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98話 ミレイユサイド
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「どうしました? 私じゃ本気を出すまでもないと?」
「ちっ……ジリ貧だな!」
ウェッジの目の前では男が宙で止まっており、見えない足場を蹴ると襲い掛かる。ウェッジは避けると同時に周りで戦っている仲間に石を投げ、石は何かにぶつかると砕け散った。
「かぁー面倒くせぇ! お前のスキルはわかった、いい加減サシで勝負したらどうだ」
「先ほどから一対一のつもりですが? あなたこそ仲間を気に掛け過ぎじゃないですか」
「団長に誰一人死なせるなって言われてるんだよ」
「まったく、足手まといがいると大変ですねぇ」
悪びれる様子もなく攻撃を繰り返し、ウェッジはひたすら何かから味方を守っていたが、女と戦っていた兵がついに何かにぶつかるとその場に倒れる。
「あら、余計なことを……ま、とりあえずやっと一人目ね」
兵に刃が迫ったとき、上から人が落ちてくると女はすぐさま距離をとった。土煙を上げ着地した男は紅い服を纏い、その人物はその場にいる誰よりも悪党面をしていた。
「よぉ副団長! 危なかったなぁー!」
「マーリー!!」
マーリーと呼ばれた男はウェッジに上を見るように合図すると、騎士団の団長と男が戦っている真上に大きな影ができる。
「な、なんだあれは…………」
誰かが放った言葉の先には、そこにあるはずのない船が飛んでおり、横から垂れ下がった紐からは鎧をきたクラーツが男の前に飛び降りてきた。
「紅い鎧……船が浮いてると思ったら今度は『紅蓮の風』が降ってくるとはなぁ」
「副団長、遅くなりました」
「いいや、最高のタイミングだ。騎士団は全員下がれ、ここからは俺たちがやる」
「し、しかし……」
「全員大至急下がれ!! 我々では足手まといだ!」
騎士団の団長が大きな声で命令すると一斉に兵は前線を退いた。
「さぁてこっからは俺たちが相手してやるぜぇ」
「あら、『紅蓮の風』には絶世の美女がいると聞いてたけど賊も付いてるのね」
「がっはっはっは! 賊すら惹き付ける魅力があるのは違ぇねぇ。団長にかかりゃ女神と鬼が共存してるようなもんだからな!」
マーリーは笑いながら姿勢を低くすると手に紐を持ち構える。
「そんなに着込んでよほど怪我が恐いのかぁ? 『紅蓮の風』の名が泣くぜぇ?」
「……そうかもしれないな。そんな俺を団長は見捨てなかった。だから、風の名は断じて傷つけさせない」
クラーツは鎧を鳴らしゆっくりと歩を進めていく。
「たった二人の援軍がきただけで随分と強気になったものですねぇ」
「あぁ今度ばかりはあいつらに感謝しねぇと。さて、悪いが時間がないんでな、とっとと終わらせるぞ」
ウェッジはコインを取り出すと指で弾き走り出した。
◇
「外が騒がしくなったな。いい加減諦めたらどうだ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
アルフレッドが教会の外から目を戻すと膝をついたミレイユは短くなった呼吸を整えるように息を吸い込んだ。
「苦しいだろう。今なら見逃してやる、そして二度と俺の前に現れるな」
「ふぅー……あなた、昔よりも口数が多くなったんじゃない? あの頃もそのくらいお喋りだったら苦労しなかったのにね」
「……お互い年を取ったということだ。さぁそろそろ時間だ、次で最後にしてやる」
「残念だけど今回ばかりは私も同じ意見よ」
窓から差し込む光が二人を照らし、冷たい風が室内に吹き込むと白銀の髪が動いた。
「ちっ……ジリ貧だな!」
ウェッジの目の前では男が宙で止まっており、見えない足場を蹴ると襲い掛かる。ウェッジは避けると同時に周りで戦っている仲間に石を投げ、石は何かにぶつかると砕け散った。
「かぁー面倒くせぇ! お前のスキルはわかった、いい加減サシで勝負したらどうだ」
「先ほどから一対一のつもりですが? あなたこそ仲間を気に掛け過ぎじゃないですか」
「団長に誰一人死なせるなって言われてるんだよ」
「まったく、足手まといがいると大変ですねぇ」
悪びれる様子もなく攻撃を繰り返し、ウェッジはひたすら何かから味方を守っていたが、女と戦っていた兵がついに何かにぶつかるとその場に倒れる。
「あら、余計なことを……ま、とりあえずやっと一人目ね」
兵に刃が迫ったとき、上から人が落ちてくると女はすぐさま距離をとった。土煙を上げ着地した男は紅い服を纏い、その人物はその場にいる誰よりも悪党面をしていた。
「よぉ副団長! 危なかったなぁー!」
「マーリー!!」
マーリーと呼ばれた男はウェッジに上を見るように合図すると、騎士団の団長と男が戦っている真上に大きな影ができる。
「な、なんだあれは…………」
誰かが放った言葉の先には、そこにあるはずのない船が飛んでおり、横から垂れ下がった紐からは鎧をきたクラーツが男の前に飛び降りてきた。
「紅い鎧……船が浮いてると思ったら今度は『紅蓮の風』が降ってくるとはなぁ」
「副団長、遅くなりました」
「いいや、最高のタイミングだ。騎士団は全員下がれ、ここからは俺たちがやる」
「し、しかし……」
「全員大至急下がれ!! 我々では足手まといだ!」
騎士団の団長が大きな声で命令すると一斉に兵は前線を退いた。
「さぁてこっからは俺たちが相手してやるぜぇ」
「あら、『紅蓮の風』には絶世の美女がいると聞いてたけど賊も付いてるのね」
「がっはっはっは! 賊すら惹き付ける魅力があるのは違ぇねぇ。団長にかかりゃ女神と鬼が共存してるようなもんだからな!」
マーリーは笑いながら姿勢を低くすると手に紐を持ち構える。
「そんなに着込んでよほど怪我が恐いのかぁ? 『紅蓮の風』の名が泣くぜぇ?」
「……そうかもしれないな。そんな俺を団長は見捨てなかった。だから、風の名は断じて傷つけさせない」
クラーツは鎧を鳴らしゆっくりと歩を進めていく。
「たった二人の援軍がきただけで随分と強気になったものですねぇ」
「あぁ今度ばかりはあいつらに感謝しねぇと。さて、悪いが時間がないんでな、とっとと終わらせるぞ」
ウェッジはコインを取り出すと指で弾き走り出した。
◇
「外が騒がしくなったな。いい加減諦めたらどうだ?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
アルフレッドが教会の外から目を戻すと膝をついたミレイユは短くなった呼吸を整えるように息を吸い込んだ。
「苦しいだろう。今なら見逃してやる、そして二度と俺の前に現れるな」
「ふぅー……あなた、昔よりも口数が多くなったんじゃない? あの頃もそのくらいお喋りだったら苦労しなかったのにね」
「……お互い年を取ったということだ。さぁそろそろ時間だ、次で最後にしてやる」
「残念だけど今回ばかりは私も同じ意見よ」
窓から差し込む光が二人を照らし、冷たい風が室内に吹き込むと白銀の髪が動いた。
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