エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬

文字の大きさ
76 / 150

76話

しおりを挟む
「――あ、先生! お久しぶりでブハッ!!」

 俺のほうを余所見したユリウスの顔面に剣が刺さる。

「お~余所見したせいで今お前は死んだぞ。模造刀でよかったなぁ」

「し、師匠……挨拶くらいさせてくれても……」

「躱しながら挨拶すればいい、あいつらみたいに」

 ウェッジさんがミレイユ師匠にしごかれている団員を指す。

「ふぁぁああああああああリッツじゃねえええええかぁーーー!!」

「お、お前こっちにくんじゃねえええええええ! おおああああリッツじゃねぇえかー!?」

「最近サボってばっかで鈍ってんじゃ――ああああああああああねぇのかああああ!!」

 恐怖に叫びながらわざわざ声を掛けてくれているが、一手遅れた人から師匠にぶっ飛ばされ宙を舞う。

 おー見事なやられっぷり……。みんなの姿を見るのもなんだか久しぶりだな。

 懐かしい光景を眺めていると恐る恐るユリウスがウェッジさんをみた。

「全然躱せていないように見えるのですが……」

「当たり前だ、躱せたら鍛錬にならないだろ」

 ユリウスが茫然とする中、全員がぶっ飛ばされたのを確認し師匠の下へ向かう。

「師匠、久しぶりに手合わせをお願いしていいですか」

「あら、どうしたの急に」

「勘を取り戻したいのと、この服の性能を確認したいんです」

「わかったわ」

 息一つ切らしていない師匠から俺は少し離れ構える。

「それじゃいきます」

 師匠に向かって距離を詰めると拳をぶつけた。その瞬間、受けた師匠の掌から乾いた破裂音が聞こえる。

「これは……打撃というよりも衝撃の増加ってとこかしら?」

「次いきます」

 俺は蹴りを出すと師匠は腕で防御する。

「これも相当な威力、普通なら骨が折れるわね」

 一通り攻撃をすると俺は距離を取り構えを変えた。

「攻めはなかなか、次は防御面ね――」

 師匠が一瞬で間合いを詰めると俺の腹に拳が当たる。その瞬間、凄まじい衝撃波が起き俺は体が宙に浮いた。

「ぐぅ……ッ!」

 着地をすると思っていたよりも衝撃が少なかったことに気付く。

「なるほど、強い衝撃ほど跳ね返す力も跳ね上がるってことね」

「――師匠ッ!? 手が!!」

 師匠の俺を打った拳は出血していた。

「すぐ薬を出します!」

「これくらい平気よ。それより、その程度で私に勝ったと思った?」

 師匠は構え直した俺に向かって同じ拳で打ってきた。だが、今度は俺の体を浮かせることはなく、背中から何かが突き抜けたと思うと吐き気が迫ってくる。

「ぐっ……お、おええぇ……っ」

 な、なんだ今の…………。

「いくら最高の鎧だろうと中は生身、外がダメなら内からってね」

 師匠はどうだと言わんばかりの笑顔を見せている。よっぽどダメージが大きかったのか、なかなか立ち上がれない俺に向かって師匠は声を掛けてくる。

「この程度で倒れちゃダメ。ほら、教えたでしょ。どんなときでも呼吸は正しく苦しいときこそ全身を使ってするのよ」

 必死に息を整え立ち上がると今度は横蹴りがくる。

「ぐううぅ……ッ!」

「あなたはそろそろダメージを受け流せるようにしなきゃね。まずは内に響くその痛みに慣れなさい。次にそれを外へ逃がしてあげるのよ」

 足の踏ん張りがきかず何を言われているのかもわからない俺に攻撃が次々にとんでくる。

「相変わらずリッツには容赦ねぇ……」

「昔、俺も食らったことあるけどまじでやべーんだよあれ」

「一発食らっただけで足がぷるぷるしてたもんな。あんときは笑って悪かったぜ」

 周りで笑い声やユリウスの悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は師匠に一発も返すことができないまま地面に倒れた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

処理中です...