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〜第十二章 メモリア・時の女神
216話❅光の劔❅
しおりを挟むそしてユリナが案内し王宮の地下に降りて行く、暗く闇の世界に降りて行く様な階段だがサクヤも居れば、かつてのマルティアの者達がついてくれているので、怖い様ではあるが安心して降りて行く。
パリィはこの階段と石の扉を知っていた神聖な物ではあるが、開けることも出来無かったので詳しく調べた事は無かった、と言うよりも扉に刻まれた言葉も、この世界のものでは無い様で調べようが無かったのである。
そして扉の前に着き松明をユリナが消して、手の平に魔力を込めると光の玉があらわれ周囲を照らす。
松明の明かりでは見えない文字が壁に浮かび上がる。
「これは……」
パリィが驚く、同じように見た事が無い文字だが、昔と違い今のパリィは読める気がした。
「古の伝えられなかった神話
ここに記す……」
オプスがそう読むがその続きが読めない様である、その先はユリナも読めなかったのだ。
「神々の罪を忘れる事を私は恐れ
心に刻み永遠の平穏を願う……
アインズクロノス……
アインズクロノス?と言うことは
創造と破壊を司る女神様が
作った神殿なの?」
パリィが読み上げて言う。
「……」
ユリナは驚いていた、そんなまさかと驚いていた、それはオプスも同じで驚きを隠せなかったがオプスが驚いたのは違うところであった。
(ニヒルはわたしの願いを
聞いてくれていたの……
ならエレナさんはなんで
ユリナさんの所に来てくれないの?)
オプスはそれを疑問に思っていた。
この神殿の記憶は正に太古の記憶であり、全ての生命が巨人族と戦い、怒りに本来の役目を忘れた無の神ニヒルと神々の戦いも記されていた。
それを覚えているのは、その世界でユリナと関わりを持ち更にごく一部の者しか、覚えていない事エレナでさえ忘れている物であった。
それなのにこの地上世界でエレナをさすアインズクロノスと記されている。
だが、ユリナは小さく微笑みながら言う。
「なる程……そう言うことか……」
「お母さんどうしたの?」
ユリナの言葉にパリィが聞いた。
(ユリナさん何か気付いたのですか?)
オプスが心で聞いた。
「ううん
気にしないでオプス様お願い
開けてくれます?」
ユリナは気付いた母エレナは記憶を取り戻している、だがあえてそれを隠している。
パリィが黄泉に行き苦しんでも救いに行かなかった、救いたかった筈だその気持ちを押し殺してでも隠し通した訳がある筈だと、ユリナは確信した。
そう思いながら神殿に足を踏み入れる。
パリィ達も続く、壁一面に壁画が描かれており古代の事が記されているが、神殿にパリィとユリナ、オプス、サクヤが入ると扉が自然に閉まった。
そして異変が起こった。
描かれた壁画が輝き出し、動き出したのだ、まるで物語りのワンシーンを繰り返し伝えるように、壁画に描かれた人や動物が同じ動きを繰り返し伝え続ける。
そこにはユリナが時を戻すまでの全ての物語りが刻まれていた。
奥に進むに連れてエレナの偉大さも語られ、無論アグド国王の偉大さも語られ、父であるアルベルトの物語りも語られている。
そこには過去の世界の全てが語られている、が天界を表す壁画には地上で何があろうとも心配はするが、何もしない神々の姿まで描かれている。
そしてその壁画に触れると英雄達の叫びや号令まで聞こえてくる。
パリィはそれらを見て、かつての世界の英雄達が自分達の力で世界を守ろうとして居るのを深く感じていた。
ユリナは一つの壁画に触れて英雄の声を静かに聞いていた。
「お母さん、それは?」
パリィが聞いた。
「パリィ……触って見て」
ユリナはパリィを誘いそっと手を優しく握りその壁画を一緒に触れる、そして号令がパリィの頭に直接聞こえてくる。
「出来るか解らない!
出来るとは言えないが!
出来なくはない‼
我らが行うは!奇跡そのものだ!
全ての兵と!民が!力を合わせても!
勝てないかも知れない……
だが!何もしなければ!
