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始まりの春休み編
沙緒莉はやはり露出趣味を隠しきれない
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僕たちが買ってきたお土産のポテトはあっという間に無くなってしまった。こんな時間に食べてしまったら晩御飯をちゃんと食べられるのかなとも思っていたけれど、みんな残さずに出された分はちゃんと食べることが出来た。
今日の晩御飯は沙緒莉姉さんが作ってくれたロールキャベツだったのだが、味付けもちょうど良く徐々に薄味しかない世界から脱出出来ているようだ。母さんは洋食をそれほど上手く作れないので少し心配だったのだが、レシピが載っているサイトの動画を参考に作ったとのことで少しだけ形は歪ではあったのだけれど、最後の一つを食べる時はこれでなくなってしまうのかと寂しい気持ちになってしまうくらいだった。
「お姉ちゃんってさ、説明書があれば何でも出来るタイプだからいいよね。私は説明書を読むのは苦手なんだ。そりゃ、何度も読めば理解は出来るんだけどさ、それがどうも面倒ですぐに聞いちゃうかも。昌晃はそういうの無さそうだよね」
「どうだろう。でも、僕は結構説明書を読むのが好きだよ。ゲームとかはパターンが決まってるからあんまり見ることは無いけど、新しいガジェットを手に入れた時はマニュアルの載ってるサイトをじっくり見たりしてるかも」
「そういうの好きなのってさ、オタクっぽいよね。でも、それを言ったら私は可愛いもの集めるオタクだし、お姉ちゃんはいい匂いを集めるオタクだし、真弓はゲームとかアニメオタクだもんね。オタク同士なのに揉め事なんて全くないし、真弓と昌晃って相性良いのかもね。今日も楽しく遊んできたのかな?」
「うん、昌兄ちゃんと楽しく遊んできたよ。学校の周りにある店とかいろいろ見てきたし、今度お姉ちゃんたちにも教えてあげるね。それと、一緒に美味しいモノ食べてきたよ」
「美味しいものって、ハンバーガーでしょ?」
「違うよ。甘くておいしいやつを食べてきたんだ。確か、明日までの期間限定だったからもう無くなってるかもね。お姉ちゃんたちが食べられるのは来年かな」
「ちょっと、そんなのがあったなら買ってきてくれても良かったじゃない。もう、私もついていけばよかったな」
「今日は昌兄ちゃんと二人だけで行く約束だったからダメだもん。次は皆で行こうね」
「あ、そう言えばさ、沙緒莉も真弓も昌晃君と二人だけで出かけたことあるでしょ。次は私が昌晃君とデートする番かな」
「ちょっとお姉ちゃん、デートって何よ。私はそんなつもりで言ったわけじゃないし、買い物の付き添いで行っただけなんだけど。でも、真弓はどういうつもりで行ったのかわからないけどね。って、何で真弓は何も言わないで照れているのよ」
「だって、真弓は買い物の付き添いって感じじゃなかったから、ね」
「じゃあ、学校始まる前に私と何か食べに行こうか。この辺で甘いモノ食べられる場所とかあればいいんだけど」
「ええ、真弓も甘いモノ食べるの一緒に行きたいな」
「真弓は今日一緒に食べたんでしょ。次はお姉ちゃんの番だと思うけどな。それとも、陽香も一緒に行く?」
「別に行ってもいいけど、甘いモノ食べたいし」
「じゃあ、決まりだね。昌晃君はどこかおススメある?」
「お勧めって言われてもな。あんまり外に食べにいかないからさ。でも、昨日食べたクッキーが美味しかったから家で作るってのもいいんじゃないかな」
「へえ、クッキー食べたんだ。それって、お店のやつだったのかな?」
「いや、違うと思うけど。どうして?」
