45 / 150
45話 ミレイユサイド
しおりを挟む
城の中にある客間、そこにシリウス、ミレイユ、ニエの三人が座っていた。ニエは相変わらず笑顔だったが、シリウスとミレイユは眉一つ動かさずに机においてあった紙に目を通す。
「すまない、急に連れ出したりして」
「いいえ、私がリッツ様のお役に立てるのなら何も問題はありません」
笑顔のまま表情を崩さないニエをみたミレイユとシリウスは顔を合わせ頷く。
「君にはいくつか質問をさせてもらう。先に言っておくが私に嘘は通じない。だが、これは尋問ではない、答えたくなければ嘘をついても構わない。このことに関しては一切罰がないことを約束しよう」
「わかりました、私が知ってる範囲であればお答えします」
「それじゃあまず一つ目、君は『ヴェーダ』という組織を知っているか」
「知りません」
ユリウスは机に置いてある紙に何かを書き記す。
「それじゃあ次だ。君は神獣のことを知っているが話す必要がないと言っていたな。君にとっては小さなことかも知れないが私たちにとっての神獣とは未知の生物だ、詳しく教えてほしい」
「神獣とは神の使いであり選定者です。選定者である神獣に選ばれた者は、守護者となります」
「守護者……いったい何を守るというのだ」
「そのままの意味です。人には様々な守るべきものがありますよね。家族、愛する人、地位、財産、命、そして世界――このどれもが守護すべきものといっていいでしょう」
笑顔を崩さないまま淡々と話すニエを二人はジッとみる。
「ニエちゃん、あなたはどこからやってきたの」
「私はリッツ様を探すために旅をしていましたので、正確な住処というのは持ちません」
「あなたの家族や親戚はどこに?」
「すでに他界し、残った一族がどこかも私にはわかりません」
「……失礼したわね」
「お気になさらないでください」
シリウスは書類をまとめると立ち上がり、大きな外装を身に纏った。
「教会へ行く、戻るまで頼んだぞ」
「…………」
誰もいない部屋の隅に声を掛けるとミレイユとニエの下へ戻る。
「君たちに見せたいものがある。ついてきてくれ」
三人は立ち上がると教会の地下へと向かった。
◇
「……ここにあったのね」
「先代とそなたが面識があったとはな」
「元々は【ブレーオア】の先代国王が奴らを捕らえようとして【カルサス】にも協力してもらっていたのよ。あと一歩のところで逃げられてしまったんだけど、これはそのときアジトから見つけたの。【ブレーオア】にもあるわ」
「後ほど詳しく教えてくれ。とりあえず今は――君はこれを知っているか」
シリウスの言葉にそれまで笑顔だったニエは石碑にそっと手を触れると表情を変えた。
「これは古い歴史……そしてそれはまだ続いている。私はすべてを知るわけではありませんが、この石碑の裏に真実があると言い伝えられております」
「裏だと? ふむ……私ではこれを動かすことはできないからな……」
「私に任せて」
ミレイユが壁に指を掛けるとはめ込まれていた石碑はゆっくりと動き出す。壊れないように移動させると裏返す。
「……リッツが強い理由がわかった気がするよ」
シリウスが石碑を調べると小さく誰かが傷をつけたような跡を見つける。
「選ばれし者よ、神獣が守る聖域にて決断を下せ。我々はそれを以て答えとする……」
「一度考えてみる必要があるわね」
ほかには何もないことを確認すると三人は城へ戻った。
「すまない、急に連れ出したりして」
「いいえ、私がリッツ様のお役に立てるのなら何も問題はありません」
笑顔のまま表情を崩さないニエをみたミレイユとシリウスは顔を合わせ頷く。
「君にはいくつか質問をさせてもらう。先に言っておくが私に嘘は通じない。だが、これは尋問ではない、答えたくなければ嘘をついても構わない。このことに関しては一切罰がないことを約束しよう」
「わかりました、私が知ってる範囲であればお答えします」
「それじゃあまず一つ目、君は『ヴェーダ』という組織を知っているか」
「知りません」
ユリウスは机に置いてある紙に何かを書き記す。
「それじゃあ次だ。君は神獣のことを知っているが話す必要がないと言っていたな。君にとっては小さなことかも知れないが私たちにとっての神獣とは未知の生物だ、詳しく教えてほしい」
「神獣とは神の使いであり選定者です。選定者である神獣に選ばれた者は、守護者となります」
「守護者……いったい何を守るというのだ」
「そのままの意味です。人には様々な守るべきものがありますよね。家族、愛する人、地位、財産、命、そして世界――このどれもが守護すべきものといっていいでしょう」
笑顔を崩さないまま淡々と話すニエを二人はジッとみる。
「ニエちゃん、あなたはどこからやってきたの」
「私はリッツ様を探すために旅をしていましたので、正確な住処というのは持ちません」
「あなたの家族や親戚はどこに?」
「すでに他界し、残った一族がどこかも私にはわかりません」
「……失礼したわね」
「お気になさらないでください」
シリウスは書類をまとめると立ち上がり、大きな外装を身に纏った。
「教会へ行く、戻るまで頼んだぞ」
「…………」
誰もいない部屋の隅に声を掛けるとミレイユとニエの下へ戻る。
「君たちに見せたいものがある。ついてきてくれ」
三人は立ち上がると教会の地下へと向かった。
◇
「……ここにあったのね」
「先代とそなたが面識があったとはな」
「元々は【ブレーオア】の先代国王が奴らを捕らえようとして【カルサス】にも協力してもらっていたのよ。あと一歩のところで逃げられてしまったんだけど、これはそのときアジトから見つけたの。【ブレーオア】にもあるわ」
「後ほど詳しく教えてくれ。とりあえず今は――君はこれを知っているか」
シリウスの言葉にそれまで笑顔だったニエは石碑にそっと手を触れると表情を変えた。
「これは古い歴史……そしてそれはまだ続いている。私はすべてを知るわけではありませんが、この石碑の裏に真実があると言い伝えられております」
「裏だと? ふむ……私ではこれを動かすことはできないからな……」
「私に任せて」
ミレイユが壁に指を掛けるとはめ込まれていた石碑はゆっくりと動き出す。壊れないように移動させると裏返す。
「……リッツが強い理由がわかった気がするよ」
シリウスが石碑を調べると小さく誰かが傷をつけたような跡を見つける。
「選ばれし者よ、神獣が守る聖域にて決断を下せ。我々はそれを以て答えとする……」
「一度考えてみる必要があるわね」
ほかには何もないことを確認すると三人は城へ戻った。
44
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです
一色孝太郎
ファンタジー
前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。
これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。
※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します
※本作品は他サイト様でも同時掲載しております
※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ)
※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる