✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第九章 メモリア・白き風〜

161話❅春を呼ぶ風❅

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 それから二日経ち、ユリナは苛立ちが治るが深く悩んでいた、それはセルテアが原因である。

(オプス様
解っているけど
記憶を失ってるって解ってるけど
お母さんが記憶を取り戻したら
どうするとおもう?)

ユリナが心でオプスに聞く。


(そ、それはぁ……)
 オプスは前世のエレナの行動を考え汗を流し、闇の神剣暗黒も汗をかく。

(お父さんは生まれ変わっても
王子なのね……
それで生まれ変わったお姉ちゃんと……

お母さんが記憶を取り戻したら
絶対に殺されるわよ)

 ユリナは悩んでいた、エレナは生まれ変わり最高神となっている、だがその夫であるアルベルト(元、光神ルーメン)が人として生まれ変わっていたのだ、そしてユリナの姉カナの生まれ変わりであるパリィ・メモリアと恋に落ちているようにしか見えなかった。

(殺されるで済むのでしょうか……)

 光神ルーメンの双子の姉であるオプスが呟き、ユリナは頭を抱え大量の汗を流していた。



 それから大分日が経ち、あと十日か二十日で冬が終わろうとしていた頃。
 パリィはボーッと空を見上げていた、テミアとテリアは、パリィがセルテア王子と会ったあの日からパリィはぼんやりする様になったのを知っている。

「恋ですね……」

「いや、愛かもしれませんよ」
テミアとテリアがコソコソと話している。

「あぁ、極北に行ったら遠くなっちゃう!」
「もう、会えないかも知れないぃ」
コソコソでは無くなっている。

「聞こえてるよ
二人とも」
パリィが言う。

「キャッ」
二人は本気で驚いていた。

 パリィも気付いていた、キリングを想い始めた頃と同じ気持ちであった、そんなのんびりとしていて、穏やかな出発の前の日々が続いていた。

 パリィ達の支度は、ほぼ終わっていて街の方の支度も何事もなく進み、後七日程で終わるだろう、そんなある日バイドが、布屋に行って何かを確認していた。

「よく出来ている
ありがとう……数は?」

 バイトが店の者と何かを話していた。

 そしてその次の日、北にある北方地域と極北地域の境にある、グラキエス山脈から北風が物凄い勢いで吹いて来た。

「いよいよだね……」
パリィがそう言いテミアが聞いてきた。
「え?何が?」

パリィは微笑みながら二人に話した。

「北にあるグラキエス山脈から
こうしてとても強い北風が吹くとね
冬の終わりの合図なの。
明日から少しづつ暖かくなって
雪解けが始まって
春になっていくの。
この辺りの人は
『春を呼ぶ風』って言ってるんだよ」

テミアとテリアは思い出した。
パリィの掛け声を。


(我が民よ……
我と共に冬を越し!
マルティアを共に作ろう!
時代の冬さえも共に越えよう!

春を待つのではなく!
春を呼ぶ風となり!
この時を!
この荒んだ時代に‼︎
春を呼ぼう!

我が、白き風の民よ!
この時に!この時代に!
冬を越し!
春を呼ぶ支度をしなさい‼︎)


「冬を越したんだ
じゃあこの風は……
パリィさんみたいだね
春を呼んでくれるんだ」
テリアが上手いことを言ったが、パリィは微笑みながら言った。

「違うよ
みんなだよ
私一人じゃ国は出来ない
それと同じでみんなが居ないと
新しい時代なんて
呼ぶことは出来ないんだよ。

私は前に立って居るだけかも知れない。
でも街の人々が居て
初めて私の声に意味が生まれる

上に立つってそう言う事なの
権威も権力も皆んなが居て
初めて生まれる……

私は道を指し示すだけ
力を貸してくれるのは
みんななの
だから私は春の呼び方を探して
みんなの力を借りて
それをするの

だから

みんなで春を呼ぶんだよ」

パリィは知っていた。


 国家と言うのは形良く格好良く言ってるだけだと、全てをはぶき原点的な本質で言えば、『土地を持っている集団』そんな言葉で片付いてしまうものである。

軍隊だってそうである。

 悪く言えば『戦う集団』である、人が集まっているもの、その殆どが原点で言えば『集団』と言う言葉で片付いてしまう。

 つまり国王と言えども、ついて来てくれる国民が居てこそ国王であり、極端な話をすれば、全ての国民が土地を捨て、国を捨て、誰も居なくなれば国王は国王で無く、ただの人になってしまうのだ。

 そのためパリィの性格もある様だが、横の関係を大切にし、基本的に誰であろうとも滅多に人を嫌ったりはしない。
 人を嫌えば、表さなくても自然と滲み出るそれがまた、別の問題を生み出す。

 パリィは前世で、マルティア国を作る前に南方地域の国々で様々な事を見かけて来た。

 人が些細なことで嫌われ、其れが差別に発展しその者が街を出て野盗になり、差別した者達を殺し、野盗になるならまだマシな方で、中には盗賊を作りその盗賊が大盗賊に育ち、街一つ皆殺しにする者まで居た。

 人を嫌うことから始まり、憎しみになり其れが一つの悲しみに収まらず大きな災いすら齎す。
 だが、流れだけを見れば盗賊になった者が悪い様に見えるが、その者を盗賊に変えたのは街の人々だ。

 人は都合の悪い事を見ようとしない。

我が身を守る為に正当化していく。

嫌な物を他人に押し付けていく。

 その歪みは形をかえ予想もしない災いとなり人々を襲っていく。


 そして其れは、民あっての国、全ての国の力は民が生み出している。
 それを理解して無い国王がいる国で、頻繁に見受けられる。
 パリィはそんな国々を見て嫌気が刺し、その昔、国が発達していない北方地域、そして極北地域にやって来たのだ。

 そして日々の生活を自然と共に生きる人々と触れ合い、本来の人の姿を目の当たりする。
 人は自然から生まれた、エルフもドワーフも人間も、神が生み出したとしても自然に抱かれて生きている。
 そこには怒りも憎しみも無い、いや……そんな物を抱けば、厳しい自然の中では生きていけないのだ。

 そんな日々の中で時折南方の国が、略奪しに来るのを知りパリィは守りたくなった。
 そしてパリィはマルティア国を作ろうとしたのだ。


 パリィは何故か南方地域に居た時に見た事を思い出した、テミアとテリアが北風をパリィに見立ててくれたからだろうか?、不思議な気分になっていた。これから雪解けになり、旅立ちがいよいよ近くなる。
 テミアとテリアは何故マルティアを作ったのか、作ろうと思ったのかを、鮮やかに思い出させてくれた、パリィは微笑みながら言う。


「ありがとう」


 そう二人に言った、テミアもテリアも不思議そうな顔をしたが、すぐに良い笑顔をパリィに見せてくれた。


 パリィの心支度が出来た気がした、そう言った事の無い国、神々に見せても恥ずかしく無い国。
 そして二度と民を見捨てない最後まで守り、春を呼ぶ風になる。

 ほのかに生まれた、セルテアを想った気持ちに鍵をかけて胸にしまい、静かに窓から晴天の空を見上げた。



 穏やかな日差しの中、春を呼ぶ風が強く吹いている、旅立ちを前にそんな優しい日であった。
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