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〜第十章 メモリア・セディナ〜
171話❅魂の姿❅
しおりを挟むパリィは納得した。グラムの剣の重さの訳を、カルベラ隊は仲間との絆がマルティアで最も強いと言われていた、社会から孤立した事のある者達が理解し合い、互いに絆を強めていたのだ。
そんな者が一度に、多過ぎる程の仲間を失えば、どうであろうか、そして彼らはマルティア国滅亡後に再び全てを失い、社会から放り出され盗賊となっていたのだ。
つまりグラムは同じマルティアの生き残りである、パラドールの村まで襲っていた、社会から放り出された者からすれば、温かい村の平穏は苛立ちと怒りを強く思わせるものだったのだ。
パリィは戦いながら二つの事を考えていた。
一つは再び救いの手を差し伸べる。
だがセクトリアの村は、まだ小さく彼らを受け入れる程の力はない、それでもパリィは手を差し伸べたかった。
一つは彼らの罪を裁き追い払う。
パラドールの村人の彼らへの反応が解らない、だがこれはカラベラの者達を見捨てる、南方の国と変わらない気がしてならなかった。
パリィはグラムの剣を弾き、グラムに待つように手のひらを力強く向け、メーテリアに聞いた。
(待つが良い)
グラムは構わずパリィを襲おうとするが、何者かの声がグラムの頭に響いて、待たなければ、話を聞かなければならないと思い、剣をおろした。
誰にも見えないが死の女神ムエルテが、パリィとグラムの間に立ち、グラムを睨みながら言っていたのだ。
(この感じ……
ムエルテ様ッ!)
パリィは見えはしないが、ムエルテの気配を自分とグラムの間に感じ取り、メーテリアを信じて聞いた。
「メーテリア!
貴方の村は
マルティアの様に生きて来ましたか?」
「パリィ様、勿論です!
わたくしメーテリアは
パリィ様の教えのままに
村を守ってまいりました!」
「ならば
彼らを許せますか?
カラベラを許せますか?」
メーテリアは驚いた、まだ彼らに射抜かれた足が痛む、許せる筈がない。
だがふとメーテリアは思い出した。
その昔のパリィとのやり取りを。
(メーテリア
私は南方地域の国でうまれたの……
でも……
なんだか寂しくて……)
パリィはマルティア国を作る以前、南方地域から旅をして北方地域に来たのだ、そして南方地域の人々には無い人の温もりを感じていたのだ。
(本気でまた国造りをされるんですね)
そうメーテリアは心で呟き、一瞬でマルティア国時代にパリィの側近だった時の態度を取り、凛々しく言う。
「パリィ様が許されるのなら
このメーテリア・パラドールは
それに従うだけです
マルティアはパリィ様そのもののお姿
好きな様になさって下さい……」
メーテリアが痛みを抑えて言った。
パリィはそれを聞き選んだ、救いの手を差し伸べる事を。
バイトから見れば、パラドール家の方がかつては高官であり地位も高かった、パリィの周りには良心溢れた、地位の高い者が集まりパリィを支えていた。
メーテリア・パラドールも、心からパリィに仕えたその一人であった。
バイトも仕方ないかと言う面持ちになる。
「グラムさん
武器を納め私達と
マルティアを再興してくれませんか?
ただ一つ条件がありますが……
それも聞いて頂けますか?」
グラムもなぜか本物の『白き風の女王』と話している感覚を覚えた。
「条件ってのはなんだ?」
パリィは瞳を瞑り静かに言う。
パリィのまぶたに、数多くの今まで見てきた記憶が素早く流れていく、悲しみが溢れたがそれを受け入れ、瞳を見開いた。
グラムだけには見えた、パリィの右目だけから一雫の涙がスッと光り流れ落ちたのを、グラムは確かに見た。
「この私が
パリィ・メモリアが国を再興し
もし私が再び国を捨てる様な事があれば
この私を貴方がその剣で斬り捨て
あなたが国王となって下さい
貴方の仲間を思う気持ちと
国を思う気持ちを乗せて
私を斬り捨てなさい!
私が過ちを再び起こす前に!
私を救う気持ちで
この私を斬り捨てなさい!」
パリィは強く強く言った。
その言葉は周りの者達にも衝撃を与えた、だが同時に、全ての者達にパリィの覚悟を伝えるには十分過ぎる言葉であった。
そしてメーテリアは読み取った。
パリィが千年前の罪に苦しんでいる事に、それを償うために足掻いているパリィの魂を感じていたのだ、メーテリアは瞳を瞑り魔法の力でパリィの魂の姿を見た。
その姿は首から血が流れ、腹部からも血を流し、白いドレスの半分以上が血に染まり、悲しい姿をしていた。
だがその瞳は、強く凛々しく輝きパリィの優しさ溢れた水色の瞳は、汚れることの無い美しい空色をしていた。
「パリィ様……」
メーテリアはパリィの痛々しくも、美しく凛とした魂の姿を見て思わず呟く。
グラムはそれを知らぬが、笑いながら応えた。
「ハハハッそんな条件は聞けねぇな!
女を斬っても何にもなりゃしねぇ
だったら俺の女にして
国ごと盗むさ!
