15 / 45
第15話 うまなちゃんと柘榴ちゃん
しおりを挟む
サキュバスとレジスタンスの抗争にはいくつか決め事があり、その一つには開戦時にお互いが確認した戦力以外は参加することが出来ないというものがある。
SRクラスはその性質上どの戦闘にもクラスとして参加することは出来ないのだが、生徒が自主的に参加することは認められているのだ。ただし、今回は開戦時に参加表明をしているものがいないため全員が観戦するという立場になっている。
「最初の一時間で結構動きがあったからどうなる事かと思ったんだけど、このままだとどちらも徐々に戦力が削られるだけで決定打にかけるかもね。これ以上続けても意味が無いように思えるんだけど、今回は一年生同士の戦いって事もあるし会長とうまなちゃんが行って休戦か停戦の申し出をしてきたらいいんじゃないかな」
「中学までの模擬戦と違って最初の実践は色々と考えることがあるものね。今までは相手の命を奪う事なんて無かったわけだけど、今回からは普通に相手を殺しちゃうこともあるんだしね。あとで生き返ることが出来るとはいえ、人を殺したって感触は慣れるまで大変なんだよね。前線で戦ってた子たちもみんな後ろに下がっちゃってるし、それを見たレジスタンスの子たちも戦意喪失しかけてるよね」
「サキュバスの子たちもあれだけ仕掛けてるのに目に見える結果が無いからなのか、特攻している人自体も減っているね。例年通りの負傷者数になっちゃう前に止めてあげるのも必要なんじゃないかな」
イザーと鈴木愛華は冷静な目で戦況を分析していた。このまま続けていけば勝敗はつくのかもしれないが、最後まで戦い抜いたという経験よりも被害を少なくして次回に繋げることの方が大事だと二人は考えていた。
栗宮院うまなと栗鳥院柘榴も基本的には二人と同じ考えなのだが、今のように均衡した状態で休戦に入るよりもどちらかが一気に攻めて有利な状況にしてから休戦の協定を結ぶべきだと思っているのだ。一年生最初の戦いが均衡状態のまま終わってしまうよりもどちらかが有利な状況で終わらせた方が夏以降に起こると思われる複数学年での大規模抗争で優位に立つことが出来ると考えてもいるのだ。
だが、両陣営とも完全に戦意を失いつつあるこの状況では栗宮院うまなと栗鳥院柘榴の考える最善の状況に至ることはないだろう。実際の戦闘での心理的ストレスは想像以上に重く、彼女たちのようにどんな状況でも自分の力で好転させることが出来るような天才とは違うという事を理解出来ていないのだ。
「死んだとしても放課後には生き返ることが出来るんだから無理してでも突っ込めばいいのに。自分の命を犠牲になったとしても、仲間のためになるんだったら行けると思うんだけどな。人間死ぬ気になれば何でもできるっていうけど、それはサキュバスにとっても同じだと思うんだよね。私が司令官だったら、一年生の初戦なんて死ぬことを恐れずにがむしゃらに突っ込めって言うかもしれないわ」
「その考えはとてもいいと思うわ。サキュバスは無駄に数も多いしちょこちょこ来られると守る方も疲労が溜まってしまうもの。防衛ラインを突破されてしまう危険性はあるかもしれないけれど、人数が少ないレジスタンス側としてはその方がありがたいのよね」
「死を経験することで強くなることもあるんだし、レジスタンスの薄い壁なんて数の力で押し切ればいいんだって思うんだけどな」
「分厚い壁をぶち破ることが出来る豆鉄砲があるのなら見てみたいけどね。一年生のサキュバスにそれが出来るとは思えないんですけど」
休戦の使者として期待されている栗宮院うまなと栗鳥院柘榴はお互いの戦術論と育成論をぶつけあっていた。どちらが正しいのか判断できない工藤珠希ではあったが、一つだけ考えを改めてほしいと思うところがあった。
何も知らない自分が言うのはおかしいのではないかと思ってしまうのだが、今この場で言わなければ一生理解してもらえる機会はないのではないかとも思ってしまっていた。
