75 / 150
75話
しおりを挟む
ハリスさんの仕事っぷりは予想以上に凄かった。村で手の空いてる人たちを集めるという条件から収穫前の暇な農家を選び出し、その中で貴族を話題に出してもほとんど関心がなさそうな人たちを選んでいた。
賃金に関しても役割によって決め、労働期間は収穫が始まる前の準備期間も含めて短く設定、複数の宿を数部屋ずつ貸し切る徹底ぶりだった。
おかげで船の周りはどんどん整備されていき俺は畑に集中することができている。
「こらアンジェロ! サボるんじゃない!」
「ワフッ?」
「リッツ様、こちらの水撒きは終わりました」
「よし、このくらい広げておけば教会の分は十分だろう」
リヤンはなんだかんだ手伝ってくれるし、ニエの手際もいいおかげで進むのが早い、もう少しかかると思ったがあっという間だったな。
「みんなありがとう。そろそろお昼にするから先に身体を洗ってきてくれ」
「ふぅ~明るいうちから汗を流すというのもいいものだ」
「ははは、それも一つの楽しみかもしれないな」
「それじゃあ私はリッツ様と片付けてから入るのでリヤンさんは先にアンジェロと一緒に」
「お前も行ってこい。リヤン、ニエを頼むぞ」
「……お主らはいつまで経っても懲りないな」
片付けも終わり昼食を済ませると恒例のアレがやってくる。
「リッツ様、本日の午後のご予定はございません」
そうだね、あるわけないね!
「ありがとうハリス」
俺が手を挙げるとハリスが下がる。
「……リッツよ、毎回思うのだがこれは必要なのか?」
「もちろんさ。俺たちが忘れているスケジュールがあるかもしれないからね」
「まぁなんだっていいがいつ動きがあるかわからんのだ。ちゃんと備えておけよ」
「任せておけって、空いた時間を使ってエリクサーやいろんな薬を増産したからな。人手さえあれば国一つは救えるぞ」
初めはリヤンの兄を探そうと考えたがあの神獣がいる限り行動範囲がわからない、だったら今は騒ぎが起きるのに備えるしかないという結論になっていた。
そのおかげで草をゴリゴリしたり素晴らしい時間を過ごせたわけだ。
「時々部屋に籠って何をしているかと思えば……いや、そのくらいは覚悟しておいたほうがいいかもしれない」
「――だろ? 穢れをうつされた人だって救えることがわかったんだ」
「あのねぇ、前にも言ったけど私たちは不死の呪いがあるからなんとかなってただけで、本来、穢れは生命そのものを栄養としているから一度でも穢れた者は助からないの。それなのに当たり前のように回復させて……古い時代にエリクサーがあったら世界は変わってたかもしれない……」
「そんな大層なことをいっても所詮は回復薬だぞ。死んだ人は蘇らせられないし、不死にもならないからな」
「そう言い切れるのがおかしいって――まぁいいわ。それで今日はどうするの?」
「ん~最近鍛錬をしていなかったからみんなに混ざろうと思う。この服の性能も見てみたいし、今日は城の鍛錬場を借りてるはずだから模擬戦をやってるかもしれない」
服の限界を知っておかないといざというとき危険だからな。
「リッツ様の活躍をみれるのですね」
「それは残念ながらないだろう。師匠に色々とみてもらう予定だから、ボコボコにされるかもしれん」
「それでも立ち上がるリッツ様、素敵です」
「できれば観ないでほしいんだけど……まぁ死にかけたところを見られてるし今更か」
「はい、今更です!」
「リヤンはどうする?」
「せっかくだし私もついていこう。『紅蓮の風』がどれほどのものか見てみたい」
「よし、それじゃあ俺たちは出掛けてくるから何かあれば頼んだよ」
「かしこまりました」
ハリスに見送られ俺たちは城の鍛錬場へ向かった。扉の奥からは相変わらず悲鳴にも似た声が響いていた。
賃金に関しても役割によって決め、労働期間は収穫が始まる前の準備期間も含めて短く設定、複数の宿を数部屋ずつ貸し切る徹底ぶりだった。
おかげで船の周りはどんどん整備されていき俺は畑に集中することができている。
「こらアンジェロ! サボるんじゃない!」
「ワフッ?」
「リッツ様、こちらの水撒きは終わりました」
「よし、このくらい広げておけば教会の分は十分だろう」
リヤンはなんだかんだ手伝ってくれるし、ニエの手際もいいおかげで進むのが早い、もう少しかかると思ったがあっという間だったな。
「みんなありがとう。そろそろお昼にするから先に身体を洗ってきてくれ」
「ふぅ~明るいうちから汗を流すというのもいいものだ」
「ははは、それも一つの楽しみかもしれないな」
「それじゃあ私はリッツ様と片付けてから入るのでリヤンさんは先にアンジェロと一緒に」
「お前も行ってこい。リヤン、ニエを頼むぞ」
「……お主らはいつまで経っても懲りないな」
片付けも終わり昼食を済ませると恒例のアレがやってくる。
「リッツ様、本日の午後のご予定はございません」
そうだね、あるわけないね!
「ありがとうハリス」
俺が手を挙げるとハリスが下がる。
「……リッツよ、毎回思うのだがこれは必要なのか?」
「もちろんさ。俺たちが忘れているスケジュールがあるかもしれないからね」
「まぁなんだっていいがいつ動きがあるかわからんのだ。ちゃんと備えておけよ」
「任せておけって、空いた時間を使ってエリクサーやいろんな薬を増産したからな。人手さえあれば国一つは救えるぞ」
初めはリヤンの兄を探そうと考えたがあの神獣がいる限り行動範囲がわからない、だったら今は騒ぎが起きるのに備えるしかないという結論になっていた。
そのおかげで草をゴリゴリしたり素晴らしい時間を過ごせたわけだ。
「時々部屋に籠って何をしているかと思えば……いや、そのくらいは覚悟しておいたほうがいいかもしれない」
「――だろ? 穢れをうつされた人だって救えることがわかったんだ」
「あのねぇ、前にも言ったけど私たちは不死の呪いがあるからなんとかなってただけで、本来、穢れは生命そのものを栄養としているから一度でも穢れた者は助からないの。それなのに当たり前のように回復させて……古い時代にエリクサーがあったら世界は変わってたかもしれない……」
「そんな大層なことをいっても所詮は回復薬だぞ。死んだ人は蘇らせられないし、不死にもならないからな」
「そう言い切れるのがおかしいって――まぁいいわ。それで今日はどうするの?」
「ん~最近鍛錬をしていなかったからみんなに混ざろうと思う。この服の性能も見てみたいし、今日は城の鍛錬場を借りてるはずだから模擬戦をやってるかもしれない」
服の限界を知っておかないといざというとき危険だからな。
「リッツ様の活躍をみれるのですね」
「それは残念ながらないだろう。師匠に色々とみてもらう予定だから、ボコボコにされるかもしれん」
「それでも立ち上がるリッツ様、素敵です」
「できれば観ないでほしいんだけど……まぁ死にかけたところを見られてるし今更か」
「はい、今更です!」
「リヤンはどうする?」
「せっかくだし私もついていこう。『紅蓮の風』がどれほどのものか見てみたい」
「よし、それじゃあ俺たちは出掛けてくるから何かあれば頼んだよ」
「かしこまりました」
ハリスに見送られ俺たちは城の鍛錬場へ向かった。扉の奥からは相変わらず悲鳴にも似た声が響いていた。
23
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです
一色孝太郎
ファンタジー
前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。
これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。
※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します
※本作品は他サイト様でも同時掲載しております
※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ)
※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる