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第二部 死闘
第43話 狂人との対面
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――――――――――――――――
残り時間――4時間13分
残りデストラップ――4個
残り生存者――4名
死亡者――6名
重体によるゲーム参加不能者――3名
重体によるゲーム参加不能からの復活者――0名
――――――――――――――――
たった今、目の前で見た光景がスオウは信じられなかった。脳裏に残る映像を否定したかったが、絶対に出来なかった。なぜならば、額を打ち抜かれたヒロユキの死体がそこに確かにあるから。
このゲームではすでに5名の死亡者が出ているが、いずれのときもスオウは死の瞬間には立ち会っていない。遺体も九鬼のしか見ていない。このゲーム内で起こるデストラップを経験することにより、本当に死を懸けているんだと実感はしていたが、それとこれとは別である。
ほんの数メートル前で、簡単に人が撃ち殺されたのだ。しかも撃たれた方は、手も足も出せない状態だったにも関わらず。
人として踏み越えてはいけないラインを、いとも簡単に踏み越えたことに対して、言いようのない薄ら寒いものを感じた。
いったい、この男は何者なんだ? なんの目的があってこのゲームに参加しているんだ?
恐怖のあまり、スオウは今自分が置かれている状況を失念していた。
廊下に響き渡るメール受信音。スオウのスマホが発した音である。
スオウは自分の迂闊さを呪った。
ヤバイ、気付かれる。
そう思ったときには、すでに遅かった。瑛斗が振り向いて、こちらをじっと見つめてきた。感情がまるで感じられない視線が、スオウと目が合ったとたんに、ギラリと輝いた。
殺される……。
瑛斗の目の輝きを見て、慄然とそう思った。人を人として見ていない瑛斗の目。こんな目を持つ人間がいることが信じられなかった。
すぐにでもここから離れないと!
瑛斗の視線の呪縛から逃げようと体を捻りかけたその時、左肩甲骨のやや下辺りに、熱いなにかが突き抜けていった。
なんだこの感覚は? ひょっとして、おれは撃たれたのか……?
銃声と灼熱の痛みは、一瞬後にやってきた。着弾の衝撃によって上半身を後方に引っ張られて、その場に倒れそうになる。しかし、ここで倒れることは、死を意味していた。今は一秒でも早く瑛斗から逃げなくてはならない。
全身の力を振り絞って、なんとか体勢を維持する。そして、激痛に耐えつつ走り出す。
瑛斗との距離は10メートルほど。少しでも足を止めたら、すぐに追いつかれてしまう距離である。ましてや相手は銃を持っているのだ。いつ背後から撃たれるか分かったものじゃない。
背中に死神の吐息を感じながら、必死に走り続ける。
そのとき、スオウは床のガレキに足を取られてしまった。恐怖によるものか、足元への注意が疎かになっていたのだ。床の上に盛大に転ぶ。頭や足をどこかにぶつけて、鈍痛が走る。
咄嗟に背後に目をやった。5メートルも離れていないところに立った瑛斗が、こちらに向けて手を伸ばしていた。薄暗い明かりの下でも、銃を構えているのが見て取れる。
くそっ、こんな至近距離じゃ、当ててくださいって言ってるようなもんじゃないかよ……。
絶望的な状況だった。背中に冷たいものが走り抜ける。死神に首筋を撫でられたみたいな感覚。
「どうやら、次に死ぬのはキミの番みたいだね」
感情のない声。人が人に対して発する声とは思えなかった。あるいは瑛斗にとって、スオウは人間として映っていないのかもしれない。
「ど、ど、どうして……あいつを、こ、こ、殺したんだ……?」
「どうしてって、ジャマだったからに決まっているだろう?」
当然だという風な口調である。
「ジャマって……仲間だろう?」
「銃を隠し持っていたやつも仲間なのか?」
「それは……でも、殺すことはないだろう! 相手は無防備だったんだぞ!」
