✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜

113話✡︎✡︎英雄の瞳✡︎✡︎

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 そして十日が経ち、ユリナ達はセレスにあるカルデアに入り街を見回る。
 エルフの要塞都市カルデア、エレナが女王になってから都市防衛の罠は全て開発が中止され少しづつ撤去されている。

 その様子をユリナ達は見回っていた、フェルトもその様子を見ながら気づく……まだ使われてない罠ばかりで、死霊も取り憑いてない、浄化の必要も感じられ無かった。


「このカルデアって都市は守りが硬いようだが、一度も戦って無いのか?」
フェルトが聞いた。
「あんた、セレスの歴史を知らないの?」
ユリナがフェルトに不思議そうな顔で聞くと……
「あぁ」

そうフェルトが答えた時に声が聞こえた。
「作業をやめよ!
取り壊してない罠はそのままにし!
使える様に整えよ!
女王様の指示だ‼︎」
監督官がやって来て叫んでいた。

「え、どういう事……」
ユリナは叫んでいる監督官の元に駆け寄り訳を聞いた。

「ちょっと、どういう事なの?」
「安心して下さい、女王様も何か考えてる様です。
カルデアは安全ですから」
監督官は国民に話す様にユリナに言った。


「私はフロースデア・ユリナ!
話しなさい!」
「こっこ……これは姫君でしたか、ダークエルフとご一緒でしたので申し訳ありません……」
監督官は直ぐに詫びて来た。

「こちらはフェルト卿、ダークエルフの族長様です、フェルト卿の護衛は街の外に待機して頂いてます。」
カナがフェルトを紹介した。

「これは……ユリナ様にカナ様……
おい!領主様に急ぎお伝えせよ!」

 そしてユリナ達は工事の詰所の様な所に案内され、お茶が出され話を聞いた。

「正直、私も解らないのです。
ただ、罠の解体を中止して使える状態にせよと領主様に水の鳥が来て、それが間違い無く女王陛下からの指示だったそうです。」

 ユリナが考えていると、領主が慌ててやって来た、話の流れを聞いていたのか女王からの指示書も持っていた。

それをユリナとカナは見て。
「間違い無くお母様の字ですね。」
「うん……お母さんの指示だね……
解りました、お母様の指示はなるべく早く行って下さい、あと食料の蓄えや武器の手入れもしておいて下さい」
 ユリナは戦の支度を整える様に、他にも細かい指示をだした。


 ユリナはエレナがこの様な指示を出す事は戦が起きるかも知れないと感じた……
 頭に過ぎるムエルテの言葉が、ニヒル率いる軍団との戦、神との戦いがユリナの頭をよぎった。

 ユリナ達は直ぐにカルデアを出発した、領主は護衛三百を付けてくれ、強行軍でセレスの首都エルドに向かった。
 カナはユリナの慌てた様子を見て、何かある事を察した。


 セレスでは、各国に向けて戦の支度をする書面をエレナが書いていた。
 そして各国の王を集めて話し合う必要があるとの事も必死になって書いていた……

 アンサラの涙を見て、ガーラの死を知り、死の女神ムエルテが既に戦っている事を知り……天界が今回も傍観する……そう察して動き出していた。

 エレナはかつて自分がかけた号令を思い出していた。


(出来るか解らない!出来るとは言えないが!出来なくはない‼


我らが行うは!奇跡そのものだ!


全ての兵と!民が‼︎力を合わせても!


勝てないかも知れない……


だが!何もしなければ!


滅びるだけだ!


私はもう一度言おう!


出来るか解らない!出来るとは言えないが!出来なくはない‼

解るか!戦わなくては勝てない!
戦わなければ滅びる!
勝たなければ!我ら一族が滅びる!
皆よ!勇者達よ!奇跡を摑み取れ‼︎)


 エレナはあの時の自分が若かったと悟った。あの時は三千歳であったが、あれから二千年経ちもう五千歳を超える。
 3万年程生きるエルフ族ではまだ若い方だ、だがあの時は恐れは無かった、あの時の自分には勇気しか無かった。
 だが、実の娘ユリナが生まれ恐れを抱いた……それはユリナを失うかも知れない恐れ、幾らトールやピリアが側に居てもあのガーラが手も足も出なかった。

 エレナは真剣に考えながら戦の支度をしたたかにセレス国内で進めていた。

 エレナが考えていたのは、あの時の様に戦えるのだろうか……だがそう思った時、頭に響いた。
(私はもう一度言おう!


出来るか解らない!出来るとは言えないが!出来なくはない‼

解るか!戦わなくては勝てない!
戦わなければ滅びる!
勝たなければ!我ら一族が滅びる!
皆よ!勇者達よ!奇跡を摑み取れ!)


 エレナはそっと瞳を閉じて心の中で暫く立ち止まっていた。


(聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

闇の子らよ‼︎
我らの主オプス様は!
あの冥界に囚われた‼︎

我らが勝てるか⁈⁈


否ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎


だが抗う事は出来る!
そして喜べっ‼︎‼︎
我々の為に!
全ての王が集り共に死んでくれるぞ‼︎‼︎
それでも我々は滅びるだろう!


ならば……


最後まで足掻いてやれ!
最後まで戦い抜けぇぇ‼︎
最後まで剣を捨てるな‼︎‼︎
我らが背負うは世界そのものだ!
我らが背負うは‼︎

全ての命‼︎

全ての未来‼︎

我らの栄光はない‼︎‼︎

だが‼︎‼︎

この場にいる全て者が!英雄だ‼︎‼︎
剣を抜けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎)

 十万年前の闇のレジェンド・トールの声が頭を駆け抜けて行く、かつて自らの国と一族を犠牲にしてまでも世界を救った英雄の声だ。


 エレナは感じていた、様々な想いを持って過去の偉大な者達が、一族や世界を守って来た……
 それはトールだけでは無い、あのドワーフの鉄の魔術師名工フェルトンですら、先頭に立ち戦に出た事もある、それを今終わらせる訳にはいかない……

 そしてそっと見開いたその瞳は女王では無く、かつての英雄の瞳だった……


「誰か‼︎」
エレナが人を呼んだ。
「ここに!」
「この編成の元に!
ベルリス温泉へ軍を送り駐留させよ‼︎」

 エレナは最初にベルリス温泉に軍を配備する指示を出した。
 それはもし、クリタス王国やパルセスに異変が起きた時に、出来るだけ速く援軍を送れる様に配慮し、ベルリス温泉からならサラン王国で何かがあっても山越えをすれば、サラン王国に北から侵入出来るからだ。

「スコール大臣をここへ‼︎」
エレナがスコールを呼ぶ。


 少ししてスコールがやって来た。
「エレナ様、お呼びですかな?」
スコール大臣は嬉々として来た、彼はエレナが女王になる事を心から望んでいた大臣だ、エレナからの直接の呼び出しを喜んで来た。

「あなたの忠実さに頼ります。

直ぐに各師団が保有する、備蓄食料を調べ上げ十五個師団の食料二年分を確保しでください!
そして五個師団二年分をクリタスに送り補給拠点を構築して下さい。

武器と防具も五個師団分用意し、同じ拠点に配備して下さい。

ことは一時を争います。
頼みましたよ。」

 エレナは強く優しく言い、スコールはエレナの目を見て感じた。

 そこに女王は居なかった、凛々しく強い気迫を感じさせる瞳を持ち、覚悟を決めた一人の英雄がいた……


 エレナの戦いが静かに幕をあげた……
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