悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り

文字の大きさ
54 / 55

53 ヴィンセント25歳 26

しおりを挟む
 その後。元のマリアンに戻った彼女は、これまでの皇后の行動を恥じ、異国で暮らしたいと願い出た。
 ヴィンセントはそれを受け入れ、二人は婚約破棄となった。
 小説でのマリアンは、もともと政略結婚として割り切っていた。そのためか、ヴィンセントに対しての未練はないようだった。

 エルシーのほうも、「私がいるとエルの決心がつかないわ」と言って、早々にヴィンセントと離婚した。今は公爵家を継ぐために、婿探しをしている。エルが憑依していた際のアークが誠実に見えたらしく、気になっているらしい。

 そしてエルは、エルヴィンの生みの母であることと、クロフォード公爵家の隠し子であることが公表された。
 皇室と公爵家の大スキャンダルにならないか心配したエルだが、公爵の作り話によって、涙なくしては語れない美談となった。

 幼い頃から病弱で長くは生きられないと宣告されていたエルは、公爵家で隠されて育った。
 ヴィンセントはそんな彼女を足しげく見舞ううちに、二人は恋に落ちた。
 しかし病弱な娘との結婚に反対した先代皇帝が、エルとエルヴィンを無き者にしようとする。
 昏睡状態となったエルを不憫に思ったエルシーは、姉の席を確保しておくつもりでヴィンセントと結婚した。
 エルシーの目に余る行動の数々は、姉を想うあまり他の女性に対して過剰反応してしまっていたと。

 ちなみに最年少で宮廷魔法師試験に合格したエルと、公爵家のエルが似ていると噂になったが、別人であると公爵は強く主張している。
 そこを受け入れてしまうとエルは、公爵が十五歳の時の子になってしまうから。
 そのためエルは現在、二十四歳という設定だ。死んでいた三年を差し引いても三歳もサバを読む羽目になってしまった。
 死んだり、憑依したり、元の身体に戻ったり、年齢が変わったりと、もう無茶苦茶すぎて笑えてくる。



 それと今は絶賛、結婚準備中だ。ヴィンセントはエルに会いたいがために毎日のように、公爵家を訪問している。
 エルヴィンを妊娠していた頃も彼は足しげく男爵邸に通い詰めたので、まったく苦ではないらしい。結婚するまで続けるつもりのようだ。

「エル。本当に僕と結婚してくれるのですか? 無理していませんか?」

 最近のヴィンセントはこの質問ばかりだ。

「ヴィーは本当は、私と結婚したくないの?」

 エルは、エルシーと一緒に庭園へ遊びに行くエルヴィンへ、手を振りながらそう答えた。

「違います! ただ、ずっと僕はエルを困らせ続けてきたのに、僕を受け入れてくれることが夢みたいで」

 確かにヴィンセントの行動には困ることも多かったが、それは彼の愛情を素直に受け取れない状況への葛藤のようなもの。

「前に私は、事情があって皇宮に行けないと話したでしょう。じつはその心配を、ヴィーが全て取り払ってくれたのよ」

 皇后と皇帝を排除し、エルシーのヴィンセントへの恋心もバッサリと打ち砕いた。そして、復活した皇后も再び葬り、ヒロインは国を去った。
 彼はまるで、エルの席を死守するかのように、小説の主要人物たちを次々と皇宮から追い出したのだ。

 悪役人生か抜け出したくて、それでもヴィンセントと関わっていると上手くいかなかった。その結果が、この幸せなら文句も言えない。むしろ感謝したいくらいだ。

「僕がですか?」

 自覚がないヴィンセントはきょとんとした顔で尋ねる。エルは、秘密を隠すようにふふっと笑みを浮かべた。

「だから私はもう、何も心配することなくヴィーと結婚できるのよ。本当はヴィーのことがずっと大好きだった。プロポーズされたときは、嬉しかったのよ。ヴィーとひとつになれた時も幸せだった」
「エル――」

 ヴィンセントに抱きしめられ、深いキスに襲われる。昔は戸惑いもしたが、今は素直に求められるのが嬉しい。

「エルと結婚できる日が待ち遠しいです」
「私もよ。早く三人で暮らしたいわ」



 そして結婚式が無事に終わり、その半年後。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

処理中です...