✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜

第六章最終話✡︎✡︎カイナの為に✡︎✡︎

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 地上ではカイナの死によって、他のイミニー達が苦戦し始めた。

 ネクロマンサーの死は戦の流れを大きく変えた、不穏な夜襲は無くなり兵達が恐れずに進軍し、当初慎重であったサラン王国軍も大軍を投入して討伐しだす。

 そもそもイミニーは戦略家では無い、個々が力を持っているが指揮には疎く、数日もすればサラン王国軍の勝利する事は目に見えていた。

 ユリナはカイナの遺体をサラン王国に引き渡さなかった、それに対してサラン王国は何も言わなかった、いや言えないのである。
 ユリナはサラン王国の正統な王族でもある、そしてセレスとの同盟において最重要と言える存在であった。

 ユリナはカイナの遺体をエレナがフィリアの遺体にした様に、大切に魔力を送り腐敗を防ぎセレスに帰国している途中で、深いため息をつく、冥府魔術で作られたカイナの骨の左腕が痛々しい……


「アヤになんて言えば……」
 ユリナはアヤもイミニーなのか疑ったが、カナから聞いた話を信じた。
 今、アヤはベルガル国王と付き合っている様だ……


 その日アグドにいるエレナの元に内乱がイミニーの手による物で、首謀者がカイナだった事、そしてユリナが討ち取った知らせが届いた。
 エレナはそれをアグド国王ベルガルと共に見て、ユリナと同じ様にアヤを心配した。
 アヤはカイナと良く共に旅をしていた、今はアグド首都バータリスの王宮にアヤは住んでいる。

 その日の夜、バータリスから黒いマントとフードを被った者が、王宮から馬を走らせて行った……アヤだった……
 エレナはそれを見ていた、そして追おうとした時にエレナの肩に手をかけ引き止める者がいた、ベルガルだ……


「俺に任せろ」


 ベルガルは国王としてでは無く、一人の男として言っていた、エレナは静かに優しい微笑みを浮かべ頷いた。
ベルガルは獅子に乗りアヤを追って行った……

「カイナ……ごめんなさい……
あの時もっと聞いてあげれれば……」
エレナは後悔していた、そしてアヤが命を断つ事がない様に願い、ベルガルを信じていた。


 翌朝、ベルガルの獅子にアヤを乗せて二人は帰って来た。
 それをエレナは王宮の前で待っていた、一晩中祈りを捧げていたのだ。
 アヤは獅子から飛び降りエレナの元に走り……息を切らしながら言う。


「エレナさん、わ、私……」
アヤが言いづらそうにするが……

「あら二人とも朝に帰って仲がいいのね、カナには内緒にしてあげるから安心してね」
 エレナは察した、アヤの悲しみを全てベルガルが受け止めた事を、そしてイミニーを抜けるように導いてくれたことも。

「エレナさん……」
アヤが驚く。
「さっ二人で朝ご飯食べてきなさい、アヤ?王様をよろしくね。私は仕事あるからまた後でね」
 エレナはそう笑顔で言って部屋に帰って行った、エレナは部屋に戻りほっと胸を撫で下ろすが、涙が溢れて来た。

 カイナを救えなかった事、そしてユリナにカイナを斬らせてしまったこと……エレナは深く深く心を何かで貫かれてしまった様な痛みを覚え、涙を流していた。



 数日後、ユリナは屋敷に帰り墓石を注文した……
そして二日後に墓石が届き葬儀を行った。


「ユリナさん、この名前……」
ピリアが言う。
「うちの王族名……
これで今回の件で誰もカイナを疑わない、サラン王国もカイナを探せなくなる。

静かに眠って欲しいから……
カイナ、今日からフロースデア・カイナと名乗ってゆっくり休んでね……」

 ユリナはカイナに自らの家名を与えて屋敷の庭に埋葬した、戦いが終わったらいつでも一緒にいれる様に、セレスの王族として、そして家族としてカイナを埋葬した。


「ユリナさんありがとう……」
 天界から見ていたカイナが涙を流しながら礼を言っていた。



 ユリナは屋敷にあるカイナの部屋に行き、荷物を確認した……カイナの日記が出てきた。

 ユリナはそれを読み始めた。

 魔法で書かれており、最初の小さい時は思い出しながら書いたのが見て取れる。
だが、この魔法がまだ子供の頃に覚えた事がすぐに解った。

 カイナは魔術の才能豊かな子供だった様だ、そしてページをめくって行くと、しだいにカイナが何故イミニーになったのか痛い程解った。
 カイナの家は貧しかった、村も貧しかった、ある年飢饉が起きて村人が多く命を落とした……サラン王国の村の役人はそれでも税を厳しく取り立てた。

 村人は神に祈った……神は応えなかった。
 ある時、領主の娘が病になり余命数日と言う程に病は重かった。

 領主は神官を呼び神にすがった……

 村人は思った、神罰が降ったんだとそう信じていた。それは噂になった……

 だが領主の娘は奇跡的に回復した、それは正に神の奇跡の様だった。
 カイナには、神は本当に救いを求める者を見捨て、贈り物を好む欲深い存在にしか思えなくなってしまった。

