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真実の扉 ~歴史の裏側~
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しおりを挟む一通り話し終わったシオンさんは、テーブルを周り私の隣に。
軽く腰に手を回す様に、密着。
「えっ、あの」
「嫌ですか?」
「えー、と、」
「嫌じゃないならこのままで。ダメですか?」
抱き寄せられる感覚は嫌ではない。
ふわりと香るシオンさんの匂いはいい匂いで、落ち着く。
離れてください、と言うのも勿体ないと思った私は『いい、です』と小声で返してしまった。くそ、自分が憎いぜ…!
優しく抱き寄せられればドキドキしてしまう。
腰に回した手が優しくトントンリズムを刻む。まるで子供をあやすかのよう。私の体から力が抜けてきた事に気付いたのか、シオンさんは私の頭にチュ、とキスをくれた。
「なんか、恥ずかしい、んですけど」
「そう?俺はもっと甘やかしてあげたいくらいだけどね。執事殿にも『押し倒さなければ容認します』と言われているし」
「えっ!?そんなのいつ!?」
「姫が来る前かな」
どうやら星夜祭でエスコートを受け入れた、という事は少なからず私がシオンさんに心を寄せている、と判断しているようで、ゼクスさんもセバスも『そういう関係』とシオンさんを認めているらしい。
でなければ馬車に2人きりにしたり、こうして部屋に2人だけになどしないでしょう?と言われる。
本当に私、こちらの常識というか社会通念というものがごっそりない。そうか、エスコートって『お付き合い開始』みたいなもんなのか…私単なるその時のお約束程度だと思ってたな…
「それにしても姫?俺の前に誰か男性とお付き合いしていた事がありますか?」
「え、なんですかいきなり」
「いや、未婚の女性にしてはいやにすんなり俺の腕に収まっているな、と思いまして。こういった経験があるのかなと邪推してしまいました」
経験はあっても向こうの世界です!とか言えねえ!
『やだシオンさんてば抱き寄せる腕が慣れてて気持ちいいなあこんちくしょう』とか考えている場合ではなかった!
ど、どうやって言い訳すべきか!?
言い訳とか考えている時点でアウト?
くい、と顎を持ち上げられて見つめ合う。
シオンさんの瞳がじっと私を覗き込んでいた。ひいいいいい考えを読まないでくださいおねがい!
「コーネリア?正直に言ってほしいな」
「え、あの、シオンさんが初めて、ですよ?」
「本当に?」
「ほ、ほんとうですっ(こっちでは)」
「ん~?嘘ではないけど本当ではない、って気がするけど?」
「・・・あっ」
その時ふとシリス殿下にキスされた事を思い出した。
あっ、あれってカウントに入る?入っちゃうか?
「・・・コーネリア?」
「いや、あの」
「お相手は、シリス殿下かな?」
「なっ、なんでっ」
「なるほどね、まあ確かに手を出さずにいられなくなるかな。シリス殿下は君にかなり惚れていたようだしね」
「ど、どこまで知ってるんですかシオンさんってば!」
「で、どこまでされたのかな?キス?それとも押し倒された?」
「そんな事言えるわけないですよ!」
「そうか、じゃあ俺がしてみるしかないのかな?」
「ごめんなさいごめんなさいキスだけです本当です」
圧に耐えかねてゲロった私。弱すぎる。
だって急に迫られたら弱いじゃない!
そのままゆっくり、唇が重なった。優しい感触と温もり。
ちゅ、と離れる時にリップ音。
至近距離で合う視線。『愛してる』と囁くような甘い視線に耐えられなくなって、私は自分から目を伏せた。
何度も重なる唇。角度を変えて、重なる時間も変えて。
どんどん胸がキュッと苦しくなってくる。このままこの人に全て任せてしまえたら、甘えてしまえたらどんなに楽なんだろう。
キスを止めるために、軽くシオンさんの胸に手を当てて押し返す。すると、いつかのようにおでこをコツン、とあててシオンさんが囁く。
「コーネリア?」
「これ以上、は」
「嫌だ?」
「ん、嫌じゃ、ない、けど・・・」
「けど?」
言葉の合間にも、チュ、と唇を啄むように重ねる。
甘く、蕩けてしまいそうになる。もっと深く、と願う自分の女の部分を押し止める。
このまま、流されてしまったらダメ。
私、まだ、何も言ってない。
「シオン・・・」
「どうしたの?」
「私、話さないと、いけないこと、が」
「話したくないなら、それでもいい」
シオンさんが私をぎゅう、と抱きしめる。
ゆっくり撫でてくれる背中。暖かくて安心する。
でも、言わないと。でも、どこまで?