滅びるだけだ!
私はもう一度言おう!
出来るか解らない!
出来るとは言えないが!
出来なくはない‼
解るか!戦わなくては勝てない!
戦わなければ滅びる!
勝たなければ!我ら一族が滅びる!
皆よ!奇跡を摑み取れ!」
母エレナの号令だユリナはこの号令を知らなければ、あの世界を今に繋げる事は出来なかった。
パリィはそれを聞きこの英雄を一番良く知ってる気がしたが、何故か理解出来なかった、でも心の奥底から懐かしい思いだけが込み上げて溢れて行く。
ユリナはパリィの魂が輝いているのを優しく見ていた。
(そうだよお姉ちゃん
私達の一番大切な人なんだよ)
ユリナが心で呟いている。
「あれ……
なんでだろう……涙が……」
パリィは溢れた涙を拭いながら、壁画から手を離し今度は耳をピッタリつけて良く聞こうとする、そして瞳をつぶり心に刻み込んでいく。
その様子を見てサクヤも壁画に触れる。
サクヤに亡国の危機に立ち向かい、見事に国を守り切る英雄の記憶が流れ込む、サクヤもその偉業を知り、英雄がなんなのかを知る。
暫くしてまた奥に進み始めると、巨大な戦っている様子の二体の石像が通路を挟んでいる、一体は女性のエルフだろう大剣を振りかざし、もう一体の獣の様な石像に斬りかかろうとしている、獣の様な石像は鋭い爪でエルフの石像の頭を貫こうとしている。
ユリナとニヒルの戦いだ、その石像の奥は壁画の様子が変わり世界を巻き込んだ戦いが描かれている。
その獣と戦う神々とエルフの様子を壁画は伝え続けている。
そして戦っているエルフが、かつてムエルテの聖域で見た神話、その世界のエルフだとパリィは気付いた、更に先程の巨大なエルフ石像の顔立ちがユリナに似ていることにも気づいた。
(お母さん……なの?
どう言うこと?)
パリィは不思議に思いながら先に進む、そして一つの壁画に引き寄せられそれを見る。
その壁画はいきなり現れた獣に別のエルフが立ち向かい負けてしまう壁画であった。
だがそのエルフは舞いながら剣を振り戦っている、それはパリィの前世カナの死が描かれていた。
(この舞……
舞える気がする……)
そう思い風の劔を持ちその動きを真似てみると、体が自然と動き舞えるには舞えるが納得出来なかった。
「これ使ってみる?」
ユリナが一本の剣をネックレスから出して、パリィに手渡した。
その剣は嘘の様にパリィの手に吸い付き手に馴染む、刀身は優しく包み込む様な輝きを自ら放っている、そして体が軽くなり羽が生えた様な感覚を覚えた。
「お母さん……この剣は……」
パリィは不思議に思えていた、その剣はパリィの為に心を込めて鍛えられた、ビルドの剣よりも使い心地が良かった。
「いいから使って見て」
パリィはゆっくりと舞い始める、美しく美しく初めて舞っているとは思えない程、パリィは剣舞を舞っていた。
パリィ自身もどう舞うのかが頭の中にイメージが次々と湧いて来て不思議と舞いの世界に入り込んでいく。
「パリィ様……」
サクヤが余りの美しさに目を奪われている、長い間パリィに仕えていたサクヤでも見た事が無い美しさをパリィは放っていた。
そしてパリィの舞が終わり、辺りは静まりかえり、皆がどれ程の時が経ったのかを忘れてしまう様な感覚になっていた。
「本当に美しいですね……
私でも妬んでしまいそうです」
オプスがそう褒め称える。
「そんな……
オプス様は舞わなくても
美しい女神様です
私なんて……」
パリィが謙虚に答え場の空気が動き出す。
「お母さん
この剣ありがとう……
ビルドが作った剣じゃないよね?
こんなに使いやすい剣はじめてなんだけど……
なんて剣なの?」
パリィが聞いた。
「ひ・み・つ
パリィがもっと成長したら
この剣をあげるね
その時に教えてあげる」
ユリナはそうパリィに伝えた。
だが暫く歩いてパリィは一つの壁画を見つけた、一人の凛々しい神が先程の獣と戦っている、その神が持っている剣はユリナが貸してくれた剣にとても似ていた。
パリィはその壁画に触れると、二つの声が聞こえて来た。
「光神ルーメンよ!
