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89話
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森の中は国境というのが曖昧になっており国同士で決めた目印や地図に記載など、あるにはあるのだがそれでもすべての境界線をはっきりさせるのは難しい。
「リッツ様、お茶はいかがですか」
「ありがとう、アンジェロも飲むか?」
「ワフッ!」
俺たちは山の高い位置に陣取り昼食を取りながら馬車を見下ろしていた。
「お、これは魚のほぐし身か。塩気があって美味しいな~」
「うふふ、そういって頂けると作った甲斐がありました」
ニエが作ってくれたおにぎりという料理には様々な具が入っており、動きながらでも食べられるというこの形はとても理に適っている。
いつもなら非常食を食べていたが、俺の鞄に弁当やおにぎりを入れておけばいつでも作り立てを食べられる――それを思い出したのは早朝、ニエにおにぎりを渡されたときだった。
そもそも料理を入れておくという発想がなかったとはいえない……。
「お天気もよくて美味しいですね!」
「ワン!」
すぐに動けるようアンジェロは大きくなったままだが相変わらず食いっぷりがすごい。ニエもほんわかとお茶を飲んでいる。まぁ、カラッとした天気に出来立てのおにぎり、気が緩んでしまうのは仕方がないが――。
「二人共、いつ何が起こるかわからないんだ。警戒を怠るなよ」
「はい! リッツ様、ご飯粒がお口に」
「えっ、どこ?」
「ここです、もう少し左――取れました!」
「ワフッ」
「アンジェロは……仕方ない、あとで洗おう」
しかし本当に美味い……ふぅ……。
男性と男を乗せた馬車は森を抜けようとしているため速度はそれほど出ていない。のんびりとお茶を啜っているとニエが遠くをみる。
「リッツ様、向こうから馬が数頭と馬車が来てるようです」
「相変わらずよく見えるな~俺にはさっぱりだ」
アンジェロが立ち上がりあっちだよと教えるように俺を振り向く。
んーそもそも木が邪魔でみえない。あっ、今一瞬だけ何か見えたような……気がする。
「まだ距離もあるようだし食べ終わったら準備しよう」
「はい。ところで仲間がいるって言ってましたが、どなたでしょうか」
「そういえばニエは会ったことがなかったな。変装というか人に化ける達人でね。今回は潜入がメインだから、シリウスにお願いして協力してもらってるんだ」
「ということはあの二人のどちらかということですね」
ニエは男性が乗る馬車に同乗している二人をみた。
「あぁ、だから俺たちは後始末と補佐がメインだ」
アンジェロの顔を洗うと馬車が合流する地点に先回りし身を潜めた。
「やっと来たか、リモン様も少し慎重が過ぎると思うんだがなぁ」
「あのくらいだからこそ商会をここまでデカく出来たんだろ」
男たちが会話をしていると外装を羽織った人物が遮る。
「お前らの事情なんてどうでもいい、それよりも薬草は持ってきたんだろうな?」
「ちゃ~んと指示通り持ってきてやったよ。それより、そっちこそ組織に入れてくれる話はどうなんだ。リモン様もいい加減動きがないと薬草を送れなくなると言ってるぞ」
「それはお前らの働き次第だ」
「なんだとてめぇ!?」
男が突っかかっていくともう一人の男が止めに入る。
「待て、そんなことだろうと思ってリモン様から特別な草を預かっている」
「はぁ? 俺はそんなこと聞いてねぇぞ」
「来る直前に言われたんだ。たまたま俺が近くにいたってだけだから気にするな」
男は袋から世界樹の葉に似た草を出すと、それをみた俺は少しだけ身を乗り出した。
「あ、あれは……!」
「リッツ様が島で見つけた新種の草ですね」
そう、あれこそ俺が【ザーフニーゼン】で見つけた新種の草――その名も『クサモドキ』!