僕はどうしてそんな事を聞かれるのだろうと思っていたのだけれど、なぜかクッキーを持ってきてくれた陽香は顔を赤く染めて下を向いていた。その様子をじっと見ている真弓はどこか怒っているようにも見えたし、それを見ている沙緒莉姉さんは楽しいことが起きていると思っているようにも見えた。
僕はもしかして、余計な事を言ってしまったのだろうか。でも、あのクッキーが美味しかったのは事実だし、紅茶を飲んでおいしいと思ったのも初めての経験だったのだ。
「良かったね。陽香の作ってクッキーを美味しいって言ってもらえてさ。ママもパパも甘すぎるって言って食べてくれなかったのに、昌晃君は気に入ってくれたみたいだよ」
「ちょっとやめてよ。確かに私の作ったクッキーを美味しいって言ってもらえたのは嬉しいけど、昌晃のために作ったわけじゃないから。おじさんとおばさんにもあげたし」
「ねえ、真弓は貰ってないんだけど」
「それは、オーブンを借りて練習しただけだからそんなに作ってなかっただけだし。使い方を覚えたらちゃんと皆の分を作るつもりだから」
「へえ、それなのにお兄ちゃんの分はたくさん作ったんでしょ?」
「たくさんって、そんなに多くないって」
「嘘だ。お兄ちゃんの部屋に言ったらクッキーいっぱいあったよ。食べ残しであれだけあったって事は、みんなで食べても良かったんじゃないかな?」
「そうかもしれないけど、あの時はお姉ちゃんはお風呂に入ってたし、真弓は先に寝てたでしょ。だから、昌晃にあげただけだって」
「それっておかしいよね。クッキーってケーキとかシュークリームと違って日持ちするよね。なんで、真弓と沙緒莉お姉ちゃんの分は無かったの?」
「なんでって、二人は前にも食べたことあるでしょ。それだからよ。別に深い意味なんてないし」
「それならいいんだけどさ、陽香お姉ちゃんってお兄ちゃんの事好きなの?」
「好きってどういう意味?」
「そのまんまの意味だけど」
「別に嫌いじゃないけど、好きってわけでもないし。好きとか嫌いじゃなくて安心出来る人って感じかな。真弓はどうなの?」
「どうなのって、陽香お姉ちゃんに教える必要ないし。お兄ちゃんは優しいし、真弓と似てるところがあるから仲良くしたいなって思うけど、それが好きって事なのかはわからないよ」
「それよりもさ、何で昌兄ちゃんからお兄ちゃんに変わってるの?」
「え、何の話?」
「なんの話って、ずっと昌兄ちゃんって言ってたのにお兄ちゃんって呼び方に変わってるのはどうしてなのかなって思ってさ。真弓ってそんな風に昌晃の事を呼んでないよね?」
「いや、ずっと変わってないと思うけど。でも、なんで陽香お姉ちゃんはお兄ちゃんの事を呼び捨てで呼んでるの?」
「なんでって、昔からそうだからだけど。別に意味なんてないし。小さい時から変わってないだけだし」
「まあまあ、昌晃君の呼び方なんてどうでもいいでしょ。陽香も真弓も細かいところに拘り過ぎなのよ。それにさ、きっと真弓は優しいお兄ちゃんが欲しかっただけなんだよ。だから、陽香もそんなに気にしないでみんなで仲良くしましょ」
「別に、真弓はお兄ちゃんが欲しいってわけではないけど。沙緒莉お姉ちゃんも陽香お姉ちゃんも優しくしてくれてるから大丈夫だし。お兄ちゃんも優しくしてくれるし真弓の気持ちをわかってくれてるけど、なんとなく名前を呼ぶのが恥ずかしいって思っただけだもん」
「まあ、そんな時もあるよ。じゃあ、今日は三人で仲良くお風呂にでも入っちゃおうか」
「ちょっと、なんでそうなるのよ。私は一人で入るから」
「そんなこと言わないで、たまには姉妹仲良く入りましょうよ」
「うーん、真弓も一緒じゃなくて一人で入りたいかも」
「じゃあ、仕方ないから私は昌晃君と一緒に入ることにしようかな。ね、いいでしょ?」
「「ダメに決まってるでしょ」」
