✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜

189話❅女神の警告❅

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「おさかな……」
パリィが呟いた。

「パリィ様
食べますか?」

 グラムが言い、鉤爪のついた長い棒で魚の干物を取ってくれた。

「これは……
カルベラの村は漁も出来るのですか?」

メーテリアが聞いた。


「あぁ出来るぜ

長い冬を越すのに
カロル川で魚を取って
干物や燻製を作って

冬の食料の足しにするんだ」

 グラムはそう言いながら、魚の干物を手で割いて魚の身をパリィに渡してくれた。


「美味しい……」
思わずパリィが呟く。

「パシオタも取りますか?」
パリィがその魚を食べながら聞いた。


 パシオタと言う魚は極北地域の特産品の一つである、黄色い身をしていて、冬にはとても脂が乗り最高の食材である。


「あぁ前の村があった場所なら
簡単に取れたな
この辺でも取れると思うが
ペイズ付近の方が取れるはずだぜ」

グラムが言う。


「ペイズ湖が近い場所に
村があったのですか?」

パリィが聞いた。


 ペイズ湖はセクトリアから北東にあり、カロル川にも流れ込んでいる、パシオタはペイズ湖と、ペイズ湖からカロル川に流れ込む支流に集まるのだ。

「漁の時期はまだ先だが
パシオタも獲るなら
漁の支度も今から始めないと
間に合わないがどうする?」

グラムが聞いた。


「是非始めて下さい!」
メーテリアが言った。

「メーテリア……
食べたいの?」
パリィが聞く。

 メーテリアは目を輝かせてパリィに聞く。

「パリィ様も食べたくないですか?
あの口の中でトロける幸せのひととき……」

 パリィも女王だった時によく食べた記憶がある、あの時代は国として交易にパシオタを使ったことはない。

 その為に南方地域にも、あまり知られていない絶品である、そして極北地域の人々もパシオタを非常食としてベルス帝国には隠したのだ。

 それはパシオタは保存する為に干しても、水につけると多少味は落ちるが、ほぼ味が戻るのだ。


「それは食べたいけど
交易品にも出来ないかな……」


パリィはそう呟いた。


「そうだな……
ユナ、燻製を二つ持って来てくれ。」

グラムがユナと言うオークの女性に言った。

「はい」
ユナはそう返事してその場を離れた。

 ユナはオークらしくない程、エルフの様な綺麗な顔立ちをしている。


「グラム
これでいいかな?」

 少ししてユナがそう言い、パシオタの燻製を二つ持って来てくれた、大きさは大体腕の長さの半分くらいのと、それより大きい位のパシオタの燻製を持って来てくれた。


「パシオタっ‼︎……
くんせい……」

 メーテリアが目を輝かせて言い、その後にきょとんとしていた。ユナは可愛らしい笑顔を見せてくれた、パリィはパシオタよりユナと言う女性が気になっていた。


「おうっ
一つはユナが料理してくれ」

 グラムはそう言い小さい方のパシオタの燻製を一つ受け取り、ユナは近くで料理を始める。


「綺麗な人……」
パリィが呟くと。

「俺の妻だいいだろ」
グラムが言う。

「いいですね~……」

 メーテリアだけがそう反応するが、パリィはグラムが家庭を持っていることに驚いていた。
 
 グラムはパシオタの燻製に串を刺してツボに入った油を塗ってから、軽く火で炙ってから手で身を裂いて、皿に分けてくれた。


 パリィは実はパシオタの燻製を食べたことがない、それはメーテリアも同じだった、パシオタの燻製は庶民的ではあるが、やや高級といったところであった。

 だが女王としていたパリィ、そしてその側近で最高位の高官だったメーテリアも、パリィと同様に……パシオタは最高品質の生の状態で料理されたものか、焼き料理が中心であった。



「これが……パシオタの燻製……」

 メーテリアが不思議なものを見るように呟く。

「食ってみな美味いぜ」

 グラムが言う、それはパリィが交易品に出来ないかと言ったので、運搬しやすいパシオタの一番長く保存出来る燻製を出してくれたのだ。

 そしてパリィはその味を確かめようと、手で取り可愛らしく口に運ぶ。


「え……」


 パリィは驚いた、豊かなパシオタの味が口の中で広がる、噛めば噛むほど、燻製の香りまでもが口に広がり、それが調和して旨味を引き出している。


 パリィは思わず言葉を失っていたが、それを言い表そうとした時……。


「おいしい……」


 メーテリアが先に言い、パリィの隣で幸せそうに涙を流していた。

 パリィは言葉で表現しようとしたが、メーテリアが一言で全身を使って表現していたのでパリィは何も言えなくなり、メーテリアを不思議な人を見るように見ていたが、パリィは困ったような仕草をして、メーテリアを指で突っついたがメーテリアは感動して動かない。

 その光景に村の人達から笑いが溢れる、パリィの人柄を少しだが垣間見ることができたからだ。

 そしてユナがグラムを呼んで、グラムはユナの手伝いに行った。
 そして街の人々達と会話を楽しんでいると、グラムが大きな鍋を持って戻って来た。

 パシオタの鍋料理が出来たのだ、そして宴の中で振舞われる、そしてパリィはパシオタの食べたことが無い味を味わい、交易品として十分扱えることを知る。


 そして夜が深くなり、宴が終わりパリィとカルベラの村の人々は良い交流が持てた。





 その晩、パリィは寝る前に一人で夜空を眺めていた。

 美しい三日月と星々が輝く夜であった、ふとパリィが泊まっている、家の前を誰かが通った、見覚えのあるダークエルフだ。
 風が吹き髪が靡いてパリィはハッとして、思わず飛び起きその者の跡を追った。

 その者はパリィに追われてる事に気づいたか走り出した。
 パリィ追いつく様に加速して追う、パリィが追いつけない、風の様に走るパリィが追いつけないのだ。

 パリィは必死に走った、その者は距離を保つ様に走っている、パリィからしたらあり得ないが納得していた、その者が生者では無いからだ。

 だが諦めなかった、諦めたら一生後悔しそうな気がした、そしてパリィは思い切って、急に止まる。

ズザザァ!