俺も驚いたが草のはずなのにモドキとついているのだ。あの草のすごいところは姿形は実際にある草と微妙に違うくらいで、色々な草を真似ているところ。
ちなみに馬車が運んでいるのはほぼすべてが薬草に似たクサモドキだ。
そして効果はというと……何もない。似ても焼いても、調合しても、薬にもならないし毒にもならない。言うなれば雑草だ。
まぁ食べれば一応草だから腹の足しにはなると思うけど。
大量にあったクサモドキから、まさか世界樹の葉に似ている草を見つけたときは大喜びだったな~。
「……見たこともない草だな」
「なんでも聖人が持っていたとっておきらしい。これをやるのは組織加入が条件だ」
「ちょっと待て、お前だけずりぃぞ!!」
「そっちの都合はどうでもいいからさっさと荷物を移せ」
「ちっ、おい、お前も働くんだよ!」
男の一人が男性に言い放つと三人は荷を運ぶ。
「リッツ様、お茶はいかがですか」
「ありがとう、アンジェロも飲むか?」
「ワフッ!」
俺たちは山の高い位置に陣取り昼食を取りながら馬車を見下ろしていた。
「お、これは魚のほぐし身か。塩気があって美味しいな~」
「うふふ、そういって頂けると作った甲斐がありました」
ニエが作ってくれたおにぎりという料理には様々な具が入っており、動きながらでも食べられるというこの形はとても理に適っている。
いつもなら非常食を食べていたが、俺の鞄に弁当やおにぎりを入れておけばいつでも作り立てを食べられる――それを思い出したのは早朝、ニエにおにぎりを渡されたときだった。
そもそも料理を入れておくという発想がなかったとはいえない……。
「お天気もよくて美味しいですね!」
「ワン!」
すぐに動けるようアンジェロは大きくなったままだが相変わらず食いっぷりがすごい。ニエもほんわかとお茶を飲んでいる。まぁ、カラッとした天気に出来立てのおにぎり、気が緩んでしまうのは仕方がないが――。
「二人共、いつ何が起こるかわからないんだ。警戒を怠るなよ」
「はい! リッツ様、ご飯粒がお口に」
「えっ、どこ?」
「ここです、もう少し左――取れました!」
「ワフッ」
「アンジェロは……仕方ない、あとで洗おう」
しかし本当に美味い……ふぅ……。
男性と男を乗せた馬車は森を抜けようとしているため速度はそれほど出ていない。のんびりとお茶を啜っているとニエが遠くをみる。
「リッツ様、向こうから馬が数頭と馬車が来てるようです」
「相変わらずよく見えるな~俺にはさっぱりだ」
アンジェロが立ち上がりあっちだよと教えるように俺を振り向く。
んーそもそも木が邪魔でみえない。あっ、今一瞬だけ何か見えたような……気がする。
「まだ距離もあるようだし食べ終わったら準備しよう」
「はい。ところで仲間がいるって言ってましたが、どなたでしょうか」
「そういえばニエは会ったことがなかったな。変装というか人に化ける達人でね。今回は潜入がメインだから、シリウスにお願いして協力してもらってるんだ」
「ということはあの二人のどちらかということですね」
ニエは男性が乗る馬車に同乗している二人をみた。
「あぁ、だから俺たちは後始末と補佐がメインだ」
アンジェロの顔を洗うと馬車が合流する地点に先回りし身を潜めた。
「やっと来たか、リモン様も少し慎重が過ぎると思うんだがなぁ」
「あのくらいだからこそ商会をここまでデカく出来たんだろ」
男たちが会話をしていると外装を羽織った人物が遮る。
「お前らの事情なんてどうでもいい、それよりも薬草は持ってきたんだろうな?」
「ちゃ~んと指示通り持ってきてやったよ。それより、そっちこそ組織に入れてくれる話はどうなんだ。リモン様もいい加減動きがないと薬草を送れなくなると言ってるぞ」
「それはお前らの働き次第だ」
「なんだとてめぇ!?」
男が突っかかっていくともう一人の男が止めに入る。
「待て、そんなことだろうと思ってリモン様から特別な草を預かっている」
「はぁ? 俺はそんなこと聞いてねぇぞ」
「来る直前に言われたんだ。たまたま俺が近くにいたってだけだから気にするな」
男は袋から世界樹の葉に似た草を出すと、それをみた俺は少しだけ身を乗り出した。
「あ、あれは……!」
「リッツ様が島で見つけた新種の草ですね」
そう、あれこそ俺が【ザーフニーゼン】で見つけた新種の草――その名も『クサモドキ』!
俺も驚いたが草のはずなのにモドキとついているのだ。あの草のすごいところは姿形は実際にある草と微妙に違うくらいで、色々な草を真似ているところ。
ちなみに馬車が運んでいるのはほぼすべてが薬草に似たクサモドキだ。
そして効果はというと……何もない。似ても焼いても、調合しても、薬にもならないし毒にもならない。言うなれば雑草だ。
まぁ食べれば一応草だから腹の足しにはなると思うけど。
大量にあったクサモドキから、まさか世界樹の葉に似ている草を見つけたときは大喜びだったな~。
「……見たこともない草だな」
「なんでも聖人が持っていたとっておきらしい。これをやるのは組織加入が条件だ」
「ちょっと待て、お前だけずりぃぞ!!」
「そっちの都合はどうでもいいからさっさと荷物を移せ」
「ちっ、おい、お前も働くんだよ!」
男の一人が男性に言い放つと三人は荷を運ぶ。
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