を運んで変更したんだわ。

「エレクトラ様に言うのは、申し訳ないのだけど、あの方たち、好きになれないのです」

「高飛車で、多分、あなた方には手が出ないでしょう? みたいな態度でドレスの話題を始めるので」

今お話している方たちは、富豪の娘や地方の有力者枠で入ってきた方だ。国内でも有数のお金持ちで、どんな豪華なドレスでもじゃんじゃん作れる。アンやステラより、本当はお金持ちだと思う。
だが、学園という場所柄と、高位貴族の方々より抑えた身なりをしなければならないから地味にしているだけだ。

「新しいドレスの話をしにわざわざここへ来るんです。経営学を取っているわけでもないのに」

くるくる巻き毛でメガネの令嬢が憤慨して言った。もう一人の顔が長めな令嬢も言った。

「それにね。中には買いたくても買えない人たちもいる。話題としては最低だと思いますわ」

この二人はいい。本当はドレスが買えるから。だけど、生徒の中には、貧しい没落貴族と言っていいような人たちもいる。
貴族学園の卒業証書があれば、好条件で上流社会に食い込みたい平民の金持ちの娘たちの家庭教師になれる。成績がよければ、王宮に勤めることだって可能だ。貧乏から脱却したい没落貴族の娘たちは、節約を重ねて勉学に励んでいる。私より成績がいい。

「学年が違うのに、わざわざここまで来て、聞こえよがしに言うのです」

学園では、貴族の社交の練習の為、華やかなパーティが催される。私だって、参加できなくて悲しかった。お金がない人は、興味がなくてとか、心にもないことを言いつくろっていかないのだろう。貴族にお金がないは禁句だもの。

「それに、あの人たちの話なんて聞きたくないの。つまらないし。でも、話しかけられたら、聞かないわけにもいかないわ」

そう。所詮、学園内は階級社会。侯爵令嬢はいつだって尊重されるべき存在なのだ。


で、話が飛びすぎたが、ようやくドレスを作りたがる理由が分かった。見せびらかしだ。割と最低な理由だと思う。単に派手好きと言うのもあると思うけど。

私がドレスを発注するたび、待ってましたとばかり、乗っ取っていく。ただ、出来上がったドレスは、私が希望したものとは似ても似つかぬものになっているので、いっそ着ないで済んで本当に良かったとあきらめがつくほどだった。


だが、遂に、義母が私にドレス禁止令をかけた。

「あなたがドレスメーカーをしょっちゅう呼ぶのが良くないのですよ。アンやステラがドレスを作りたがるでしょう」

それは違います。あなたのところのアンとステラと侍女のデイジーが、私のドレスの行先を無理やり変更させるのがいけないのよ。私のドレスはまだ一着もできてない。

侯爵家の支払い能力にも限界があるだろう。
すでにあちこちのドレスメーカーへの支払いが滞っていると聞いている。噂が広がるのは速くて、最近ではトラブルを避けるため、どこのドレスメーカーも私の家に来るのを嫌がるようになっていた。


「お嬢様のドレスなら、前払い出来ると思うのですが」

セバスのためらいがちな言葉を私は強くさえぎった。

「それこそ敵の思う壺です」

あら。敵って言っちゃったわ。

「そのお金で、大喜びで自分たちのドレスを作るだけで、私のドレスはいつまで経っても仕上がりません!」

ドレスだけはどうにもならなかった。

家の中のことなら、使用人の一致団結があって、何の不自由もなかったが、外部団体のドレスメーカーはどうにもならない。私の身なりはみすぼらしくなる一方だった。

来年のダンスパーティの時が来たらどうなるのかしら。







しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい

花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。 ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。 あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…? ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの?? そして婚約破棄はどうなるの??? ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。

婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

突然、婚約破棄を言い渡された私は王子の病気を疑う【短編】

キョウキョウ
恋愛
 卒業記念パーティーの最中、ディートリヒ王子から前触れもなく婚約破棄を告げられたオリヴィア。  彼女が最初に取った行動は婚約破棄を嘆くことでもなく、王子の近くに寄り添っている女性を責めることでもなく、医者を呼ぶことだった。  突然の心変わりに、王子の精神病を疑ったからだ。  婚約破棄に至る病、突然の心変わりは一つの病として知られていた。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

ソウシソウアイ?

野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。 その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。 拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、 諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。

伝える前に振られてしまった私の恋

喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋 母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。 第二部:ジュディスの恋 王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。 周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。 「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」 誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。 第三章:王太子の想い 友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。 ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。 すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。 コベット国のふたりの王子たちの恋模様

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

処理中です...