 乾いた地面に砂埃が舞い弓を構え、パリィは風に祈りながら矢を放った。

 その者の背中を目掛けて矢は追いつき射抜くかと思った瞬間、その者は振り向き矢を薙ぎ払った。

 パリィは矢を放ったと同時に走り既に距離を縮めて、その者に飛びつき抱きしめた。


「キリング!」


その者はそっとパリィを抱きしめ囁く。


「酷いな姉上……サルバですよ」


 パリィは驚いたが、キリングとサルバは兄弟で非常によく似ている、二人は離れ、それでも再会の喜びは溢れてくる。

「でも……
そう言われて良かった
姉上もまだ兄貴のことを
思って下さってるのですね
兄貴のふりした甲斐がありました」

サルバが優しく言う。

「キリングは?黄泉にいるの?」

 パリィはキリングのことを知りたかった、純粋にどんな事でも知りたかった。


「兄貴はもう黄泉に居ません
蘇る為に旅立ちました」

サルバが優しい顔をしたまま話す。


「え?……どう言う事?」

パリィが驚いて聞いた。

「姉上
落ち着いて聞いて下さいね

黄泉に居る死の女神様から
話を聞いたのですが

この世界の前に
もう一つ世界があったそうです

それは過去の世界で今のこの世界は
その世界が
生まれ変わった世界らしいのです」

サルバが説明してくれた。


「ムエルテ様が……

生まれ変わった世界?」

 パリィは初めて聞く話で、この世界の神話を思い出し考えるが、その様な話は聞いたことが無かった。


「死の女神は
ムエルテ様と言うのですか……」

 サルバが考えるような仕草で言う、名を聞いた事が無かった様だ。

「今の世界は姉上の様に
この世界は生まれ変わったのです

過去の世界は
六芒星が輝く世界だったそうです

その世界へ
黄泉にある記憶の扉から旅立ちました
姉上の記憶と愛を全て取り戻して」

 サルバ優しく教えてくれた。

 それを聞きパリィは涙が溢れた、キリングが思い出してくれた。
 全てを解り合えた、全てを愛しあえた、どんな形でも守ろうとしてくれた。
 絶望しかない未来からも、方法は間違っていたかも知れないが、彼なりに守ろうとしてくれた。

「その扉は何処に!」

 パリィはキリングを追いかけたくなった、何処に行ったか解らない、知らない世界に行ってしまったが、そんなことはパリィには関係無かった。


「姉上!待ってください
黄泉にあるのです
また自らの手で命を投げ捨てるのですか?

今の姉上には
姉上の民が居ます
兄貴を信じてやって下さい
必ず戻って来ますから」


 サルバは優しく微笑みながら、パリィにそう言った、それでもパリィは落ち着かない様子でいる。

「そちはキリングを信じておらぬのか?」

 ムエルテの声がした。

「ムエルテ様っ!」

 静かに静かに死の女神ムエルテが現れた。

「やはりそちは
あやつと似ておるのぉ……」

 そう言い微笑みながらムエルテは話を続ける、ムエルテはユリナならスグに飛び出して行くだろうと言う姿と重ね合わせていた。


「安心せい
キリングが危なくなったら
其方も送ってやろう

この死の女神ムエルテにも
その程度の甲斐性はあるからの」

ムエルテはそう言った。

 パリィはムエルテのいつもと雰囲気の違う態度に、少し慎重になっていた。


「だが二つだけ言っておこう。
もし大きすぎる過ちを
その世界で起こせば
この世界は無くなる

その世界はこの世界が
生まれ変わる前の世界
つまり過去
解るな?その意味が……」

 ムエルテはそう言い、次に厳しい表情でパリィに冷たくも温かく言った。


「そしてもう一つは

この世界は過去の世界を
生まれ変わらせた
女神の想いがあったからこそ
生まれ変わる事が出来た

そなたは過去に
その想いに一番近づいたのだ
それをまた追いかけてる様だが……」

ムエルテは深く息を吸い叫ぶ。


「もたもたするでない!

時代に飲み込まれるぞ
其方は知らぬ!
南方で双頭の獣が蘇ろうとしている!

再び……

この世界が地獄になるぞ!

それをあの女神は望まぬ!
それはあの女神の想いを涙に変える!」


 ムエルテは息を切らす程叫び、パリィに訴えた、パリィはその女神の事は知らないが、双頭の獣で把握した。

 それがマルティアを滅ぼし、暗黒時代を支配したベルス帝国である事をパリィは悟った。

 そしてその女神の想いも、なんとなくだがパリィは解った気がした。


 ムエルテは南方地域に様子を見に行き、オルトロスの思想に染まり、略奪と暴行、そして破壊の限りを尽くす大盗賊を見てきた、その勢力は、広い地域に散らばり仲間を増やし続け、集まれば小国を飲み込むほどになっていた。

 ムエルテはパリィにそれを警告しに来たのだ……。
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