そうされたくなかったら
あの時よりもマルティアを愛しな」
そうグラムは言い剣を鞘に納め、部下に言った。
「さぁ!
おめぇら盗みはやめだ!
近くに村を作るぞ
ねじろに居るお前らの女も連れて来い!」
そう言い去ろうとした時、振り返ってパリィに言った。
「何日かしたら使いを送る
出来れば……
作物の作り方を教えてくれないか……
俺らは狩しか出来ねぇからな」
「えぇ、喜んで。」
パリィは優しく答えグラム達を見送っていた。
(あの気配……
一度感じたことがある……
あれはグラキエスで……)
グラムは立ち去りながら思い出していた、それはかつて、グラキエス山脈の戦いでおおくの仲間が死に、戦が終わった後、戦友の墓を作っていた時に感じた気配と同じであった。
(女神か……
なんの女神か知らねぇが
パリィ様を守っているのか……)
グラムは小さく鼻で笑っていた。
(あやつ……
妾に気付きおった
カルベラ……髑髏とはの
面白そうなやつじゃ)
ムエルテもそう思いながら小さく鼻で笑っていた。
グラムは盗賊達を連れ林に去って行く。
「パリィ様
本当にこれで良かったのですね?」
バイトが聞いてきた。
「バイトも偉くなったのですね」
メーテリアがにまにましながらバイトに言った。
「滅相もありません
我が師でありますメーテリア様には
敵いません」
メーテリアは魔法においてはパリィの師であり、バイトにも教えていたのだ。
「ふむ
これから忙しくなりますよバイト」
メーテリアがそう言うがバイトはその意味をまだ理解していなかった。
パリィ達はセクトリアに帰り、既に村に避難しているパラドールの人々に、今回の経緯をメーテリアが話した。
そしてパリィは食料や天幕の指示をしている、夜はまだ僅かに寒い、パラドールの人々は天幕で暖を取り、久しぶりの温かい食事をとることが出来た、そしてゆっくりと休む事も出来た。
その日パリィはあえてパラドールの人々の所には行かなかった、メーテリアが居れば十分だと思っていた。
それはパラドールの村の人々だけでゆっくりしてもらおうと考えたからだ。
パリィは屋敷でいつも通り三人一緒にご飯を食べている時。
「テミア、テリア
明日聞いてみるんだけど
パラドールの人達がセクトリアで暮らす様だったら
家を建てあげて欲しいんだけど頼めるかな?」
「うん?全然構わないけど
木材足りるかな?」
テミアが答えてくれた。
「今日見た林からも倒木あったけど……
シャナの森から切るしか無いかな
今度苗木も沢山用意しないとね」
そんな話をしながら食事を終え、パリィ達はゆっくりと休んだ。
翌日パリィは、朝からメーテリアの所に行き、メーテリアに聞いた。
「メーテリア
パラドールの村は
何人くらい住んでいたのですか?」
「四百名程です。パリィ様」
パラドールの人々は驚いた、パリィの名を今やっと聞いたのだ。
「皆さんに一つお聞きしますが
このままセクトリアに留まりますか?
それともパラドールに帰られますか?」
パリィはあえて、選択肢を彼らに与えたが、
既に彼らが選ぶ答えを解っていた。
「出来る事なら、ここに留まりたい」
一人が言うと他の人々も続いて言った。
「あぁ、村はほとんど焼かれてしまった……
次の冬も越せるか解らない」
「そうだ
帰れば冬を越せる気がしない」
パラドールの人々は口々に言った。
「メーテリアは?」
パリィが聞く。
「パリィ様
イジワルを言わないで下さい」
パリィはそれを聞き微笑み全員に聞こえるように言った。
「解りました
もう少しでバラバラになってしまった
村の人々もみんな戻って来ると思います
そのままお待ち下さい」
パリィはあえて直ぐには伝えなかった。
それから暫く経ち、昼頃になった時にクイスが無事に村人を百名程救出して帰って来た。
それから一時間程でセドが二百名程救出して帰って来た。
あと七十名程足りない、パリィは直ぐにオドルの魔法を使い探すと、すぐに見つかった、パラドールの村にいる様だ。
直ぐに十分な食料を護衛団に持たせ、案内も二人ほど選びセドに向かってもらった。
四日程の距離で急いだ方が良いとセドは思い隊を急がせて進んだ。
「パリィ様
色々とありがとうございます」
メーテリアは深く感謝を込めてパリィに礼を言う。
「ううん
気にしないで大切な事だから」
そうパリィはメーテリアに言い、パラドールの人々にやっと伝えた。
「皆さん
私はセクトリアの長として
皆さんが宜しければ
セクトリアにお迎え致します。
私の名はパリィ・メモリア……
よろしくお願いします。」
パリィは簡単にパラドールの人々に挨拶をした、パリィの言葉にパラドールの人々はやっと安心した。
そして既に一部の者達はマルティア国の再興を予感していた。
パリィの名とマルティアの旗、人間では無いエルフやオークの者達は直ぐに理解したのだ。
それで大体の人々は解ってくれると、パリィは予想していた、パラドールからの人々の殆どが、エルフとオークで短命な人間が少なかったからである。
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