僕が断る前に陽香と真弓が止めてくれて良かったと思う。そこで本当に誘われたとしても僕は一緒に入るつもりなんてないし、そこで入ると言ってしまえば今後の人間関係にも重大な亀裂を生むことになるだろう。もしかして、沙緒莉姉さんは下着姿を見せることにも飽きて次のステップに進もうとしているのではないだろうか。そんな事は良くないとわかってはいるのだけれど、下着の奥がどうなっているかというのは気になってしまっている僕がいる。これはスケベ心とかではなく、純粋に隠されている物を見てみたいという探求心なのだ。いや、それをスケベ心と呼ぶのではないだろうか。僕は少し恥ずかしくなってしまった。
ただ、僕は少し離れて三人の会話を聞いているのだが、陽香のシャツがボタンを留め間違えているせいで出来た隙間だったり、真弓の履いているサイズの大きいショートパンツの隙間だったり、陽香姉さんの着ているパーカーの大きく開いた首元から下着がチラチラと見えているのは彼女たちに言っていいものか迷うところであった。ずっと見えていれば注意なり指摘なりで教えることも出来るのだが、下着が見えるのはほんの少しの間だけなのでそれをわざわざ言うのも変な話なのではないだろうか。
それを言ってしまったのであれば、僕はずっと彼女たちの下着が見えるタイミングを待っている変態と思われても仕方ない。僕はそれを見たくて見ているのではない、たまたま見えているだけだし、隠れている部分が見えるのは己の中に眠る真実を追求したいという欲求のせいなのだ。
三人の議論が熱くなればなるほど動きも大きくなっているので、その分見える回数も増えているのだけれど、そんな事を彼女たちは知らないのだ。そして、三人とも似たような色の下着を付けているという事もおそらく知りはしないのだろう。
そんな中、僕が視線を下から上に戻した時にやたらと沙緒莉姉さんと目が合うような気がしていたのだが、それって沙緒莉姉さんは僕の行動に気が付いているという事なのだろうか。いや、そんなはずは無いと思うのだけれど、沙緒莉姉さんはボタンのついていないはずのパーカーの襟部分を触ってボタンを留めるようなしぐさをしていた。
もしかして、沙緒莉姉さんは僕が何を見ているのか気付いているのではないだろうか。
「じゃあ、今日は僕が先にお風呂に入ってくるから。順番は三人で仲良く決めなよ」
「順番って、昌晃君の後にお風呂に入る順番って事かな?」
「間違ってないけどさ、その言い方ってなんか悪意がある言い方のように聞こえるんだけど」
「そんな事ないよ。深い意味なんて何も無いんだからね」
そう言いながらも沙緒莉姉さんはミニスカートの裾を直していた。僕はその行動に何の意味があるのかわからなかったけれど、きっと僕が気付いていない何かの暗号なのだろう。僕はそれの意味について考えることなんてせずに、一人でお風呂に入っていた。一昨日よりは長く、昨日よりは短い時間お風呂に入っていたのだが、よくよく考えてみると今日くらいの入浴時間が一番合っていると思っていた。髪もちゃんと乾かせていたし。
リビングに戻ってリンゴジュースを飲んでいたのだけれど、今日は皆でゲームをせずに映画を見ているようだった。今まで何度もテレビで放映されている作品ではあったが、やっているとつい見てしまうような映画であった。
沙緒莉姉さんも陽香も僕と同じように何度か見ているようではあったのだが、真弓は今まで一度も見たことが無かったらしく、誰よりものめりこんでみているようだった。そのせいもあって真弓はお風呂に入るのが一番最後になったようなのだが、僕の後に父さんと母さんが順番に入り、その後に沙緒莉姉さんで次が陽香という順番に決まったようだった。