貴様がどれ程の希望を集めようと
我に勝てぬと
解っているだろう?」
その獣が言う。
「あぁ……そうだな……」
光神ルーメンが言った。
(えっ私……この声を知ってる……
セルテア?
セルテアなのっ⁉︎)
パリィが戸惑っている。
「だからと言って
何もしなければ何も出来ないんでな
私が愛する妻の言葉だが
戦わなくては勝てない……
そう言うんだ綺麗な顔して
本当に強気でな
何度か殺されそうになったが
いつも言ってる事は間違ってなくてな
お前もそんな人がそばに居れば
狂わなかったんじゃないか?」
光神ルーメンが、最後を覚悟したようにエレナを思い出しながら言っていた、その目には多くの別れが見えていた、それでもその瞳が希望を忘れることは無かった。
「何が言いたい?」
その獣が静かに言った。
「ふっ……」
そしてルーメンが剣を構え力強く叫んだ。
「我が光の劔で
貴様が飲み込んだ全てのっ
絶望を斬り裂いてくれよう
そして我が死が
新たな希望を生み出す糧とならん!」
光神ルーメンが叫び光の力を解放した。
(あれは光の剣と言うの?)
その光景を見ていたパリィが呟く。
ルーメンの叫びに獣は何かを阻止する様に動き出した。
「まだ解らぬか愚かな神よ!」
獣がそう言うと同時に、ルーメンに襲いかかった、ルーメンは獣の爪を素早く剣で受け流し、獣が背を向けると同時に襲って来た尾を躱し、素早く後ろに下がり正面から襲って来たその獣を蹴り飛ばそうとした、だがその獣はその足を掴みルーメンを投げ飛ばしたが、ルーメンは光になり獣の懐に現れ、渾身の力でその光の劔で、腹部を切り裂こうと振り抜いた。
だが手応えがなく、ニヒルはの爪が襲いかかり、それをシールドで受け流した。
(あの神様すごい……)
パリィがルーメンの騎士としての力に圧倒され、そう呟いた。
だがその獣は最高の騎士と謳われたパラディンを追い詰めていく。
凄まじい速さの爪がルーメンを襲う、ルーメンが躱しつつ、反撃するがその獣はその爪で全て受け止めていく。
ルーメンは解っていた勝てないことを、それでも多くの兵と人々の希望を背負い、屈さずに剣を振り続ける。
その姿に希望を背負う者の役目をパリィは感じていた、勝てなくても諦めてはいけない、最後まで戦わなくてはならない、最後の最後まで役目を果たせなくても戦い続けるルーメンの姿がパリィの瞳に焼き付けられていく。
パリィは一度それを放棄してしまっている、そのパリィから見たルーメンの姿が偉大に思えてならなかった。
やがて一瞬の隙を突かれたルーメンの胸を、その獣の爪が貫いてしまう。
「カハッ……」
光神ルーメンは血を吐き苦痛に顔を歪めるている。
「おそ……か……たなニヒル……」
光神ルーメンは最後にそう言い、笑いながら何かの役目を果たしたかのように満足げな顔をした。
「まだ言うか
貴様は希望を集めすぎた……
褒美だ……
死して貴様が集めた希望が砕け散り!
世界の全ての希望が消え失せるのを
見るが良いっ‼︎‼︎」
獣はそう言い貫いた爪を右胸から左の腰に向かうように引き裂き、光神ルーメンは息絶えてしまった。
だがその獣は知らなかった、光神ルーメンが命をかけて時間を稼いでいたことに、その獣と対等な力を持つ神の目覚めの時まで、戦い抜いたことに気づいていなかった。
パリィは過去の世界で起きた獣との戦いがどれ程絶望的な戦いであったか、この世界で過去にあったマルティアとベルスの戦いが可愛く思えてしまう、それ程激しく全てをかけた戦いであった事、初めて理解し始めていた。
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