自分が置かれている状況も忘れて声を張り上げていた。
「ヤラなければ、ボクが殺されていたかもしれないからね。これは立派な正当防衛だよ」
「おい、まさか……他の参加者を殺したのもお前なんじゃ――」
不意にそんな思いが胸を過ぎった。
「誤解しないで欲しいなあ。ボクがやったのはこのバカをいれても、たった3人だけだよ」
「3人も! そんなに……」
不幸にもスオウの勘は当たっていたらしい。
「ヤブ医者はメスを調達したのを知られた可能性があったから、そのあとすぐ事故に見せ掛けて殺したまでだよ」
「九鬼さんの件はやっぱり事故じゃなかったんだ……」
「それから、喪服男はボクの大事な儀式のジャマになるから殺しただけだし」
「円城さんをやったのもおまえだったのか……」
「どれも仕方のないことだったんだよ。悪いのはボクではなくて、ボクのジャマをした連中の方だからね」
「く、く、狂ってる……。そんな考え方は……異常すぎるっ!」
瑛斗の異質さには最初から少なからず気付いていたが、まさかこれほどとは思ってもいなかった。この男は自分とは別次元を生きている人間なのだ。それを今悟った。
「キミもボクのことを理解してくれない人間のようだね。仕方がない、キミにも死んでもらうしかないか」
瑛斗が銃口を向けたまま、スオウの方に一歩また一歩と近付いてくる。
銃を持った死神が今まさに引き鉄を引こうとしたとき――。
「スオウ君! 近くの壁を見てっ!」
スオウの背後で大きな叫び声がした。
「――――!」
スオウは左右の壁に目を向けた。ヒビ割れが走る右の壁に『それ』があった。
「そういうことか!」
言葉の意味を瞬時に理解した。火を直接押し付けられたみたいに痛む左腕をかばいながら、壁に向かって精一杯右手を伸ばす。指先がかろうじて壁のボタンに触れる。そのまま強く押し込んだ。
間髪入れずに、スオウと瑛斗の間に、重低音をあげながら防火シャッターが降りてきた。銃弾では貫通出来そうにない防御壁の出来上がりである。
「――ふぅー、間一髪ってところだったな……」
スオウはゆっくりと立ち上がり、背後を振り返った。そこに救いの天使が立っていた。
「ありがとう、イツカのおかげで命拾いしたよ」
「どういたしまして。とっさに、さっきの防火シャッターのデストラップのことを思い出したの」
「ああ、おれもイツカの言葉でそれに気が付いたよ。でも、なんでここにイツカがいるんだ?」
「さっき紫人から新しいメールが届いて、そこにヒロユキが死んだとあったから、スオウ君のことが気になって追いかけてきたの」
「そいうことか。おれはその場面を実際にこの目で見っちゃったんだよ……」
スオウの脳裏に浮かぶヒロユキを撃ち殺す瑛斗の映像。
「そうだったんだ……」
「それで驚いて逃げるのが遅れて、さっきのザマだよ」
「でも、こうして助かったんだから良かった」
「いや、まだ助かったって決めるのは早いな」
「どういうこと?」
「アイツ――瑛斗はゲーム参加者の皆殺しを企んでいるみたいだったんだ。すぐにおれのことも追いかけてくると思う」
「じゃ、瓜生さんのところに戻ろう。早く対策を練らないと」
「こうなったら対策よりも先に、全員で逃げたほうが早いと思う。瓜生さんには今度こそ納得してもらわないと」
「そうね。瓜生さんには瓜生さんの考えがあるみたいだけど、命には代えられないからね」
「そうと決まったら、瑛斗が反対側の廊下から回りこんでくる前に、瓜生さんの元に戻ろう」
スオウが歩き出そうとすると、イツカが何気ない風を装いながら素早く体を支えてくれた。
「ありがとう。勇ましく出て行ったはいいけど、こんなにだらしなくて悪いな……」
歩けないことはなかったが、この状態で瑛斗と対峙するのは無謀以外のなにものでもない。それぐらいの分別はまだスオウにも残っている。ここは大人しくイツカの力を借りることにした。
「だらしなくなんてないから。スオウ君は一生懸命なだけでしょ。こういうときこそ、みんなで協力していかないとね」
