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第14話 抗争の始まりの理由
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午後の授業が始まっても抗争は落ち着くことが無く、遠くから聞こえる爆発音と地震があったのではないかと勘違いしてしまうような振動が続いていた。
そんな状況なので自習と言っても誰一人として勉強をしようとするものはなく、栗宮院うまなも栗鳥院柘榴も午前中とは違い勉強をせずに抗争を見守っていた。
サキュバス達は誰一人として自分が新しい司令官になってみんなを率いて戦おうというものは出なかった。
一方、レジスタンスは新しい司令官を擁立し攻め込まれない程度の攻撃をしつつ、体制を立て直していた。これは、大きく人数に劣るレジスタンスがサキュバスと対等以上に戦う事が出来る理由の一つである。
その事を踏まえると、レジスタンス側が優位に進むのではないかとの見方も多いのだが、圧倒的な数の前には統制されているレジスタンスも容易に攻め込むことは出来ないようだ。何の考えも無しに突っ込んでくるサキュバスもいればレジスタンス側の隙をついて攻撃をしてくるサキュバスもいるのだ。統率がとれていない相手に対応するにはレジスタンス側も経験が不足していると言えよう。
ただ、被害という面で見ればサキュバス側に多数の死者が出ているのにもかかわらず、レジスタンス側は最初に司令官が亡くなっただけで死者自体は出ていないのだ。
「この状況だとレジスタンス側が有利になりそうだな。ただ、明日になるとサキュバス側も対策を立てると思うし危険かもな」
「そんな感じに見えるけど、レジスタンス側だって向かってくるサキュバスを相手にするだけじゃ状況を変えることが出来ないってわかってるんじゃないかな」
「そうだろうけど、人数にこれだけ差があると数の少ないレジスタンス側が攻め込むのも勇気がいるんじゃないかな。体力や戦闘能力なんかでは圧倒しているレジスタンスだけど、人数が少ないので一人一人の負担も大きくなるだろうし、いくら強いって言ったって人間なんだからスタミナも限界があるってもんだろうよ」
「迎え撃つってだけでもあれだけ頻度が高いと身も心も疲弊しちゃうよな。レジスタンス側に死者が出たら一気に崩れる可能性だってあるわけだもんな」
冷静に状況を把握しようとする野城と工藤太郎。
自称観測者と言うだけの事はあって細かい状況まで確認しているようなのだが、その事を普通に受け入れている工藤太郎に対して工藤珠希はなぜこの状況をそんなに簡単に受け入れられるのだろうと思っていた。
テレビやゲームではなく実際に人が死んでいるというのに、この二人はどうしてその事実を簡単に受け止めて軽いことのように思っているのだろうか。他のみんなも死者が出ていることを深刻に受け止めていないのは一緒なのだが、この学校に来たばかりで自分と同じ状況のはずの工藤太郎が何の疑問もなくこの事態を受け入れているという事が信じられなかった。
「珠希ちゃんはどっちが勝つと思うかな?」
「わかんないかも。なんで戦ってるのかもわからないし」
「そっか、珠希ちゃんは今回の抗争の理由を知らないんだね。私も正確なことは知らないんだけど、たぶんそうじゃないかって噂は聞いているんだよ。でね、その正確な理由を知りたいんだったらイザーちゃんに聞いてみたらいいんじゃないかな。私たちじゃイザーちゃんに話しかけるのちょっとためらっちゃうんだけど、珠希ちゃんならきっとイザーちゃんも話を聞いてくれると思うんだ。だから、聞いてきてもらっても良いかな?」
あまり授業中に席を立つのは良くないんじゃないかと思っている工藤珠希ではあったが、よくよく考えてみると今は自習中なのでそんなに気にする事でもないんじゃないかと思い直した。
席を立ってイザーがいる窓際に向おうと思ったのだが、工藤珠希が自分の所に向かってきていると知ったイザーはトコトコと歩いて工藤珠希の近くまでやってきた。
自分よりも背の低いイザーをやや見下ろす形にはなってしまって気まずい感じになった工藤珠希ではあったが、周りの人達もこのタイミングで理由を聞いてほしいという思いを視線に乗せてきているのがわかって思わず強く出てしまった。