何度見ても飽きない作品というのは確かにあるのだけれど、僕はつい先日この作品をサブスクで見てしまっていたので最後まで見ようとは思わなかった。僕は皆と同じようにリビングに入るのだけれど、一人でゲームをするという協調性のない事をしていたのだが、僕に言わせると部屋に戻らずにリビングにいる時点で協調性を発揮していると言えるものだと信じていた。
「そのゲームって難しいの?」
「ちょっと難しいけど慣れればそんな事は無いかも。沙緒莉姉さんだったらマニュアル読んですぐにシステムを理解出来るんじゃないかな」
「へえ、面白そうだからやってみたいかも」
「じゃあ、セーブしとくから最初から初めていいよ。わからないことがあったら聞いてね」
「ありがとう。これって真弓もやってたりするのかな?」
「やってるんじゃないかな。フレンドの遊んだゲームに載ってたからね」
「そんなとこまでわかるなんて最近のゲームは凄いね。じゃあ、私もこれを出来るように頑張ってみるよ」
沙緒莉姉さんのやっているゲームを横から見たりしてアドバイスをしているのだけれど、僕の予想通り沙緒莉姉さんの理解力は凄かったので母さんがお風呂から出てきたときには何も教えなくてもいいくらいに理解していたのだった。
「結構面白くて集中しちゃうかもね。私もお風呂に入ってくるからいったんやめようかな。どうやってやめるの?」
「えっと、メニュー画面を開いて記録してもらえれば大丈夫だよ。僕のデータに書き込まないようにしてくれればいいから」
「心配だからそれをやってもらってもいいかな?」
「別にいいけど」
「じゃあ、お風呂に行ってくるからまた今度貸してね」
僕がゲームを終了させている時に沙緒莉姉さんはその画面を覗き込んでいたのだけれど、僕が沙緒莉姉さんの方を向くと、相変わらず大きく開いている首元から大きな胸が見えていた。僕は思わずそれを見てしまったのだけれど、沙緒莉姉さん以外の誰もそれに気付いている様子はなかった。
沙緒莉姉さんは父さんと母さんがいる時にそんな風に見せてきたことは無かったのだけれど、なぜか今は気にせずに見せてきていたのだ。
もしかして、沙緒莉姉さんの見せたいという欲求が昨日よりも強くなってしまっているのではないだろうか。お風呂に一緒に入ろうという言葉も、冗談ではなく本心だったのではないかと僕は勘繰ってしまっていたのだった。
今日の晩御飯は沙緒莉姉さんが作ってくれたロールキャベツだったのだが、味付けもちょうど良く徐々に薄味しかない世界から脱出出来ているようだ。母さんは洋食をそれほど上手く作れないので少し心配だったのだが、レシピが載っているサイトの動画を参考に作ったとのことで少しだけ形は歪ではあったのだけれど、最後の一つを食べる時はこれでなくなってしまうのかと寂しい気持ちになってしまうくらいだった。
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「どうだろう。でも、僕は結構説明書を読むのが好きだよ。ゲームとかはパターンが決まってるからあんまり見ることは無いけど、新しいガジェットを手に入れた時はマニュアルの載ってるサイトをじっくり見たりしてるかも」
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「うん、昌兄ちゃんと楽しく遊んできたよ。学校の周りにある店とかいろいろ見てきたし、今度お姉ちゃんたちにも教えてあげるね。それと、一緒に美味しいモノ食べてきたよ」
「美味しいものって、ハンバーガーでしょ?」
「違うよ。甘くておいしいやつを食べてきたんだ。確か、明日までの期間限定だったからもう無くなってるかもね。お姉ちゃんたちが食べられるのは来年かな」
「ちょっと、そんなのがあったなら買ってきてくれても良かったじゃない。もう、私もついていけばよかったな」
