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58話
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俺たちが出発を決めた数日後、ファーデン家の庭では料理が並びパーティ会場のようになっていた。名目上は送別会という、中身は前回のお土産お披露目会をすることになったのだ。
貴族と『紅蓮の風』がこんなに和気あいあいとしてる姿は奇妙だな……。
「団長、今日くらい酒はいいですよね!?」
「許可する。だが迷惑だけはかけるなよ」
「もちろん! さぁ飲むぞー!」
男たちが歓喜の声をあげながら一目散に酒に向かって走っていった。
「リッツ殿、あれから色々とあったようだが今度は海を渡るとはな」
「あ、ギルバートさん。こんなに大勢で押しかけて場所までお借りしてすいません」
「はっはっは! 気にするな、屋敷の者も皆喜んでおるぞ。聖人様が何かやらかすとな」
ギルバートさんは笑い声をあげ手に持ったお酒を飲む。
……ファーデン家で俺の扱いってどうなってるんだ……。
みんなに挨拶を済ませ、ほんの少し飲み食いをしているとあっという間に日が落ちる。
「そろそろ始めようと思うので全員集まってくださーい!!」
使用人のみんなも今ばかりは手を休め集まってくる。
「それじゃあ行きますよー」
ニエに火を点けてもらうと導火線が少し進むのを待ち鉱石を空に投げつけた。時計塔で見たときほどではないが、小さな爆発が起きるとキラキラと鉱石が燃え尽きていく。
「おー……綺麗……」
誰ともつかない声が一斉に聞こえてくると次は何個か連続で投げる。夜空に時間差で光が起きるとキラキラと広がっていく。
「これを見ながら飲む酒も乙だな……。おい、誰かリッツと変わってやったらどうだ」
「うぃ~おっしゃ~! 俺がやってやるぜぇ~ニエちゃん見ててくれよぉ!?」
男が鉱石を持ちニエが火を点けると、足元はしっかりしてるはずなのに不安がよぎる。
「……ニエ、こっちにきてろ」
ニエの肩を掴み俺の後ろに立たせる。
「お前らいくぞ、みてろよぉー!?」
「おい、いいから早く投げろッ!!」
周りが騒ぎ出し徐々に導火線が短くなるなか、男が大きく振りかぶった。
「お、おろっ?」
男の足がふらついた瞬間手から鉱石が滑り落ちていく。
「ッ!?」
「――ちぇすとおおおおおおおおお!!」
俺は鉱石を蹴り上げると上空近くで爆発が起きる。
「お~こりゃあ見事なもんだぜぇ」
男は酒を呷り気楽に光を眺めていた。
「…………て、てめぇ俺たちを殺す気か! こいつから酒を取れ! これ以上何かあったら団長に殺される!!」
男はみんなに連行されていき、ある程度楽しむと最後に大きな鉱石が二つ残る。
「それじゃ最後はウェッジさんと――師匠、お願いします」
「おっ? 俺か」
「私はいいわ。ウェッジ、やってあげて」
「おい何を言ってんだ。弟子からのお願いくらい聞いてやるのが師匠ってもんだろ?」
ウェッジさんがいうと師匠は頭を掻きながら歩いてきた。
「よっしゃ、いっちょ俺の力をみせてやるぜ」
「副団長ー期待してるぜー!」
「ここでみせなきゃ降格するかもしんねぇぞー! いい加減その座を渡せー!!」
妙に野次が混ざっている気もするが、ウェッジさんが鉱石を受け取るとニエが火を点ける。
「そらよッ!!」
ウェッジさんが投げた鉱石は天高く上がり、爆発すると円を描くように光の輪ができた。
「こりゃあすげぇ……」
「なんであんな光になってんだ? 細工でもしたのか」
みんなが疑問に思ってるが近くで見ていた俺はウェッジさんのしたことをみていた。
急回転を掛けて爆発の軌道を変える……そもそも爆発したあとまで残る回転とかどんなんだよ……この人も相変わらずだなぁ。
「さぁ最後は団長だ、頼みましたぜ」
「……ったく、私はこういうのが苦手なんだ……」
師匠が鉱石を手に取るとニエが火を点ける。
「師匠、そんなに気を張らないで。俺を見送ると思ってやっちゃってください」
「リッツ……そうね」
師匠は空を見上げると鉱石を投げ飛ばす。
――あ、ほどほどにっていうの忘れた。
鉱石はあっという間に空を駆け上がると見えなくなりそして小さな光が見えた。
「……星になったな」
「……き、綺麗な一番星じゃねぇか」
「リッツ、お前戻ってこれるのか……?」
ざわざわと『紅蓮の風』が不穏な空気を出していく。
「し、師匠、俺、ちゃんと帰ってきますから安心してください!」
「誰がお前の心配など……するかあああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「お、おいこっちへくるな! うわああああああああ!!」