私は、抱きしめられたままゆっくり、自分の事を話し始めた。
最初は、隠しておこうと思った。言えないこともあると思った。
けれど、自分の全てをさらけ出して『好きだ』と言ってくれるこの人に対して、隠し事をしたまま受け入れるなんて出来ない。
こんなに苦しいほど、私もこの人を『好きだ』と思っているのに。
受け入れてなんてもらえないかもしれない。
拒否されるならそれでもいい。この人に幸せになってもらいたい。
私以外の誰かと結ばれる事になるのだとしても。
********************
彼女に自分の全てを話し、気持ちを伝えた。
星夜祭の夜、彼女の気持ちも、自分の気持ちもお互いに伝わってはいるが、きちんと話したかった。
溢れる想いを伝えるように唇を重ねた。
至近距離で瞳を見れば、彼女も俺の事を想ってくれている、と確信できる。目を伏せた彼女に吸い寄せられるように、キスを贈る。
このまま激情のままに全てを自分のものにしてしまいたいが、そんな事をしたらあの執事殿に殺されそうだな、なんて思っていれば彼女からストップがかかった。内心『助かった』なんて思いもしたが。
何かを伝えようとする彼女を宥めるように、抱きしめる。
ゆっくりと言葉を伝える彼女に『本当は既婚者です、なんて言わないでくれよ』と思っていた。
しかし、彼女の話はひどく突飛な物だった。
異世界から来たこと。元は俺より歳上の女性だということ。…ああ、だからかなどと腑に落ちる部分もある。
…いや、先程抱き寄せた時にえらく慣れてるな、などと思ったとは口には出さないが。
途中、ひどく体を固くして話した内容。
『元の世界に戻れるならば、帰るつもり』だと言うこと口にした時だ。
…だから、俺を受け入れるのを迷っていたのか。
けれど、『迷っていた』という事は、俺を選んでくれた、ということでもある。なら、俺は迷わない。
「コーネリア?」
「だから、私、シオンさんの事を幸せにはしてあげられなくて、」
「いいよ」
「・・・え?」
「君が、元の世界に戻るまで。俺の側にいて欲しい」
「だって、残された方の気持ちは」
「構わない」
「でもっ!」
「君がこうして、そばに居てくれる時間だけでいい。俺を見て。俺の事だけ感じて。後のことは考えなくていい」
「そんな、の」
「君が辛い?でもすまない、俺は君を手放す気は無いんだ、ごめんね」
自分勝手な男だな、俺も。
こうして気持ちを重ね、触れ合えば、離れる時に辛いのは自分だけじゃなくて彼女もだとわかっているのに。
けれど、俺は彼女を今更手放す気にはならない。
彼女が自分の世界に帰るのを邪魔するつもりは、ない。
その代わり、それまでの時間を俺が独占してもいいかな?
その笑顔を、声を、肌の感触を、覚えさせて欲しい。
君以外の女性を、この先求めるつもりはないから─────
そう伝えれば、彼女は泣き出した。
泣かせるつもりはなかったんだけど、仕方ないか。
「すまない、コーネリア。泣かせるつもりはなかった」
「いえ、私が、ワガママだったから」
「可愛い人のワガママなんて、男にとってはご褒美だよ」
「あの、シオンさん?」
「シオン」
「え?」
「本当は『歳上』なんだろう?なら、さん付けはなしだよ」
「ず、ずるい、そんなの」
「ずるくないだろ?俺は2人の時はちゃんと『コーネリア』って呼んでいるし。ちゃんと周りに人がいる時は『姫』って呼んでいるだろう?
・・・それとも2人の時は『コズエ』と呼んだ方がいい?」
「っ、もう、本当に・・・」
睨む顔も可愛いと思ってしまう。もう重症だな。
軽くキスをすれば、今度は彼女の方から強請るようにキスを求めてきた。…吹っ切れた、のか?
試すように軽く舌を割り入れると、小さな舌が絡み付くように迎えてくれた。遠慮はしなくていい、って事かな。それは有難い。
彼女が応えてくれるのをいいことに、何度も求めればくてん、と体から力が抜けていく。
「ちょ、まって」
「待たない」
「ん、息できな、」
「誘ったのは君だろ?少し、我慢して」
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