「今日は昌兄ちゃんと二人だけで行く約束だったからダメだもん。次は皆で行こうね」
「あ、そう言えばさ、沙緒莉も真弓も昌晃君と二人だけで出かけたことあるでしょ。次は私が昌晃君とデートする番かな」
「ちょっとお姉ちゃん、デートって何よ。私はそんなつもりで言ったわけじゃないし、買い物の付き添いで行っただけなんだけど。でも、真弓はどういうつもりで行ったのかわからないけどね。って、何で真弓は何も言わないで照れているのよ」
「だって、真弓は買い物の付き添いって感じじゃなかったから、ね」
「じゃあ、学校始まる前に私と何か食べに行こうか。この辺で甘いモノ食べられる場所とかあればいいんだけど」
「ええ、真弓も甘いモノ食べるの一緒に行きたいな」
「真弓は今日一緒に食べたんでしょ。次はお姉ちゃんの番だと思うけどな。それとも、陽香も一緒に行く?」
「別に行ってもいいけど、甘いモノ食べたいし」
「じゃあ、決まりだね。昌晃君はどこかおススメある?」
「お勧めって言われてもな。あんまり外に食べにいかないからさ。でも、昨日食べたクッキーが美味しかったから家で作るってのもいいんじゃないかな」
「へえ、クッキー食べたんだ。それって、お店のやつだったのかな?」
「いや、違うと思うけど。どうして?」
僕はどうしてそんな事を聞かれるのだろうと思っていたのだけれど、なぜかクッキーを持ってきてくれた陽香は顔を赤く染めて下を向いていた。その様子をじっと見ている真弓はどこか怒っているようにも見えたし、それを見ている沙緒莉姉さんは楽しいことが起きていると思っているようにも見えた。
僕はもしかして、余計な事を言ってしまったのだろうか。でも、あのクッキーが美味しかったのは事実だし、紅茶を飲んでおいしいと思ったのも初めての経験だったのだ。
「良かったね。陽香の作ってクッキーを美味しいって言ってもらえてさ。ママもパパも甘すぎるって言って食べてくれなかったのに、昌晃君は気に入ってくれたみたいだよ」
「ちょっとやめてよ。確かに私の作ったクッキーを美味しいって言ってもらえたのは嬉しいけど、昌晃のために作ったわけじゃないから。おじさんとおばさんにもあげたし」
「ねえ、真弓は貰ってないんだけど」
「それは、オーブンを借りて練習しただけだからそんなに作ってなかっただけだし。使い方を覚えたらちゃんと皆の分を作るつもりだから」
「へえ、それなのにお兄ちゃんの分はたくさん作ったんでしょ?」
「たくさんって、そんなに多くないって」
「嘘だ。お兄ちゃんの部屋に言ったらクッキーいっぱいあったよ。食べ残しであれだけあったって事は、みんなで食べても良かったんじゃないかな?」
「そうかもしれないけど、あの時はお姉ちゃんはお風呂に入ってたし、真弓は先に寝てたでしょ。だから、昌晃にあげただけだって」
「それっておかしいよね。クッキーってケーキとかシュークリームと違って日持ちするよね。なんで、真弓と沙緒莉お姉ちゃんの分は無かったの?」
「なんでって、二人は前にも食べたことあるでしょ。それだからよ。別に深い意味なんてないし」
「それならいいんだけどさ、陽香お姉ちゃんってお兄ちゃんの事好きなの?」
「好きってどういう意味?」
「そのまんまの意味だけど」
「別に嫌いじゃないけど、好きってわけでもないし。好きとか嫌いじゃなくて安心出来る人って感じかな。真弓はどうなの?」
「どうなのって、陽香お姉ちゃんに教える必要ないし。お兄ちゃんは優しいし、真弓と似てるところがあるから仲良くしたいなって思うけど、それが好きって事なのかはわからないよ」
「それよりもさ、何で昌兄ちゃんからお兄ちゃんに変わってるの?」
「え、何の話?」