「大体、サキュバスは数の多さにかまけて戦術も戦略も何もないじゃないか。うまなちゃんが自分一人で何でも出来るから他の人も自分と同じように出来ると思っているのかもしれないけれど、君は誰がどう見ても特別だし君のように何でも出来るサキュバスなんてどこにもいやしないんだ。その事を君はもっと自覚した方がいいよ」
「私も言わせてもらうけど、柘榴ちゃんだって人間とは思えないほど凄い力を持ってるじゃない。あなたが一人、一年生に加わったとしたら今頃一年生のサキュバスは全滅してるんじゃないかって思うわ。ただ強いだけではなく先を読み通す力もあるあなたが後輩たちに何も教えないってのは良くないことじゃないかと思うんだけど。あなたの考えをもっとわかりやすく後輩たちに教えていたとしたら、この学校は今までのようにサキュバス優勢とはいかなかったんじゃないかしらね」
「それは無いと思うね。私がどれだけ後輩に知恵を授けたとしても、あなたがサキュバスのトップにいる限りは焼け石に水よ。うまなちゃん以外のサキュバスを全員殺したとしても、あなたが生き残っていたらこちらが全滅する危険性があるって事なのよ。私があなたを倒さない限りレジスタンス側に完全勝利と言うモノは存在しないのよ」
「でも、今のあなただったら、私を倒すことも出来ると思うんだけど。月に一度サキュバスの力が弱まる時に開戦すればいいのに、私がどうすることも出来ない弱点をあなたはつこうとしないわよね。そこで非情になることが出来ればサキュバス側の全戦無敗という記録が破れてしまうと思うだけどね」
「そんな卑怯な真似は出来ないよ。私は正々堂々と戦ってうまなちゃんに勝ちたいんだよ。弱体化している相手に勝ったなんて恥ずかしくて誰にも言えないでしょ」
貶しあっていたはずの二人は何故かお互いの事を誉めていた。
それは良いことなんだろうと思った工藤珠希ではあったが、何か腑に落ちないものを感じてしまっていたのだった。
SRクラスはその性質上どの戦闘にもクラスとして参加することは出来ないのだが、生徒が自主的に参加することは認められているのだ。ただし、今回は開戦時に参加表明をしているものがいないため全員が観戦するという立場になっている。
「最初の一時間で結構動きがあったからどうなる事かと思ったんだけど、このままだとどちらも徐々に戦力が削られるだけで決定打にかけるかもね。これ以上続けても意味が無いように思えるんだけど、今回は一年生同士の戦いって事もあるし会長とうまなちゃんが行って休戦か停戦の申し出をしてきたらいいんじゃないかな」
「中学までの模擬戦と違って最初の実践は色々と考えることがあるものね。今までは相手の命を奪う事なんて無かったわけだけど、今回からは普通に相手を殺しちゃうこともあるんだしね。あとで生き返ることが出来るとはいえ、人を殺したって感触は慣れるまで大変なんだよね。前線で戦ってた子たちもみんな後ろに下がっちゃってるし、それを見たレジスタンスの子たちも戦意喪失しかけてるよね」
「サキュバスの子たちもあれだけ仕掛けてるのに目に見える結果が無いからなのか、特攻している人自体も減っているね。例年通りの負傷者数になっちゃう前に止めてあげるのも必要なんじゃないかな」
イザーと鈴木愛華は冷静な目で戦況を分析していた。このまま続けていけば勝敗はつくのかもしれないが、最後まで戦い抜いたという経験よりも被害を少なくして次回に繋げることの方が大事だと二人は考えていた。
栗宮院うまなと栗鳥院柘榴も基本的には二人と同じ考えなのだが、今のように均衡した状態で休戦に入るよりもどちらかが一気に攻めて有利な状況にしてから休戦の協定を結ぶべきだと思っているのだ。一年生最初の戦いが均衡状態のまま終わってしまうよりもどちらかが有利な状況で終わらせた方が夏以降に起こると思われる複数学年での大規模抗争で優位に立つことが出来ると考えてもいるのだ。