イツカが肩を貸してくれたので、スオウは素直に肩に手を回した。顔と顔が触れそうなほど近付く。イツカの髪から淡いシャンプーの香りがして、こんなときにも関わらず、胸の奥がキュンとしてしまうスオウだった。
「どうかしたの? 顔が赤いけど、もしかして傷が痛むの?」
「いや、う、う、うん……大丈夫だから……」
スオウは明後日の方を向きながら、しどろもどろに答えた。ほんの少しの間、銃で撃たれた痛みを忘れられた気がした。
――――――――――――――――
赤ちゃんの元に帰るべきか、それとも逃げたあの男を追いかけるべきか、それが問題だった。
瑛斗の思考は一分ほど続いた。そして、出した答えは――。
「あの男から始末しようか。たしか女も一緒にいたから、二人同時に殺せれば効率がいいしな」
まるで掃除の手順を確認するかのように首肯する。
「そうだ、あの男からのメールをチェックしてみよう。今何人生き残っているか調べておかないと」
紫人から送られてきたメールを開いて中身を読む。
「生き残りはあと四人しかいないんだあ。ボクとさっきの男女二人に、残りひとりか……。ていうことは、ボクが殺せるのはあと三人だけなんだ。行動を起こすのが少し遅すぎたかなあ。まあ、人殺し目当てにこのゲームに参加したわけじゃないから、別にいいけどさあ」
人を殺す話を、まるで世間話でもするかのようにつぶやく。
「じゃあ、まずはあの二人組を殺しに行こうかなあ」
近くのコンビニにでも行こうか、そんな感じで瑛斗は歩き出す。
「ここは防火シャッターが降りて通れないし、こっちの廊下の先は天井が崩落しているし……。遠回りになるけれど、一旦、反対側の渡り廊下に出るしかないかあ」
肋骨の痛みはまだ続いていた。割れた額もズキズキと痛む。でも、なぜか心中は穏やかだった。
なぜならば、生き残っている三人を殺してしまえば、また神聖なあの儀式に戻れるから――。
「ボクの赤ちゃん、待っててくれよ。それまで生きててくれないと、ボク、ママの体にひどいことしちゃうからね」
瑛斗は決して後ろを振り返ることなく、前だけを見て進んでいく。自分の見ている世界が正しいと信じながら――。
残り時間――4時間13分
残りデストラップ――4個
残り生存者――4名
死亡者――6名
重体によるゲーム参加不能者――3名
重体によるゲーム参加不能からの復活者――0名
――――――――――――――――
たった今、目の前で見た光景がスオウは信じられなかった。脳裏に残る映像を否定したかったが、絶対に出来なかった。なぜならば、額を打ち抜かれたヒロユキの死体がそこに確かにあるから。
このゲームではすでに5名の死亡者が出ているが、いずれのときもスオウは死の瞬間には立ち会っていない。遺体も九鬼のしか見ていない。このゲーム内で起こるデストラップを経験することにより、本当に死を懸けているんだと実感はしていたが、それとこれとは別である。
ほんの数メートル前で、簡単に人が撃ち殺されたのだ。しかも撃たれた方は、手も足も出せない状態だったにも関わらず。
人として踏み越えてはいけないラインを、いとも簡単に踏み越えたことに対して、言いようのない薄ら寒いものを感じた。
いったい、この男は何者なんだ? なんの目的があってこのゲームに参加しているんだ?
恐怖のあまり、スオウは今自分が置かれている状況を失念していた。
廊下に響き渡るメール受信音。スオウのスマホが発した音である。
スオウは自分の迂闊さを呪った。
ヤバイ、気付かれる。
そう思ったときには、すでに遅かった。瑛斗が振り向いて、こちらをじっと見つめてきた。感情がまるで感じられない視線が、スオウと目が合ったとたんに、ギラリと輝いた。
殺される……。
瑛斗の目の輝きを見て、慄然とそう思った。人を人として見ていない瑛斗の目。こんな目を持つ人間がいることが信じられなかった。
すぐにでもここから離れないと!
瑛斗の視線の呪縛から逃げようと体を捻りかけたその時、左肩甲骨のやや下辺りに、熱いなにかが突き抜けていった。
なんだこの感覚は? ひょっとして、おれは撃たれたのか……?
