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36話

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 窓から差し込む光が朝を告げる。ふと手にサラサラとしたものを感じ目を開ける。

「ん……んんっ……」

 俺の目の前には光から逃げるように顔を布団に埋めるニエがいた。そしてニエが寝ていたはずのベッドにはなぜかアンジェロが寝ている。

 …………まさかとは思ったがこうも師匠に似ているとは。

 どうしたもんかと考えているとニエが目を覚まし、その蒼い瞳で俺をみつめた。

「ん……リッツ様、おはようございます」

 そういうとニエは再び瞼を閉じた。

「おい、寝るな。寝るなら自分のベッドで寝ろ」

 ぺちぺちと頬を叩くとニエは目を閉じたままこちらを向く。

「リッツ様が私を受け入れてくれたら目覚めましょう」

「馬鹿なことを言ってないで起きろって」

 布団を退けるとニエの寝巻が崩れており肌が露になる。

 まったく、ここまで師匠と同じとはな。

 アンジェロを起こすとニエの寝巻を直し、抱きかかえると隣のベッドに放り投げた。

「リッツ様、期待させておいて離すとはなかなかです」

「何がだよ……。疲れてるなら寝ててもいいが朝食を逃がすぞ」

「それはいけませんね。アンジェロ、起きますよ」

 すでに起きてるアンジェロに声を掛けると、ニエは立ち上がりハラリと寝巻を脱ぐ。俺は咄嗟にティーナたちがドレスを着替えるときに使うという移動式の目隠しで遮った。

 やると思ったぞ……。

「あら? リッツ様なら構いませんのに」

「俺も着替えるんだから覗くなよ」

 アンジェロが境目を行ったり来たりして遊んでいるうちに支度が終わると食堂へ向かう。挨拶を済ませ朝食を取ると俺は出掛けるため外に出た。

「――で、なんでここにいるんだ」

「私は常にリッツ様とありますから! さぁ、今日はどちらに向かいましょうか」

「夕前には帰るから自由にしてていいんだぞ。ほら、街に行きたいなら馬車もあるし」

「私の行きたいところはリッツ様がいる場所です!」

 ……仕方ない。ニエのことも話してたほうがいいだろうし連れていくか。

 アンジェロに乗り俺たちは城へと向かった。

「やぁ待たせたな。それで要件は……ん? 新顔か?」

 客室に入ってきたシリウスはニエを見る。

「妻のニエです!」

 笑顔で挨拶するニエを見て真顔のままシリウスは俺をみた。

「お前にも伴侶がいたのか」

「違う違う……。俺も詳しいことはわからないんだがどこからかやってきたみたいなんだ」

「頭でも打ったのだろうか。記憶が混迷しているのかもしれんな」

 シリウスは俺たちの前に座ると溜め息をついた。

「まったく、次から次へと厄介事が舞い込んで大変だよ。組織の件も調査を進めているが進捗が乏しくてねぇ」

「追い打ちをかけるようで悪いんだがどうやらニエは神獣と関係があるようなんだ。何か知ってることがあれば教えてほしい」

「……ふむ、ならば聞くよりも直接調べたほうが有力な情報を得られるだろう。ついてこい」

 長い廊下を歩く間、ニエは終始自分のことではないように笑顔を絶やさなかった。
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