「あのさ、イザーちゃんは今回の抗争がどうして始まったか知ってるって聞いたんだけど、それを教えて貰っても良いかな?」
勢いに任せて聞こうと思った工藤珠希ではあったが、途中から少しだけ本当にイザーが理由を知っているのだろうかと言う疑問が出てきて後半は集中していないと聞き取れないんじゃないかと思うくらいに小声になってしまっていた。
イザーは少しだけ意地悪な感じで聞き返していたのだが、工藤珠希は二回目なのでハッキリとした言葉で質問をしていた。イザーは少しだけガッカリしているように見えたのだった。
「今回の抗争の理由なんだけど、珠希ちゃんを先に招待するのがどっちかってのが原因らしいよ。珠希ちゃんはサキュバスでもレジスタンスでもないし、かといって観測者でもないっていう不思議な立場だからね。どっちが先に声をかけるかで揉めてるみたいだよ」
「え、私を招待するって、いったい何に?」
「何って、学食に招待するのはどっちが先かって事だよ。全サキュバスの憧れである珠希ちゃんに私達SRクラスの次に声をかける優先権があるのは同じ学年の人達だからね。あの子たちが純粋な気持ちで珠希ちゃんを誘おうと思ってるみたいなんだけど、レジスタンスとしては珠希ちゃんがサキュバスと仲良くなるのは避けたいみたいなんだって。でも、どうしても順番はまわってくるって考えると、サキュバスよりも先に珠希ちゃんと仲良くなっちゃおうって思ったみたいだよ。だから、今回の抗争は珠希ちゃんを巡って繰り広げられる抗争の第一弾って事になるのかな」
「食事くらいだったらみんなですればいいのに」
「そうもいかないんだよ。ここのクラスみたいにサキュバスとレジスタンスが仲良く一緒に行動することなんて滅多にないことなんだよ。簡単に仲良くなれるんだとしたら、校舎だって同じところを使ってるはずだしね。まあ、時々例外は起っちゃうけど、それも良くあることだから気にしなくていいかもね」
時々で良くある。
たまに聞く言葉ではあるが、工藤珠希はその意味を知ろうとは思わなかった。
まさかの自分が理由で抗争が起こってしまっている。人が亡くなっているのは間接的に自分の責任になってしまうのではないかと思った工藤珠希ではあった。
自分が原因で人の命が奪われることなんて、悲しい出来事でしかないと思うのだった。
そんな状況なので自習と言っても誰一人として勉強をしようとするものはなく、栗宮院うまなも栗鳥院柘榴も午前中とは違い勉強をせずに抗争を見守っていた。
サキュバス達は誰一人として自分が新しい司令官になってみんなを率いて戦おうというものは出なかった。
一方、レジスタンスは新しい司令官を擁立し攻め込まれない程度の攻撃をしつつ、体制を立て直していた。これは、大きく人数に劣るレジスタンスがサキュバスと対等以上に戦う事が出来る理由の一つである。
その事を踏まえると、レジスタンス側が優位に進むのではないかとの見方も多いのだが、圧倒的な数の前には統制されているレジスタンスも容易に攻め込むことは出来ないようだ。何の考えも無しに突っ込んでくるサキュバスもいればレジスタンス側の隙をついて攻撃をしてくるサキュバスもいるのだ。統率がとれていない相手に対応するにはレジスタンス側も経験が不足していると言えよう。
ただ、被害という面で見ればサキュバス側に多数の死者が出ているのにもかかわらず、レジスタンス側は最初に司令官が亡くなっただけで死者自体は出ていないのだ。
「この状況だとレジスタンス側が有利になりそうだな。ただ、明日になるとサキュバス側も対策を立てると思うし危険かもな」
「そんな感じに見えるけど、レジスタンス側だって向かってくるサキュバスを相手にするだけじゃ状況を変えることが出来ないってわかってるんじゃないかな」
「そうだろうけど、人数にこれだけ差があると数の少ないレジスタンス側が攻め込むのも勇気がいるんじゃないかな。体力や戦闘能力なんかでは圧倒しているレジスタンスだけど、人数が少ないので一人一人の負担も大きくなるだろうし、いくら強いって言ったって人間なんだからスタミナも限界があるってもんだろうよ」
「迎え撃つってだけでもあれだけ頻度が高いと身も心も疲弊しちゃうよな。レジスタンス側に死者が出たら一気に崩れる可能性だってあるわけだもんな」