銃声と灼熱の痛みは、一瞬後にやってきた。着弾の衝撃によって上半身を後方に引っ張られて、その場に倒れそうになる。しかし、ここで倒れることは、死を意味していた。今は一秒でも早く瑛斗から逃げなくてはならない。
全身の力を振り絞って、なんとか体勢を維持する。そして、激痛に耐えつつ走り出す。
瑛斗との距離は10メートルほど。少しでも足を止めたら、すぐに追いつかれてしまう距離である。ましてや相手は銃を持っているのだ。いつ背後から撃たれるか分かったものじゃない。
背中に死神の吐息を感じながら、必死に走り続ける。
そのとき、スオウは床のガレキに足を取られてしまった。恐怖によるものか、足元への注意が疎かになっていたのだ。床の上に盛大に転ぶ。頭や足をどこかにぶつけて、鈍痛が走る。
咄嗟に背後に目をやった。5メートルも離れていないところに立った瑛斗が、こちらに向けて手を伸ばしていた。薄暗い明かりの下でも、銃を構えているのが見て取れる。
くそっ、こんな至近距離じゃ、当ててくださいって言ってるようなもんじゃないかよ……。
絶望的な状況だった。背中に冷たいものが走り抜ける。死神に首筋を撫でられたみたいな感覚。
「どうやら、次に死ぬのはキミの番みたいだね」
感情のない声。人が人に対して発する声とは思えなかった。あるいは瑛斗にとって、スオウは人間として映っていないのかもしれない。
「ど、ど、どうして……あいつを、こ、こ、殺したんだ……?」
「どうしてって、ジャマだったからに決まっているだろう?」
当然だという風な口調である。
「ジャマって……仲間だろう?」
「銃を隠し持っていたやつも仲間なのか?」
「それは……でも、殺すことはないだろう! 相手は無防備だったんだぞ!」
自分が置かれている状況も忘れて声を張り上げていた。
「ヤラなければ、ボクが殺されていたかもしれないからね。これは立派な正当防衛だよ」
「おい、まさか……他の参加者を殺したのもお前なんじゃ――」
不意にそんな思いが胸を過ぎった。
「誤解しないで欲しいなあ。ボクがやったのはこのバカをいれても、たった3人だけだよ」
「3人も! そんなに……」
不幸にもスオウの勘は当たっていたらしい。
「ヤブ医者はメスを調達したのを知られた可能性があったから、そのあとすぐ事故に見せ掛けて殺したまでだよ」
「九鬼さんの件はやっぱり事故じゃなかったんだ……」
「それから、喪服男はボクの大事な儀式のジャマになるから殺しただけだし」
「円城さんをやったのもおまえだったのか……」
「どれも仕方のないことだったんだよ。悪いのはボクではなくて、ボクのジャマをした連中の方だからね」
「く、く、狂ってる……。そんな考え方は……異常すぎるっ!」
瑛斗の異質さには最初から少なからず気付いていたが、まさかこれほどとは思ってもいなかった。この男は自分とは別次元を生きている人間なのだ。それを今悟った。
「キミもボクのことを理解してくれない人間のようだね。仕方がない、キミにも死んでもらうしかないか」
瑛斗が銃口を向けたまま、スオウの方に一歩また一歩と近付いてくる。
銃を持った死神が今まさに引き鉄を引こうとしたとき――。
「スオウ君! 近くの壁を見てっ!」
スオウの背後で大きな叫び声がした。
「――――!」
スオウは左右の壁に目を向けた。ヒビ割れが走る右の壁に『それ』があった。
「そういうことか!」
言葉の意味を瞬時に理解した。火を直接押し付けられたみたいに痛む左腕をかばいながら、壁に向かって精一杯右手を伸ばす。指先がかろうじて壁のボタンに触れる。そのまま強く押し込んだ。
間髪入れずに、スオウと瑛斗の間に、重低音をあげながら防火シャッターが降りてきた。銃弾では貫通出来そうにない防御壁の出来上がりである。
「――ふぅー、間一髪ってところだったな……」
スオウはゆっくりと立ち上がり、背後を振り返った。そこに救いの天使が立っていた。
「ありがとう、イツカのおかげで命拾いしたよ」
「どういたしまして。とっさに、さっきの防火シャッターのデストラップのことを思い出したの」
