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35話
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「妻のニエです!」
「――っと、この通りちょっと錯乱しているんだ。俺の屋敷が整うまで少し世話になるよ」
ギルバートさんには報告済みだったがみんなにはまだだったため、夕食前に一同が揃ったところでニエを紹介する。
「えっと……ニエさん。本当に部屋はリッツさんと同じでよろしいのですか? 遠慮なさらずとも空き部屋はまだありますよ」
「構いません、どこであろうと私はリッツ様と一緒ですから!」
「ティーナ、俺も説得したんだがニエがこの通りでな……。一応二人分のベッドを準備させてもらったから大目にみてくれ」
簡単な紹介も終わると料理が出揃う。ニエは作法を知っているわけではないようだが、食べる姿は自然体というか、どこか美しさがあった。
もっと野生児に近いかと思ったけど一般教養はあるみたいだ。
これならなんとかなるだろうと夕食も終わり、ニエが寝巻を取りに行ってる間に風呂に入る。
「よし、これでいいだろう」
「ワゥ」
泡まみれになったアンジェロを洗い流そうとすると風呂の扉が開かれた。
「リッツ様! お背中、お流しします!」
「!?」
ニエはタオルを手に持ち、体はギリギリ湯気で隠れていたが小走りで近寄ってくる。
「ちょ、タオル! 体を隠せ!」
俺はすぐに目を逸らしアンジェロ用に準備していた大きめのタオルを投げつけた。
「もうそんなに恥ずかしがらなくても。リッツ様がそういうなら――はい、もう大丈夫ですよ」
恐る恐るニエへ視線を向けると両手を広げた体にタオルが巻かれている。
「ほらばっちりです。さ、洗いますよ~」
「ま、待て、さすがに自分で……そうだ、ニエはアンジェロを頼む」
「わかりました、あとは私が洗い流しましょう」
ニエがアンジェロを洗ってるうちに俺は大急ぎで体を洗い慌てて浴槽に入った。続いて入ってきたアンジェロが悠々と前を泳ぎ、後ろではニエの鼻歌が聞こえる。
師匠もよく乱入してきてたがニエもそのタイプなんだろうか。女性ってわからんな……。
「ふぅ~お風呂はいつ入っても気持ちがいいものですね」
「……ニエはなんでそんなに俺に執着するんだ? 村で聖人って聞いたからか?」
ニエは人差し指を立てた。
「そういえば皆さん、リッツ様のことをそう呼んでいましたね」
「何か期待してるのであれば申し訳ないが俺は普通の人間なんだ。アンジェロもたまたま助けただけで、神獣だなんて知らなかったし選ばれたわけでもないんだよ」
ニエはニコニコと笑顔を崩さない。
「リッツ様、偶然というのはありません。たまたまだとしても過去の結果が今に繋がった。それを人は運命と呼ぶのです」
「それでもだ、ニエだって見ず知らずの俺を好きだなんておかしいだろ」
「あら、タイプではありませんでしたか?」
「そうじゃなくてニエのほうがだな……」
容姿だけならこれほど整ったニエをノーと言える男は少ないだろう。だが気になる点が多すぎる。
色々と話を聞こうとするとアンジェロが浴槽から跳び出てブルブルと体の水を払う。
「私もそろそろのぼせちゃいそうなので、お先に失礼しますね」
ニエとアンジェロが出ていくと静かになった浴槽で思い返す。ニエは先祖代々神獣と共にいたと言っていた。
アンジェロのこともあるし、神獣について調べればニエのことも何かわかるかもしれない。
あいつに頼ってみるか……。
「――っと、この通りちょっと錯乱しているんだ。俺の屋敷が整うまで少し世話になるよ」
ギルバートさんには報告済みだったがみんなにはまだだったため、夕食前に一同が揃ったところでニエを紹介する。
「えっと……ニエさん。本当に部屋はリッツさんと同じでよろしいのですか? 遠慮なさらずとも空き部屋はまだありますよ」
「構いません、どこであろうと私はリッツ様と一緒ですから!」
「ティーナ、俺も説得したんだがニエがこの通りでな……。一応二人分のベッドを準備させてもらったから大目にみてくれ」
簡単な紹介も終わると料理が出揃う。ニエは作法を知っているわけではないようだが、食べる姿は自然体というか、どこか美しさがあった。
もっと野生児に近いかと思ったけど一般教養はあるみたいだ。
これならなんとかなるだろうと夕食も終わり、ニエが寝巻を取りに行ってる間に風呂に入る。
「よし、これでいいだろう」
「ワゥ」
泡まみれになったアンジェロを洗い流そうとすると風呂の扉が開かれた。
「リッツ様! お背中、お流しします!」
「!?」
ニエはタオルを手に持ち、体はギリギリ湯気で隠れていたが小走りで近寄ってくる。
「ちょ、タオル! 体を隠せ!」
俺はすぐに目を逸らしアンジェロ用に準備していた大きめのタオルを投げつけた。
「もうそんなに恥ずかしがらなくても。リッツ様がそういうなら――はい、もう大丈夫ですよ」
恐る恐るニエへ視線を向けると両手を広げた体にタオルが巻かれている。
「ほらばっちりです。さ、洗いますよ~」
「ま、待て、さすがに自分で……そうだ、ニエはアンジェロを頼む」
「わかりました、あとは私が洗い流しましょう」
ニエがアンジェロを洗ってるうちに俺は大急ぎで体を洗い慌てて浴槽に入った。続いて入ってきたアンジェロが悠々と前を泳ぎ、後ろではニエの鼻歌が聞こえる。
師匠もよく乱入してきてたがニエもそのタイプなんだろうか。女性ってわからんな……。
「ふぅ~お風呂はいつ入っても気持ちがいいものですね」
「……ニエはなんでそんなに俺に執着するんだ? 村で聖人って聞いたからか?」
ニエは人差し指を立てた。
「そういえば皆さん、リッツ様のことをそう呼んでいましたね」
「何か期待してるのであれば申し訳ないが俺は普通の人間なんだ。アンジェロもたまたま助けただけで、神獣だなんて知らなかったし選ばれたわけでもないんだよ」
ニエはニコニコと笑顔を崩さない。
「リッツ様、偶然というのはありません。たまたまだとしても過去の結果が今に繋がった。それを人は運命と呼ぶのです」
「それでもだ、ニエだって見ず知らずの俺を好きだなんておかしいだろ」
「あら、タイプではありませんでしたか?」
「そうじゃなくてニエのほうがだな……」
容姿だけならこれほど整ったニエをノーと言える男は少ないだろう。だが気になる点が多すぎる。
色々と話を聞こうとするとアンジェロが浴槽から跳び出てブルブルと体の水を払う。
「私もそろそろのぼせちゃいそうなので、お先に失礼しますね」
ニエとアンジェロが出ていくと静かになった浴槽で思い返す。ニエは先祖代々神獣と共にいたと言っていた。
アンジェロのこともあるし、神獣について調べればニエのことも何かわかるかもしれない。
あいつに頼ってみるか……。
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