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59話
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鳥の群れが海に影を作っているとその中を大きな船が突き進んでいた。かなりの速度が出ているはずだがそれほど速く感じないのは広大過ぎる広さゆえだろう。商人や客たちは船に乗ると甲板で景色を堪能していた。
そんななか俺はというと――――。
「おっ……おぇぇ……」
「クゥーン……」
アンジェロが歩き回り俺が寝ているベッドに顔を乗せては心配そうに覗き込んでくる。
「リッツ様、お水をお持ち致しますか?」
「あ、あぁ……すまんが頼む……」
甘くみていた……まさかこれほど揺れるとは……。
唯一の救いといえばアンジェロとニエしかこの部屋にいないことだ。ただの船酔いだから余計な心配をされる必要もわざわざ気を遣う必要もない。二人には大変申し訳ないが、俺抜きで船を楽しんでもらおう。
「リッツ様、お水です」
ニエから水を受け取ると一口飲み、ベッドのすぐ横に備えられている机に置く。
「ふぅ……ありがとう。俺はもう少し横になってるから二人で海でも見てくるといい」
あぁまだ揺れている……ダメだ、吐きそう……。
俺はすぐに横になり眼を閉じた。
◇
何かの音に意識が戻る。
ぐっすり休んでたおかげで幾分かマシになったみたいだ。
「こらっ、静かにしなきゃダメでしょ」
「ワフッ」
顔を向けてみるとニエが膝をつきアンジェロに人差し指を立てていた。
「……ずっといたのか?」
ニエは笑顔のまま何も言わず俺をみる。
「ったく、せっかくの海だっていうのに……今からでも見に行ってみるか」
アンジェロを撫でると立ち上がり甲板へ出た。
「あらら。真っ暗だ」
これじゃあ景色を楽しみようもないな。
「リッツ様、月がとても綺麗です!」
呼ばれて向かってみるとニエは海を見下ろしていた。
「お~……こりゃあ綺麗だな!」
月が海に反射しゆらゆらと動いている。
何度か水に反射してるのはみたことあったが、海だとこんな風に見えるんだな。
アンジェロを抱き月を見せる。
「どうだ、すごいだろう?」
「ワン! ワン!」
アンジェロは上下の月を忙しそうに見ていた。
「リッツ様……私……」
隣で月をジッと見詰めていたニエは静かに何かを言おうとしたが俺はすぐに分かった。
「わかってる……俺もだ……」
アンジェロを降ろし改めて月を見る。
「……腹、減ったな」
「はい」
俺たちは食堂へ向かい色々な海の幸を堪能すると、最後にもう一度月を見に行く。
「目玉焼きにも近いがやっぱり饅頭に見えるな……」
「私もです。饅頭の皮が包み紙にくっ付いて取れちゃったみたいな」
「あーわかる。ちょっとだけイラっとくるんだよなぁ」
「ワフッ」
そんなしょうもないことを確認すると俺たちは部屋に戻り眠りについた。
そんななか俺はというと――――。
「おっ……おぇぇ……」
「クゥーン……」
アンジェロが歩き回り俺が寝ているベッドに顔を乗せては心配そうに覗き込んでくる。
「リッツ様、お水をお持ち致しますか?」
「あ、あぁ……すまんが頼む……」
甘くみていた……まさかこれほど揺れるとは……。
唯一の救いといえばアンジェロとニエしかこの部屋にいないことだ。ただの船酔いだから余計な心配をされる必要もわざわざ気を遣う必要もない。二人には大変申し訳ないが、俺抜きで船を楽しんでもらおう。
「リッツ様、お水です」
ニエから水を受け取ると一口飲み、ベッドのすぐ横に備えられている机に置く。
「ふぅ……ありがとう。俺はもう少し横になってるから二人で海でも見てくるといい」
あぁまだ揺れている……ダメだ、吐きそう……。
俺はすぐに横になり眼を閉じた。
◇
何かの音に意識が戻る。
ぐっすり休んでたおかげで幾分かマシになったみたいだ。
「こらっ、静かにしなきゃダメでしょ」
「ワフッ」
顔を向けてみるとニエが膝をつきアンジェロに人差し指を立てていた。
「……ずっといたのか?」
ニエは笑顔のまま何も言わず俺をみる。
「ったく、せっかくの海だっていうのに……今からでも見に行ってみるか」
アンジェロを撫でると立ち上がり甲板へ出た。
「あらら。真っ暗だ」
これじゃあ景色を楽しみようもないな。
「リッツ様、月がとても綺麗です!」
呼ばれて向かってみるとニエは海を見下ろしていた。
「お~……こりゃあ綺麗だな!」
月が海に反射しゆらゆらと動いている。
何度か水に反射してるのはみたことあったが、海だとこんな風に見えるんだな。
アンジェロを抱き月を見せる。
「どうだ、すごいだろう?」
「ワン! ワン!」
アンジェロは上下の月を忙しそうに見ていた。
「リッツ様……私……」
隣で月をジッと見詰めていたニエは静かに何かを言おうとしたが俺はすぐに分かった。
「わかってる……俺もだ……」
アンジェロを降ろし改めて月を見る。
「……腹、減ったな」
「はい」
俺たちは食堂へ向かい色々な海の幸を堪能すると、最後にもう一度月を見に行く。
「目玉焼きにも近いがやっぱり饅頭に見えるな……」
「私もです。饅頭の皮が包み紙にくっ付いて取れちゃったみたいな」
「あーわかる。ちょっとだけイラっとくるんだよなぁ」
「ワフッ」
そんなしょうもないことを確認すると俺たちは部屋に戻り眠りについた。
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