 そして罰を下されたのは村人達であった……
 領主が噂を知り兵を繰り出し、反逆者と汚名を着せ数多くの村人が罰せられ、村は恐怖に包まれた。


 そこまで読んでユリナは胸が痛くなった、カイナの言った通り無くなってしまえばいい世界にも思えたが、ふと思った。
 この百年の間にその様な蛮行があった話は聞いた事が無かった、そして日記を読み進める。

 そして信じられない、事実にたどり着いた。
 カイナは三千年前から生きていたのだ、魔術を使い不老でいたのだ。
 更にネクロマンサーとしての才能豊かで、それを磨き続けていた、だが不老のカイナを村人は恐れ始めカイナは村を追われてしまう……そしてイミニーを知り、神への怒りを訴え始めた。

 イミニーとして与えられた最初の任務は、自分の生まれた村を滅ぼす事であった……
 カイナは全ての怒りを産まれた村にネクロマンサーとしてぶつけて村を滅ぼし、イミニーとして認められる。

 カイナは本当に天涯孤独となった……

 そして読み進めるうちに、ユリナ達との最初の出会い、そして共に過ごした日々を読んでいたら涙が溢れてきた。
 そこにはカイナが何故、ホーリーネクロマンサーとして動いていたかも記されていた……

ガーラの秘密も何もかもが記されていた。



「私間違ってたな……この楽しい毎日いつまでみんなと一緒に居られるんだろう……

いつまであったかい、ここにいられるんだろう……」


 ユリナは辛くなる、カイナの気持ちを全く知らなかった。
 共に過ごし共に戦ってくれたカイナの事を全く知らなかった……凄まじい悲しみと罪悪感にユリナは襲われた。

 ユリナはその先を読むのを躊躇うが、心に決めて読んだ……。
 カイナの命をユリナが取ったのだ、他に方法があるかなんて解らなかった……
 そしてこの日記が書かれる事はもう無い、カイナを知ること、それはユリナの責任でもある様に思えた。


ある日カイナに知らせが入った。
「天界の神々を裁く神が現れた、世界中に散らばるイミニーの力を結束させ、その神を助けよ……
その偉大な神はニヒル、無の神ニヒル」
 その知らせ聞いてカイナは、イミニーとして活動を再開する為に、旅立ったのだ。
そして最後に書かれていた。

「間違ってるよ……私は……
誰か私を止めて……」


 ユリナは全てを理解した、カイナはイミニーである自分を救って欲しかったんだと、みんなに知らせたかったんだと、だから荷物を置いて行ったんだと初めて解った。

 そしてニヒルに憎しみを覚えた、ニヒルさえ居なければカイナは、ずっと此処にいれた筈だと……


「読んでくれて無いみたいだし」

「私を止められますか?」


 カイナの言葉が重くユリナにのしかかった。
ユリナはカイナがサランを滅ぼす事は止めた……
 だがカイナが止めて欲しかったのは、イミニーとしての自分を救って欲しかった事に気付いた。

 ユリナは深く後悔した二年間もあった……
 カイナが旅立ち、この屋敷に荷物を残して行ったあと部屋の掃除をしに来たが、荷物を気にしなかった。

目の前に!

すぐ側に!

あり続けたカイナの救いを求める声に気づかなかった、もしカイナの日記を見る事が出来ていれば絶対に救い出せた……


深く深くそう思っていた。


 カイナの部屋にカナが様子を見に来た、落胆して涙を流しているユリナを見て話しかけてくれた……


「懐かしいな、王立図書館の時もユリナそうだったね、こうやって泣いてさ……
また引っ叩いてあげようか?」

 カナはカイナの日記に目を通している、既にピリアからカイナの記憶を聞いていたのだ。
「でもやる事は解ってるよね?
カイナの為に何をするべきか……
カイナが何をしたかったのか、解るよね?」


ユリナはそれを聞いて立ち上がる。
「えぇ、この世界を変えなきゃいけない‼︎

そしてニヒルから絶対に未来を勝ち取って!

カイナが夢見た世界に絶対に変えなきゃいけない‼︎‼︎
私達のやり方で‼︎‼︎」


「うん、じゃお母さんの手伝いに行こう」


 カナはユリナをよく知っていた、ユリナが成長しているのも、そして誰よりも真っ直ぐな性格なのも……



 ユリナ達は直ぐに支度をして、弓兵師団と他の各師団にベルリス温泉に向かう様に指示をだした。
 そして既に暗くなっていが、屋敷の前に待機させていた弓兵師団の僅かな手勢を引き連れてアグドに向かった。


 ユリナの中でカイナの行動が全てが繋がっていく……カイナが何故トールにあっさり負けたのか……

 それは闇の女神オプスがトールのそばに居たからだ、カイナは人の為に動く神に初めて出会った。
 そして戸惑ったのだ、救ってくれる神が居た事に気付いた、神様らしく救いの手を差し伸べてくれる神が居た事に気付いて、自らの行いが完全に否定されたのだ。

 その衝撃がカイナの心を、神々への憎しみを持つカイナの心にヒビを入れたのだ。


 ユリナはこの世界を間違いだらけの卑しい世界に感じていた……
 先頭で馬を走らせるユリナの姿から、全ての者達が士気を高める、それだけユリナの姿から凄まじく強い意志を感じさせた。

 そしてまだ誰も気づいて居なかった、ニヒルとの戦いが直ぐそこに迫っている事を……





~第六章 ファーブラ 巨人族~完
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