「ああ、おれもイツカの言葉でそれに気が付いたよ。でも、なんでここにイツカがいるんだ?」
「さっき紫人から新しいメールが届いて、そこにヒロユキが死んだとあったから、スオウ君のことが気になって追いかけてきたの」
「そいうことか。おれはその場面を実際にこの目で見っちゃったんだよ……」
スオウの脳裏に浮かぶヒロユキを撃ち殺す瑛斗の映像。
「そうだったんだ……」
「それで驚いて逃げるのが遅れて、さっきのザマだよ」
「でも、こうして助かったんだから良かった」
「いや、まだ助かったって決めるのは早いな」
「どういうこと?」
「アイツ――瑛斗はゲーム参加者の皆殺しを企んでいるみたいだったんだ。すぐにおれのことも追いかけてくると思う」
「じゃ、瓜生さんのところに戻ろう。早く対策を練らないと」
「こうなったら対策よりも先に、全員で逃げたほうが早いと思う。瓜生さんには今度こそ納得してもらわないと」
「そうね。瓜生さんには瓜生さんの考えがあるみたいだけど、命には代えられないからね」
「そうと決まったら、瑛斗が反対側の廊下から回りこんでくる前に、瓜生さんの元に戻ろう」
スオウが歩き出そうとすると、イツカが何気ない風を装いながら素早く体を支えてくれた。
「ありがとう。勇ましく出て行ったはいいけど、こんなにだらしなくて悪いな……」
歩けないことはなかったが、この状態で瑛斗と対峙するのは無謀以外のなにものでもない。それぐらいの分別はまだスオウにも残っている。ここは大人しくイツカの力を借りることにした。
「だらしなくなんてないから。スオウ君は一生懸命なだけでしょ。こういうときこそ、みんなで協力していかないとね」
イツカが肩を貸してくれたので、スオウは素直に肩に手を回した。顔と顔が触れそうなほど近付く。イツカの髪から淡いシャンプーの香りがして、こんなときにも関わらず、胸の奥がキュンとしてしまうスオウだった。
「どうかしたの? 顔が赤いけど、もしかして傷が痛むの?」
「いや、う、う、うん……大丈夫だから……」
スオウは明後日の方を向きながら、しどろもどろに答えた。ほんの少しの間、銃で撃たれた痛みを忘れられた気がした。
――――――――――――――――
赤ちゃんの元に帰るべきか、それとも逃げたあの男を追いかけるべきか、それが問題だった。
瑛斗の思考は一分ほど続いた。そして、出した答えは――。
「あの男から始末しようか。たしか女も一緒にいたから、二人同時に殺せれば効率がいいしな」
まるで掃除の手順を確認するかのように首肯する。
「そうだ、あの男からのメールをチェックしてみよう。今何人生き残っているか調べておかないと」
紫人から送られてきたメールを開いて中身を読む。
「生き残りはあと四人しかいないんだあ。ボクとさっきの男女二人に、残りひとりか……。ていうことは、ボクが殺せるのはあと三人だけなんだ。行動を起こすのが少し遅すぎたかなあ。まあ、人殺し目当てにこのゲームに参加したわけじゃないから、別にいいけどさあ」
人を殺す話を、まるで世間話でもするかのようにつぶやく。
「じゃあ、まずはあの二人組を殺しに行こうかなあ」
近くのコンビニにでも行こうか、そんな感じで瑛斗は歩き出す。
「ここは防火シャッターが降りて通れないし、こっちの廊下の先は天井が崩落しているし……。遠回りになるけれど、一旦、反対側の渡り廊下に出るしかないかあ」
肋骨の痛みはまだ続いていた。割れた額もズキズキと痛む。でも、なぜか心中は穏やかだった。
なぜならば、生き残っている三人を殺してしまえば、また神聖なあの儀式に戻れるから――。
「ボクの赤ちゃん、待っててくれよ。それまで生きててくれないと、ボク、ママの体にひどいことしちゃうからね」
瑛斗は決して後ろを振り返ることなく、前だけを見て進んでいく。自分の見ている世界が正しいと信じながら――。
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