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第二章〜記憶の石板〜
37話✡︎全ては繋がっている✡︎
しおりを挟む六人は記憶の間を後にし帰ろうとしていた知識の間を通り過ぎ、あの階段を登っている時にふいに、ユリナは不思議に思いフィリアに聞く。
「そういえば、知識の間になんで血の王がいたの?」
「あれは二百年前に、紺のローブを纏った騎士が記憶の棚来たのですが……
欲深い心に知識の間が侵入を拒んだのです。
私達が知識の間から立ち去る様に言った時に、その騎士が知識の間に血の王を召喚してしまったのです。
私達はすぐに記憶の間への通路に逃げて、血の王が閉じ込められたのですが……」
ピリアとフィリアが顔を曇らせながら、ピリア言う。
「百五十年前に、血の王が自らの魔力を解放して……地上に出ようとしたのです。
その時に水の賢者シンシル様が現れ血の王の魔力を奪ったのです……」
それを聞いてユリナが悲しい顔をしてエレナを見ると、エレナは階段を登りながら苦しい表情をしていた。
「シンシル……なんで私に言ってくれなかったの?」
そう呟いた。
水の魔力を奪う魔法それは女神エヴァの力を最大限に借りなければならない。
祝福を持つエレナなら簡単に使えるが、祝福を持たないシンシルにとっては命がけな行為。
知識の間の特殊空間では使うべきではない魔法、シンシルが国王として国も一族も守ろうとして使ったは明白であった。
「そう言えば、死の女神ムエルテは……
何を考えてるの?
最後に言っていた、ムエルテの楽しみっていったい……」
エレナが呟く様に言った。
「死の女神ムエルテは、オプス様を捕らえてしまった冥界の神ですが……
冥界の神の中で、唯一神らしく天界に居てもおかしくない神だと、神々の棚の石板にはそうありましたよ……」
ピリアが教えてくれた。
エレナはそれを聞きムエルテが言っていた。
(クリアス……地上には要らぬなぁ……)
その一言を思い出し、冥界にも話せる神がいるのではないか?と考えていた。
そして紺のローブをまとった騎士のことは謎のまま、階段を登りきり記憶の棚にピリアが手を着くと、重い音を立てながらゆっくりと扉が開いていく。
全員が久し振りの地上の空気を吸いながら天地の間に出て来ると、記憶の棚はまたゆっくりと閉まった。
「リヴァイアサン、ルクスちょっと力を貸して」
そう言いながウィンダムが現れる。
「ピリア、フィリア、二人がここに帰って来ることはよほどの事が起きない限り、もう無いと思う。
だから僕達の力で封印するね、いい?」
ピリアもフィリアも、ウィンダムの言葉が別れを意味していることに気づいた。
それは十万年と言う長い月日を何もせずに過ごした二人。
ただただ……奇跡を求めるだけで、怠惰に過ごしていた自分達に別れを告げる事を意味していた。
だが、ピリアとフィリアは一つだけ無駄ではなかった事に気付いていた。
二人はそれを無駄にしない気持ちを強く持ちウィンダムにピリアが言う
「ウィンダムさんは気付いてますか?私達の十万年と言う月日は、
無駄じゃなかったと思います。」
ウィンダムは?と思う。
「その時が無ければ、皆さんにお会いすることはありませんでした。
その時が無ければ、ウィンダムさんに大切な事を教わることはありませんでした。
その時が無ければ、こんな素敵なお名前を頂くこともありませんでした。
昔オプス様が言われました……
全ての時の流れに無駄な時は
何一つありません
大切なのは
諦めないこと忘れないこと……
全ては繋がっているのです
別れも出会いも
その全てが悠久の時を旅しているのです
悲しみも苦しみも
怒りも憎しみも
歓喜も感動も
そして希望も……
全ての感情さえ旅人なのです
長く長く出会えなかった旅人と
出会えたらそれを抱きしめなさい
それが奇跡と言う旅人なのです
それを深く愛しなさい
その意味がやっと解りました。」
ウィンダムはその言葉を聞き、オプス様ならそう言うかも知れないと感じて気づいた。
祈り深く願うだけでも訪れる奇跡があるのだと、フィリアが感情を込めて言う。
「私達は無駄にしません!
ここに居た長い月日を超えてやっと出会えた。
この出会いと言う奇跡を無駄にしません‼︎」
それは別れでは無かった。
今まで歩んで来たこと全てを受け入れ、歩み出そうとしている。
無から始める都合のいい別れではない……
全ては繋がっている。
それは変えようがない!
その全てを抱きしめて、彼女達二人が想いを未来に繋げようと歩みだした瞬間だった。
ウィンダムも、ルクスも、リヴァイアサンも優しく微笑んだ、エレナもユリナもカナもアルベルトも二人を見て優しく微笑んでいた。
エレナ達が王立図書館から出て来たのは空が白みかけて来た頃、血の王との戦いで命を落とした兵達の遺体は清められ白い布をかけられ、王立図書館の広場に綺麗に並べられていた。
周りには遺族だろうか、悲しみ嘆いている姿がエレナの心をえぐる様に痛める。
国王シンシルとガーラを先頭にその後ろに、王宮の大臣達とエルド宮の大臣達が並びその後ろに兵達が整列し、エレナ達の帰りを待っていた、アルベルトは羊皮紙に戻り既に姿は無かった。
そしてエレナ達の姿を見てシンシルは、エレナが魔精霊の衣を着ている事に、少し疑問に思ったが。
「この国を救いし、エヴァスとその娘ユリナに礼を……」
魔力を込めて感謝の気持ちを大きな声で言うと、全ての者が一斉に頭を下げた。
カナとピリアとフィリアは二人より少し下がる。
それに対しエレナは国王シンシルにも全ての大臣にも兵達にも一人で言い返す……
魔力を優しくかけ多くの者が聞ける様に。
「忘れていませんか?
私より勇気のある者達を……」
優しげに悲しげにエレナは続ける、エレナは布をかけられた、亡骸達の方を向いた。
「彼らは私を待っていました。」
そう言うと全ての者がエレナの視線の先を見た、亡骸達は何も語らない。
「彼らは……自らの死を受け入れ血の王に立ち向かいました……
誰から命令された訳でも無く、私は彼らがもし、退いても責めるつもりはありませんでした……
でも彼らは戦うことを選んでくれました。
彼らが立ち向かわなければ、より多くの命が奪われたはずです。」
全ての者が沈黙し……涙を流し始める者達も現れた。
エレナは意思を強く込めた瞳で、声に魔力をより強くを込め、全ての者達に強く号令をかける!
「我が声を聞きし全ての者達よ!
真の勇者達に敬意を!礼‼︎」
その声は広く広く響いた。
兵達も大臣達も、国王シンシルもその声に従い命を落とした勇者達に向かい、一同より深く頭を下げる。
兵達の遺族もその悲しみがエレナに伝わっていることを知り、より多くの涙を流した。
ピリアとフィリアはエレナの偉大さを始めて知った。
そして自分達がこれからしなければならないことを、いきなり見せつけられた気がしていた。
丁度その頃、王立図書館の広場に朝日が差し始めていた……
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