だが、両陣営とも完全に戦意を失いつつあるこの状況では栗宮院うまなと栗鳥院柘榴の考える最善の状況に至ることはないだろう。実際の戦闘での心理的ストレスは想像以上に重く、彼女たちのようにどんな状況でも自分の力で好転させることが出来るような天才とは違うという事を理解出来ていないのだ。
「死んだとしても放課後には生き返ることが出来るんだから無理してでも突っ込めばいいのに。自分の命を犠牲になったとしても、仲間のためになるんだったら行けると思うんだけどな。人間死ぬ気になれば何でもできるっていうけど、それはサキュバスにとっても同じだと思うんだよね。私が司令官だったら、一年生の初戦なんて死ぬことを恐れずにがむしゃらに突っ込めって言うかもしれないわ」
「その考えはとてもいいと思うわ。サキュバスは無駄に数も多いしちょこちょこ来られると守る方も疲労が溜まってしまうもの。防衛ラインを突破されてしまう危険性はあるかもしれないけれど、人数が少ないレジスタンス側としてはその方がありがたいのよね」
「死を経験することで強くなることもあるんだし、レジスタンスの薄い壁なんて数の力で押し切ればいいんだって思うんだけどな」
「分厚い壁をぶち破ることが出来る豆鉄砲があるのなら見てみたいけどね。一年生のサキュバスにそれが出来るとは思えないんですけど」
休戦の使者として期待されている栗宮院うまなと栗鳥院柘榴はお互いの戦術論と育成論をぶつけあっていた。どちらが正しいのか判断できない工藤珠希ではあったが、一つだけ考えを改めてほしいと思うところがあった。
何も知らない自分が言うのはおかしいのではないかと思ってしまうのだが、今この場で言わなければ一生理解してもらえる機会はないのではないかとも思ってしまっていた。
「大体、サキュバスは数の多さにかまけて戦術も戦略も何もないじゃないか。うまなちゃんが自分一人で何でも出来るから他の人も自分と同じように出来ると思っているのかもしれないけれど、君は誰がどう見ても特別だし君のように何でも出来るサキュバスなんてどこにもいやしないんだ。その事を君はもっと自覚した方がいいよ」
「私も言わせてもらうけど、柘榴ちゃんだって人間とは思えないほど凄い力を持ってるじゃない。あなたが一人、一年生に加わったとしたら今頃一年生のサキュバスは全滅してるんじゃないかって思うわ。ただ強いだけではなく先を読み通す力もあるあなたが後輩たちに何も教えないってのは良くないことじゃないかと思うんだけど。あなたの考えをもっとわかりやすく後輩たちに教えていたとしたら、この学校は今までのようにサキュバス優勢とはいかなかったんじゃないかしらね」
「それは無いと思うね。私がどれだけ後輩に知恵を授けたとしても、あなたがサキュバスのトップにいる限りは焼け石に水よ。うまなちゃん以外のサキュバスを全員殺したとしても、あなたが生き残っていたらこちらが全滅する危険性があるって事なのよ。私があなたを倒さない限りレジスタンス側に完全勝利と言うモノは存在しないのよ」
「でも、今のあなただったら、私を倒すことも出来ると思うんだけど。月に一度サキュバスの力が弱まる時に開戦すればいいのに、私がどうすることも出来ない弱点をあなたはつこうとしないわよね。そこで非情になることが出来ればサキュバス側の全戦無敗という記録が破れてしまうと思うだけどね」
「そんな卑怯な真似は出来ないよ。私は正々堂々と戦ってうまなちゃんに勝ちたいんだよ。弱体化している相手に勝ったなんて恥ずかしくて誰にも言えないでしょ」
貶しあっていたはずの二人は何故かお互いの事を誉めていた。
それは良いことなんだろうと思った工藤珠希ではあったが、何か腑に落ちないものを感じてしまっていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる