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第三章〜戦士の国アグド〜
52話✡︎闇の女神オプスと影の女王ピリア✡︎
しおりを挟むその気配にウィンダムが震えていた。
「ま、まさか……オプス様……」
そう驚きながらウィンダムが言う。
破壊された玉座の方から黒い風が一瞬で吹き込んで来た。
そしてそこに、誰も姿を知らない者に姿を変えたピリアがいた。
紫の髪にキラキラと星が瞬いている、夜に星空の下で見たら見分けがつかない程その髪は美しく、雪の様な白い肌の美しい女性……
幼さを残し可愛らしくも美しい顔立ちが印象的である。
そして背中が大きく空いた、漆黒の中に星々が瞬くドレスを着ている
そして何故かその瞳はつぶっている。
(これが、闇の女神オプスの姿……
冥界を押さえ続けた女神……美しいが……
何故瞳を……)
カイナは不思議に思い、それはエレナも全く同じことを思っていた。
ピリアは闇の女神オプスに姿を変え、そしてオプスの声で語り出した。
その声はエレナに非常に良く似ていた……
「私はオプス様に聞きました。
ドッペルは誰かを殺してその人になれるかも知れない……
そのむかし、ドッペルが人間を心から愛し過ちを犯してしまい、大きな悲しみを産んでしまいました。
それからオプス様はドッペル達の血の色は変えられない様にし、産んだ子供もドッペルとして産まれるように定めたと……
そしてオプス様は優しく言われました。
闇の子達も光の子達も……
生きとし生きる全ての命は
産まれたその時より
光も闇も共に抱きしめ産まれるのです
良く解らなければ
瞳をつぶりなさい……
闇に包まれます
ですが恐ろしい物ではなく
不思議と落ち着き安らぐのです
闇が無ければ
夜空に星は瞬かない様に……
光りが輝く時には
必ず闇がそこにあるのです……
私達、闇の眷属は冥界をその闇で包み
光り輝く世界を守っているのです……
私達が居なければ
世界に光りは産まれません
ですから闇に産まれたからと言って
それを恥じる事はありません
闇の子らよ……
全ての生ける命の為に冥界を闇で包みなさい
私達が輝かせる夜空の星々を
白銀に輝く大きな月を
一人で見ることを寂しいと思いなさい
生きる者全てを愛しなさい
そしてあなたに大切な人が現れても……
ドッペルでも、優しく受け入れてくれる人を愛しなさい……」
そう美しい声でピリアが闇の女神オプスから学んだ事を、その姿でその場に居た全ての者に伝えた……
「エレナさん……
ピリアとフィリア、私達姉妹に愛と言う意味のある、美しい名前を下さって本当にありがとうございます。
私達ドッペルは寂しさも愛も忘れてはいけないのです……
愛する人に出会えても、地上の全てを愛する気持ちを忘れてはいけないのです……」
ピリアはやっと涙を一筋流した。
「エレナさん達と出会って、ウィンダムさんに教わり……
夜空をみんなで見るのが楽しくなりました。」
ピリアは一緒懸命に伝えようとしている。
その場にいた全てのオークが闇への見方、考え方が僅かに変わった気がした。
ピリアはドッペルに歩み寄る、彼もまた闇の眷属……その姿をしたピリアの前から逃げ出すことも出来ない様だ。
「解りますね?
貴方は無に帰らなければなりません……」
ピリアは優しげに言う。
「闇の眷属にして、もっとも力のある魔族の私達ドッペルなら産まれた時に聞いてるはずです」
ピリアはオプスの姿で強く言う。
「や……やめろ!目を開くな‼︎
俺を見るな!」
ドッペルは怯えるがピリアの目から目を離せないでいた。
「守りしを見失いし悲しき闇の子は……
無に帰り生まれ変わりなさい
そう……言われませんでしたか?」
そうピリアは優しく聞く。
そしてピリアはそっと目を見開き、哀れなドッペルと目と目を合わせた。
その瞳は紫の美しい瞳をしていたが……次第に白目に文様の様な物が現れ出す。
闇の女神オプスの力の一つ暗黒の瞳だ……
「力を求め寂しさと愛を忘れし悲しい魂よ……
無に帰り母なる闇に抱かれなさい……」
ドッペルの目にその模様が刻まれて行く、怯え恐れ、先程の勇猛さは微塵も感じられない……そして光り輝き静かに消えていく、何も語れずに無に帰された。
後に残されたのは彼が暴れ、荒らされ破壊された玉座。
そして壁や柱に無数の血が飛び散り、血の匂いが漂う玉座の間と最後に命を落とした者達の亡骸であった。
その場が静まり返り、ピリアは姿を消し同じ場所にまた元の姿で現れた……エレナもユリナも、カナもピリアに駆け寄り抱きしめた。
ピリアは涙を流しながら語り出した。
「やっと解ったよ……
トールがどんな気持ちであの戦いに挑んだか……
一族を滅ぼしてでも、守るって間違ってるって解ってたんだ。
でもそれしか無かったんだ……
闇の眷属が差別される様になったのも、それが始まり……
でも今の世界がある。
だから私達は生きていける‼︎
エレナさんもユリナさんもカナさんも!
ここに居るみんなが
産まれる事が出来たんだ……
トールはずっと先を見ていたんだ。
あの時代にこの十万年先の未来の世界が……
あの時以上に多くの命で溢れる世界になる事を夢見て……
ウィースガルム卿の魂も
戦う事は望んでなかった……
二千年前のオークの王も……
三千年前の……
カナさんの村を焼いた戦争も
その時の王は望んで居なかった!
あの時のトールの気持ちとは違うけど……
同じだったんです。
間違っているけど、一族のために戦争をして
勝たないといけなかったんです‼︎」
ピリアはどう言っていいのか解らず、それでも一生懸命にウィースガルムの魂に触れて知ったことを説明した。
「ピリアどう言う事?」
エレナが聞く。
「詳しい事はまだ私には解りません……
シェラドさん話してくれますよね?」
ピリアが聞く。
「話す……必要はない……」
ベルガルが苦しそうに言う、炎の魔術師達が治癒の魔法を施しているが見ていてもかなり痛々しいらエレナ達は何故?と思うが、それでもベルガルは話を続ける。
「見なければ話しても意味が無いからな……」
「水の巫女達よ、バータリスまで来る気があるか?来るなら見せてやる我が一族の哀しみを……」
ベルガルがそう言いシェラドを見る。
「それが一番だな話した所で、疑われても仕方ない事だからな」
シェラドが言う。
ユリナはどうするのかエレナを見る。
見た目では解らないが、エレナもベルガルの一撃で体はかなり弱っているが何も無かった様に振る舞い言う。
「それは招待と受け取っていいのかしら?」
多少の何かを込めて気高く聞き返す。
「あぁ、そう言う事だ!
いやみを言うな昨日の敵は今日の友、水の巫女なら解るだろ?
俺が案内してやる」
ベルガルが詫びる事無く言う。
「えぇ、解りますよ、あなたのおかげで私はしばらくまともに剣を振れないので、宜しく頼みますね」
エレナはしっかり確実にさっきの事を遠回しに伝える。
「ハッハッハッ、エレナ殿よりお前の方が今は剣を振れないだろう⁈
グリフ!俺の兵達にバータリスまで行く支度を三日でゆっくりやらせろ‼︎」
シェラドが笑いながらグリフに指示を出した。
三日と言うのは、今回の事でエレナ、ベルガル、ユリナもカナも負傷している為に、シェラドが余裕を少し持たせた様に見えた。
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