「なんの話って、ずっと昌兄ちゃんって言ってたのにお兄ちゃんって呼び方に変わってるのはどうしてなのかなって思ってさ。真弓ってそんな風に昌晃の事を呼んでないよね?」
「いや、ずっと変わってないと思うけど。でも、なんで陽香お姉ちゃんはお兄ちゃんの事を呼び捨てで呼んでるの?」
「なんでって、昔からそうだからだけど。別に意味なんてないし。小さい時から変わってないだけだし」
「まあまあ、昌晃君の呼び方なんてどうでもいいでしょ。陽香も真弓も細かいところに拘り過ぎなのよ。それにさ、きっと真弓は優しいお兄ちゃんが欲しかっただけなんだよ。だから、陽香もそんなに気にしないでみんなで仲良くしましょ」
「別に、真弓はお兄ちゃんが欲しいってわけではないけど。沙緒莉お姉ちゃんも陽香お姉ちゃんも優しくしてくれてるから大丈夫だし。お兄ちゃんも優しくしてくれるし真弓の気持ちをわかってくれてるけど、なんとなく名前を呼ぶのが恥ずかしいって思っただけだもん」
「まあ、そんな時もあるよ。じゃあ、今日は三人で仲良くお風呂にでも入っちゃおうか」
「ちょっと、なんでそうなるのよ。私は一人で入るから」
「そんなこと言わないで、たまには姉妹仲良く入りましょうよ」
「うーん、真弓も一緒じゃなくて一人で入りたいかも」
「じゃあ、仕方ないから私は昌晃君と一緒に入ることにしようかな。ね、いいでしょ?」
「「ダメに決まってるでしょ」」
僕が断る前に陽香と真弓が止めてくれて良かったと思う。そこで本当に誘われたとしても僕は一緒に入るつもりなんてないし、そこで入ると言ってしまえば今後の人間関係にも重大な亀裂を生むことになるだろう。もしかして、沙緒莉姉さんは下着姿を見せることにも飽きて次のステップに進もうとしているのではないだろうか。そんな事は良くないとわかってはいるのだけれど、下着の奥がどうなっているかというのは気になってしまっている僕がいる。これはスケベ心とかではなく、純粋に隠されている物を見てみたいという探求心なのだ。いや、それをスケベ心と呼ぶのではないだろうか。僕は少し恥ずかしくなってしまった。
ただ、僕は少し離れて三人の会話を聞いているのだが、陽香のシャツがボタンを留め間違えているせいで出来た隙間だったり、真弓の履いているサイズの大きいショートパンツの隙間だったり、陽香姉さんの着ているパーカーの大きく開いた首元から下着がチラチラと見えているのは彼女たちに言っていいものか迷うところであった。ずっと見えていれば注意なり指摘なりで教えることも出来るのだが、下着が見えるのはほんの少しの間だけなのでそれをわざわざ言うのも変な話なのではないだろうか。
それを言ってしまったのであれば、僕はずっと彼女たちの下着が見えるタイミングを待っている変態と思われても仕方ない。僕はそれを見たくて見ているのではない、たまたま見えているだけだし、隠れている部分が見えるのは己の中に眠る真実を追求したいという欲求のせいなのだ。
三人の議論が熱くなればなるほど動きも大きくなっているので、その分見える回数も増えているのだけれど、そんな事を彼女たちは知らないのだ。そして、三人とも似たような色の下着を付けているという事もおそらく知りはしないのだろう。
そんな中、僕が視線を下から上に戻した時にやたらと沙緒莉姉さんと目が合うような気がしていたのだが、それって沙緒莉姉さんは僕の行動に気が付いているという事なのだろうか。いや、そんなはずは無いと思うのだけれど、沙緒莉姉さんはボタンのついていないはずのパーカーの襟部分を触ってボタンを留めるようなしぐさをしていた。
もしかして、沙緒莉姉さんは僕が何を見ているのか気付いているのではないだろうか。
「じゃあ、今日は僕が先にお風呂に入ってくるから。順番は三人で仲良く決めなよ」
「順番って、昌晃君の後にお風呂に入る順番って事かな?」
「間違ってないけどさ、その言い方ってなんか悪意がある言い方のように聞こえるんだけど」
「そんな事ないよ。深い意味なんて何も無いんだからね」
そう言いながらも沙緒莉姉さんはミニスカートの裾を直していた。僕はその行動に何の意味があるのかわからなかったけれど、きっと僕が気付いていない何かの暗号なのだろう。僕はそれの意味について考えることなんてせずに、一人でお風呂に入っていた。一昨日よりは長く、昨日よりは短い時間お風呂に入っていたのだが、よくよく考えてみると今日くらいの入浴時間が一番合っていると思っていた。髪もちゃんと乾かせていたし。
リビングに戻ってリンゴジュースを飲んでいたのだけれど、今日は皆でゲームをせずに映画を見ているようだった。今まで何度もテレビで放映されている作品ではあったが、やっているとつい見てしまうような映画であった。
沙緒莉姉さんも陽香も僕と同じように何度か見ているようではあったのだが、真弓は今まで一度も見たことが無かったらしく、誰よりものめりこんでみているようだった。そのせいもあって真弓はお風呂に入るのが一番最後になったようなのだが、僕の後に父さんと母さんが順番に入り、その後に沙緒莉姉さんで次が陽香という順番に決まったようだった。
何度見ても飽きない作品というのは確かにあるのだけれど、僕はつい先日この作品をサブスクで見てしまっていたので最後まで見ようとは思わなかった。僕は皆と同じようにリビングに入るのだけれど、一人でゲームをするという協調性のない事をしていたのだが、僕に言わせると部屋に戻らずにリビングにいる時点で協調性を発揮していると言えるものだと信じていた。
「そのゲームって難しいの?」
「ちょっと難しいけど慣れればそんな事は無いかも。沙緒莉姉さんだったらマニュアル読んですぐにシステムを理解出来るんじゃないかな」
「へえ、面白そうだからやってみたいかも」
「じゃあ、セーブしとくから最初から初めていいよ。わからないことがあったら聞いてね」
「ありがとう。これって真弓もやってたりするのかな?」
「やってるんじゃないかな。フレンドの遊んだゲームに載ってたからね」
「そんなとこまでわかるなんて最近のゲームは凄いね。じゃあ、私もこれを出来るように頑張ってみるよ」
沙緒莉姉さんのやっているゲームを横から見たりしてアドバイスをしているのだけれど、僕の予想通り沙緒莉姉さんの理解力は凄かったので母さんがお風呂から出てきたときには何も教えなくてもいいくらいに理解していたのだった。
「結構面白くて集中しちゃうかもね。私もお風呂に入ってくるからいったんやめようかな。どうやってやめるの?」
「えっと、メニュー画面を開いて記録してもらえれば大丈夫だよ。僕のデータに書き込まないようにしてくれればいいから」
「心配だからそれをやってもらってもいいかな?」
「別にいいけど」
「じゃあ、お風呂に行ってくるからまた今度貸してね」
僕がゲームを終了させている時に沙緒莉姉さんはその画面を覗き込んでいたのだけれど、僕が沙緒莉姉さんの方を向くと、相変わらず大きく開いている首元から大きな胸が見えていた。僕は思わずそれを見てしまったのだけれど、沙緒莉姉さん以外の誰もそれに気付いている様子はなかった。
沙緒莉姉さんは父さんと母さんがいる時にそんな風に見せてきたことは無かったのだけれど、なぜか今は気にせずに見せてきていたのだ。
もしかして、沙緒莉姉さんの見せたいという欲求が昨日よりも強くなってしまっているのではないだろうか。お風呂に一緒に入ろうという言葉も、冗談ではなく本心だったのではないかと僕は勘繰ってしまっていたのだった。
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