冷静に状況を把握しようとする野城と工藤太郎。
自称観測者と言うだけの事はあって細かい状況まで確認しているようなのだが、その事を普通に受け入れている工藤太郎に対して工藤珠希はなぜこの状況をそんなに簡単に受け入れられるのだろうと思っていた。
テレビやゲームではなく実際に人が死んでいるというのに、この二人はどうしてその事実を簡単に受け止めて軽いことのように思っているのだろうか。他のみんなも死者が出ていることを深刻に受け止めていないのは一緒なのだが、この学校に来たばかりで自分と同じ状況のはずの工藤太郎が何の疑問もなくこの事態を受け入れているという事が信じられなかった。
「珠希ちゃんはどっちが勝つと思うかな?」
「わかんないかも。なんで戦ってるのかもわからないし」
「そっか、珠希ちゃんは今回の抗争の理由を知らないんだね。私も正確なことは知らないんだけど、たぶんそうじゃないかって噂は聞いているんだよ。でね、その正確な理由を知りたいんだったらイザーちゃんに聞いてみたらいいんじゃないかな。私たちじゃイザーちゃんに話しかけるのちょっとためらっちゃうんだけど、珠希ちゃんならきっとイザーちゃんも話を聞いてくれると思うんだ。だから、聞いてきてもらっても良いかな?」
あまり授業中に席を立つのは良くないんじゃないかと思っている工藤珠希ではあったが、よくよく考えてみると今は自習中なのでそんなに気にする事でもないんじゃないかと思い直した。
席を立ってイザーがいる窓際に向おうと思ったのだが、工藤珠希が自分の所に向かってきていると知ったイザーはトコトコと歩いて工藤珠希の近くまでやってきた。
自分よりも背の低いイザーをやや見下ろす形にはなってしまって気まずい感じになった工藤珠希ではあったが、周りの人達もこのタイミングで理由を聞いてほしいという思いを視線に乗せてきているのがわかって思わず強く出てしまった。
「あのさ、イザーちゃんは今回の抗争がどうして始まったか知ってるって聞いたんだけど、それを教えて貰っても良いかな?」
勢いに任せて聞こうと思った工藤珠希ではあったが、途中から少しだけ本当にイザーが理由を知っているのだろうかと言う疑問が出てきて後半は集中していないと聞き取れないんじゃないかと思うくらいに小声になってしまっていた。
イザーは少しだけ意地悪な感じで聞き返していたのだが、工藤珠希は二回目なのでハッキリとした言葉で質問をしていた。イザーは少しだけガッカリしているように見えたのだった。
「今回の抗争の理由なんだけど、珠希ちゃんを先に招待するのがどっちかってのが原因らしいよ。珠希ちゃんはサキュバスでもレジスタンスでもないし、かといって観測者でもないっていう不思議な立場だからね。どっちが先に声をかけるかで揉めてるみたいだよ」
「え、私を招待するって、いったい何に?」
「何って、学食に招待するのはどっちが先かって事だよ。全サキュバスの憧れである珠希ちゃんに私達SRクラスの次に声をかける優先権があるのは同じ学年の人達だからね。あの子たちが純粋な気持ちで珠希ちゃんを誘おうと思ってるみたいなんだけど、レジスタンスとしては珠希ちゃんがサキュバスと仲良くなるのは避けたいみたいなんだって。でも、どうしても順番はまわってくるって考えると、サキュバスよりも先に珠希ちゃんと仲良くなっちゃおうって思ったみたいだよ。だから、今回の抗争は珠希ちゃんを巡って繰り広げられる抗争の第一弾って事になるのかな」
「食事くらいだったらみんなですればいいのに」
「そうもいかないんだよ。ここのクラスみたいにサキュバスとレジスタンスが仲良く一緒に行動することなんて滅多にないことなんだよ。簡単に仲良くなれるんだとしたら、校舎だって同じところを使ってるはずだしね。まあ、時々例外は起っちゃうけど、それも良くあることだから気にしなくていいかもね」
時々で良くある。
たまに聞く言葉ではあるが、工藤珠希はその意味を知ろうとは思わなかった。
まさかの自分が理由で抗争が起こってしまっている。人が亡くなっているのは間接的に自分の責任になってしまうのではないかと思った工藤珠希ではあった。
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