121 / 234
〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
第五章最終話✡︎✡︎孤独な女神✡︎✡︎
しおりを挟むそれはこの世界が生まれる前、つまり最初に産まれた世界が滅びた時……
その時、冥界の侵攻を受けた地上の生きとし生ける者が全て死に絶え、地上世界には死が溢れた……
その死から産声が聞こえ地上世界に響き渡った……
その声は愛らしいが冷たく、命が無い地上世界にさえ恐怖を呼んだ……
だが恐怖する地上の者達が死に絶えていた為に、ただただ不気味であった。
だが天界の創造神アインは恐れた心から……
生み出した覚えのない物、創造した覚えの無い物が生まれたのだ……
それが死であった。
それは余りにも多く生まれた為に、死が集いその化身として少女が生まれた。
彼女が死の女神ムエルテであった。
「クロノス!頼みます‼︎
地上を無に返してください‼︎
あの少女は不吉その物‼︎‼︎‼︎
天界に災いを齎します!」
アインがムエルテを恐れクロノスに懇願した。
「待て!アイン‼︎
我らが生み出した地上より生まれた者‼︎
受け止めよ‼︎」
クロノスはアインを諫めた、クロノスは過去に美しく無い物を忌み嫌い、そして冥界が生まれた事を理解していた。
クロノスはムエルテに手を差し伸べようとしたが、アインは聞かずクロノスの剣を引き抜き、地上に向けて振り下ろしてしまう。
その瞬間凄まじい稲妻が無数に生まれ、一つの塊になり地上に落ち、地上世界の全てが消滅し冥界も滅びた。
それと同時に冥界の神々も姿を消した……
だがその少女、死の女神ムエルテは消滅した地上があった場所にいた……
それは神々ですら死がある事を意味していた。
アインは恐れた……だがクロノスは死の女神ムエルテを天界に迎えようとした。
「クロノス!正気ですか‼︎」
アインが叫びその声はムエルテにも聞こえていた……ムエルテは察した……死から生まれたムエルテは忌み嫌われている事に。
ムエルテは行く場所が無かった、生まれた地上は消えそれと同時に冥界も消えた……
ムエルテは見たのだ、汚らわしい物は忌み嫌われ行き場所を無くす。
美しい物だけを手に取ろうとする醜い神々、その神々とそれが支配する汚らわしい現実を……
ムエルテが初めて感じたのは絶望で、生まれて初めて経験したのは差別であった、ムエルテは怒りよりも天界の神々を軽蔑していた。
ムエルテはそっと姿を消し様子を伺う事にした……
だがクロノスだけは気付いていた。
ムエルテこそ唯一、無の神ニヒルから生み出された神では無いと、何かあった時最初に無の神ニヒルに戦いを挑む神だと。
其れが忌み嫌われる死を司る神である事に……破壊神クロノスは情けなさを感じていた。
そしてクロノスとアインは、闇の女神オプスと光神ルーメンを生み出し……
地上世界を再び生み出し、冥界が再び生まれた……
ムエルテは初めて自分を受け入れてくれる世界を見つけた……
其れが冥界であった。
ムエルテは何故か産まれた時を思い出していた……
そして自分を受け入れてくれた冥界の為に戦っている事が、天界をも救う道に繋がっている事に苛立ちを覚えていた。
何の為に冥界を支配したのか……冥界に秩序を齎す事は考えて居なかった。
だが自らの力を増す為には地上世界が繁栄すれば、その溢れた命からやがて順を持って齎される死が目的であった。
その為にムエルテは九万年前に、冥界を束ね……それ以来地上世界に表立っては災いを齎してはいなかったが……
それは自らの力を増す為であって天界の為では無かった。
「何故……じゃ……何故じゃ……
なぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃなぜじゃぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎
妾が天界を滅ぼすはずあった……
後二万年あれば
いや……
エレナが現れ
あと五千年もあれば……
地上はかつて無い程栄えたはずじゃ……
その繁栄は妾の力になる
無数の命が輝き!
消え失せる時に‼︎
妾が天界を滅ぼせたと言うのに‼︎‼︎
なぜ今なのじゃ……
あと少しで……あと少しで……
妾が!妾が‼︎
天界を滅ぼせたものを‼︎‼︎」
ムエルテは心で叫び手を強く握っていた、思惑から外れ先ずは地上世界を守らなければならない、ムエルテはニヒルと手を組む気は無かった。
ニヒルの思惑は死すら無に返す事、すなわち全ての消滅……
ムエルテが憎んでいるのは天界……
ムエルテが最も醜いと感じた神が住む世界であり、ムエルテを差別し忌み嫌った者が住む世界……
そこに数多くの黒い影が忍び寄って来た。
「またか……
悪いが今宵は気がたっている……
手加減はせぬぞ……」
ムエルテの前にニヒルの手の者が現れ、ムエルテはそう言い大鎌を一人で振って戦っていた……
冥界の支配者であり、天界を滅ぼす為に力を蓄えようとした死の女神ムエルテが、地上の為にニヒルの手先を相手にしていた。
それが天界の為にもなると、再び脳裏に過った時、ムエルテは漆黒の瞳を鋭くし死を放つ様に殺気に怒りを込めた……
背後から斬りかかって来た影を姿を消して躱し、瞬時に首を跳ねる。
「巨人族よ!
ニヒルに操られてると気付かぬのか‼︎‼︎」
ムエルテが叫びながら大鎌を振る!
ムエルテは知っていた、この者達がニヒルから無の祝福を受けた巨人族であると知っていた。
だがそれをエレナ達に伝えようとはしなかった、エレナ達が気付くのも時間の問題ではあるが、それによる混乱が生じる事をムエルテは懸念していた。
ムエルテは星の光に照らされ、巨人族と戦い僅かな傷も負う事なく敵を斬り裂き、魔法を使おうとする者に、手をかざすだけで死を与えていく。
そして十分もせずに襲って来た数十の黒い影は、ムエルテによって駆逐され無に返って行った。
「ニヒルの祝福……
死体も残らぬとは……
酷いのぉ……」
ムエルテは全ての敵を倒し、そう呟きその場を去った。
「ムエルテ……あなたは……」
その様子を天界で、闇の女神オプスだけが見ていた。
オプスはムエルテから溢れる寂しさを、冥界に囚われていた時は気付かなかったが、今ようやく気付いた、そして何故か自分と重ね合わせて見ていた。
~第5章 ファーブラ 神話の始まり~完
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる