【完結】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?

廻り

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01 主人公王子との出会い

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 爽やかな水色の空には、綿をちぎったような雲がふんわりと浮かんでいました。
 のどかなお昼休憩。
 私は、レースをあしらったバスケットを腕に下げ、家から持参した本を胸に抱えながら、バラが可憐に咲き香る魔法学園のお庭を歩いていました。
 
 眠気すら誘うような気持ちの良い暖かなお天気なので、ベンチで読書をしながらランチでも。と思ったのですが。
 辺りを見回してから、私は小さくため息をつきました。

 至るところで、ランチを楽しむ生徒たちの姿があり。夜会か、お茶会か、と錯覚してしまうほどの華やかさ。
 社交性皆無な私には、眩しすぎる空間です。

 残念ながらこの辺りに、私が座っても良さそうなベンチは見当たりません。
 あまり長く探していては、お昼休みが終わってしまいます。仕方ないので今日のところは、屋内からの眺めで我慢しましょう。
 そう思い、建物へ引き返そうとした、その時。

 頭に、カツーンと衝撃が。

 うつ伏せに倒れながら、唐突に思い出したのです。
 私の前世を。



 ――前世の私はごくごく平凡な女子高生でしたがひとつだけ、普通の女子高生とは異なる趣味があったようです。

 それは『美少女ゲームが好き』ということ。

 女の子が幼い頃に、魔法少女や女性アイドルに憧れるのはよくあることで。小学生の頃にはアイドルを着せ替えして、ダンスをさせるアーケードゲームなどが流行し、私も熱中していました。

 普通なら成長と共にそういうものは卒業し、恋をする年代になればイケメンに興味を持つのでしょう。けれど私は、高校生になっても可愛い女の子が大好きで。
 友達が乙女ゲームをやり始める中、私が選んだのは『美少女ゲーム』でした。
 そのゲームにのめり込みすぎた結果、歩きスマホで交通事故に遭ってしまったようですが……。


 いくつもプレイした美少女ゲームの中で、私が最も気に入っていたスマホゲーム。
 それがこの世界と酷似してるのだと、今の衝撃で唐突に思い出しました。

 どうやら私は、異世界転生を知らぬ間に体験していたようです。

 そればかりではなく、私はそのゲームに出てくるSSRキャラのひとり、『ミシェル・ブラント』によく似ている……というか、まさにそれが私の名前です。

 蜂蜜色のウェーブがかった髪の毛は腰まで伸びており、赤いつぶらな瞳と歳の割には幼く見える顔つきが、まるで天使のよう。……というのは、前世の私の感想。確かに童顔なのは認めますが。

 性格は冷静でおとなしく、いつも一人で本を読んでいる『図書室の天使』。

 変なところで、冷静さを保とうとする性格ではあると思います。
 人前で、はしたなくうつ伏せに倒れ込んだことにも慌てず。未だにその体勢を維持したままで、前世の記憶について考え込んでいるのですから。
 私も私ですが、周りの方も手を差し伸べてくださるくらいの優しさがあっても、良いと思うのですが。

 いつも一人で図書室にいるのは、図書委員として活動しているからなのですが、他人様からは図書室の天使と呼ばれていたとは知りませんでした……。

 特徴としては一致するようなので、『SSRミシェル』が私であることは間違いはなさそうです。
 けれどそうなると、ゲームの内容が今後の人生に大きく影響してくるのではと、心配になってしまいます。

 今のところは主人公との接点がないので、彼のストーリーに私は足を踏み入れていないようですが。
 ここが美少女ゲームの世界だということを踏まえれば、何かしらの対策を講じなければなりません。
 そんなことを思っていた、その時。

「大丈夫か!」

 慌てたような声音の主が、私を抱き起こしてくれたではありませんか。
 世知辛い世の中でも、しぶとく待っていれば救世主は現れるものですね。

 そんなのんきなことを思いなが、らたくましい腕の中に納まった私は、お礼を述べようと声の主の顔を見上げました。

「何があったんだ。どこか怪我はないかい?」

 心配そうに私の顔を覗き込む彼を見た私は、思わず絶句。
 まさに今、関わらないようにしようと心に決めた相手に、助けられてしまったのですから。

「話せないほど、どこか痛むのかい?」

 再度、私の怪我を心配する彼は、この国の『王太子』であり、前世の私が熱中していた美少女ゲームの主人公、その人です。

「……いいえ、怪我はありません。ボールか何かが飛んで来たのでしょう。起こしていただきありがとうございます、ルシアン殿下」

 そうお礼を述べると、緊張の糸が途切れたように微笑まれた殿下。

 黒髪と黒い瞳が艶やかに輝いており、荒れひとつないきめ細かな白いお肌は、思わず手を伸ばしてしまいたくなる衝動に駆られます。
 魔法学園らしく魔法師をイメージしたマントとブレザーは、殿下のためにあつらえたかのようにお似合。
 その完璧な王子スマイルは、何千回練習をしたら会得できるのでしょうか。

 改めて見る彼は王太子として、また主人公として、遜色のない存在感があります。

「ミシェル嬢に怪我がなくて良かった。ベンチの近くでボールを使わないよう、学生には周知させておこう」
「あの……、どうして私の名前を……?」

 殿下とは同じ最終学年ですが、彼は上位クラスで私は下位クラスなので会話するのは今日が初めて。
 上位クラスには綺麗な貴族令嬢がわんさかいるので、私など目に入っていないと思っていましたが。
 と言いますか、前世の記憶が戻った今だからこそわかります。

 彼の周りにいるのは、UR美少女ばかり。
 前世の私なら、「どんだけガチャ回したの!」と叫んでいたことでしょう。

「これでも一応は王太子だからね。将来、自分を支えてくれるであろう貴族の令嬢令息の名前は、全員覚えているよ」
「そうでしたか。しがない伯爵家の私にまで目を止めていただき感謝いたします」

 将来は貴族の家門に属す者として、何かしら国のためには働くでしょうが、直接支える予定のない私まで覚えてくれているとは思いませんでした。
 それとも、美少女キャラは全て把握済みなのでしょうか。

「せっかく知り合ったんだから、これからはミシェル嬢とも仲良くしたいな」

 そう微笑む殿下を見て、急に寒気がしてきました。
 一刻も早くこの場を離れなければ、殿下との接点が増えてしまいます。

「私には、もったいないお言葉。そろそろ授業が始まりますので失礼いたします!」

 まだまだ授業には早い時間ですし、王太子に対して失礼なのは重々承知ですが、もう関わりたくありません。

 このまま親しくなってしまったら、私も彼のハーレム要員・・・・・・にされてしまいます。

 私は逃げるようにして、この場を後にしました。二度ほど、転びながら。
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