こうして俺はまだ見ぬ草を求め旅立ったのであった。
貴族と『紅蓮の風』がこんなに和気あいあいとしてる姿は奇妙だな……。
「団長、今日くらい酒はいいですよね!?」
「許可する。だが迷惑だけはかけるなよ」
「もちろん! さぁ飲むぞー!」
男たちが歓喜の声をあげながら一目散に酒に向かって走っていった。
「リッツ殿、あれから色々とあったようだが今度は海を渡るとはな」
「あ、ギルバートさん。こんなに大勢で押しかけて場所までお借りしてすいません」
「はっはっは! 気にするな、屋敷の者も皆喜んでおるぞ。聖人様が何かやらかすとな」
ギルバートさんは笑い声をあげ手に持ったお酒を飲む。
……ファーデン家で俺の扱いってどうなってるんだ……。
みんなに挨拶を済ませ、ほんの少し飲み食いをしているとあっという間に日が落ちる。
「そろそろ始めようと思うので全員集まってくださーい!!」
使用人のみんなも今ばかりは手を休め集まってくる。
「それじゃあ行きますよー」
ニエに火を点けてもらうと導火線が少し進むのを待ち鉱石を空に投げつけた。時計塔で見たときほどではないが、小さな爆発が起きるとキラキラと鉱石が燃え尽きていく。
「おー……綺麗……」
誰ともつかない声が一斉に聞こえてくると次は何個か連続で投げる。夜空に時間差で光が起きるとキラキラと広がっていく。
「これを見ながら飲む酒も乙だな……。おい、誰かリッツと変わってやったらどうだ」
「うぃ~おっしゃ~! 俺がやってやるぜぇ~ニエちゃん見ててくれよぉ!?」
男が鉱石を持ちニエが火を点けると、足元はしっかりしてるはずなのに不安がよぎる。
「……ニエ、こっちにきてろ」
ニエの肩を掴み俺の後ろに立たせる。
「お前らいくぞ、みてろよぉー!?」
「おい、いいから早く投げろッ!!」
周りが騒ぎ出し徐々に導火線が短くなるなか、男が大きく振りかぶった。
「お、おろっ?」
男の足がふらついた瞬間手から鉱石が滑り落ちていく。
「ッ!?」
「――ちぇすとおおおおおおおおお!!」
俺は鉱石を蹴り上げると上空近くで爆発が起きる。
「お~こりゃあ見事なもんだぜぇ」
男は酒を呷り気楽に光を眺めていた。
「…………て、てめぇ俺たちを殺す気か! こいつから酒を取れ! これ以上何かあったら団長に殺される!!」
男はみんなに連行されていき、ある程度楽しむと最後に大きな鉱石が二つ残る。
「それじゃ最後はウェッジさんと――師匠、お願いします」
「おっ? 俺か」
「私はいいわ。ウェッジ、やってあげて」
「おい何を言ってんだ。弟子からのお願いくらい聞いてやるのが師匠ってもんだろ?」
ウェッジさんがいうと師匠は頭を掻きながら歩いてきた。
「よっしゃ、いっちょ俺の力をみせてやるぜ」
「副団長ー期待してるぜー!」
「ここでみせなきゃ降格するかもしんねぇぞー! いい加減その座を渡せー!!」
妙に野次が混ざっている気もするが、ウェッジさんが鉱石を受け取るとニエが火を点ける。
「そらよッ!!」
ウェッジさんが投げた鉱石は天高く上がり、爆発すると円を描くように光の輪ができた。
「こりゃあすげぇ……」
「なんであんな光になってんだ? 細工でもしたのか」
みんなが疑問に思ってるが近くで見ていた俺はウェッジさんのしたことをみていた。
急回転を掛けて爆発の軌道を変える……そもそも爆発したあとまで残る回転とかどんなんだよ……この人も相変わらずだなぁ。
「さぁ最後は団長だ、頼みましたぜ」
「……ったく、私はこういうのが苦手なんだ……」
師匠が鉱石を手に取るとニエが火を点ける。
「師匠、そんなに気を張らないで。俺を見送ると思ってやっちゃってください」
「リッツ……そうね」
師匠は空を見上げると鉱石を投げ飛ばす。
――あ、ほどほどにっていうの忘れた。
鉱石はあっという間に空を駆け上がると見えなくなりそして小さな光が見えた。
「……星になったな」
「……き、綺麗な一番星じゃねぇか」
「リッツ、お前戻ってこれるのか……?」
ざわざわと『紅蓮の風』が不穏な空気を出していく。
「し、師匠、俺、ちゃんと帰ってきますから安心してください!」
「誰がお前の心配など……するかあああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「お、おいこっちへくるな! うわああああああああ!!」
こうして俺はまだ見ぬ草を求め旅立ったのであった。
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