私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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リアン4

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 そんな事を考えながら生活をしていた。昨日は雨が降りぬかるんでいたからマリアベルには留守番をさせていた。

 すると家の周りに足跡が沢山付いていた。走って家に行き扉を開ける。


 まさか! 追手が? そう思うもマリアベルには悟られないように明るく振る舞う事にした。殺気は感じられない。

「ただいま~マリア良い子に、」


「お母さん!」


 マリアベルが走って抱きついて来た。俺は安心させる為マリアベルを抱っこした。

「マリアを泣かせたのはあなた達なのか?」


 中にいた者たちは少し怯んだように見えた。なんだろう? こいつらは誰なんだ? 追手ではなさそうだ。


「失礼いたしました。マリアベル様がお母さんとおっしゃったので、勝手に女性を想像していました」


「マリアお母さんのこと女の人だなんて言ってないもん。ぐずっ」


 いや、普通は女だと思うだろ……


「あぁ、泣かなくて良い。マリア一人でよく頑張ったな。お利口だ」


「うん」


 頭を撫でると嬉しそうに返事をするマリアベル。


「失礼……私どもはマリアベル様を迎えに来たものです。マリアベル様を今まで保護していただいたようで感謝します。私どもはずっとマリアベル様の行方を探しており、ようやく此処を探し出す事ができました。マリアベル様を本来のご家族の元へお返しいただきたく存じます」


 マリアベルが誘拐された事、家族が待っている事を聞かされた。そうか……そうだったのか。待っている家族がいるんだな。そう思うとホッとした。



「そうか。やはりマリアは良いとこのお嬢様だったのか……こんな薄汚い田舎の家に住まわせてしまっていたとは申し訳ない事をした。マリア良かったな、おまえには家族がいるんだって」

 しかし俺から離れようとしないマリアベル。


「マリアの家族はお母さんでしょう? お母さんにもお父さんにもお兄さんにもなってくれるって言ったもん」
 

「あぁ、言ったな。でも帰る家があるんだ。それに待っている家族がいる。本当のお母さんやお父さんが待っていてずっとマリアを探していたと言っているぞ」

 ずっと探してくれていたんだな……俺がこんな田舎に連れて来て隠れるように住んでいたからか……すまない事をしたか……


「やだ! お母さんも一緒じゃないと行かないもん」
 
「弱ったな……」

 頭を掻きむしる。一緒に行くわけにはいかない。


「マリアベル様、一度ご両親に会ってみませんか? マリアベル様のご家族はマリアベル様がいなくなったあの日以来お帰りをずっとお待ちしているのです……どうかお願いいたします」


 迎えの男達は深く頭を下げ続けた。本当の両親に返すのが道理だ。俺とは見ず知らずの関係でマリアベルは偶然拾っただけだ。



「マリア行っておいで。自分の目で確かめてこい」

 離れようとしないマリアベルだが、ここでお別れだな……お前が今までいてくれて良かった。そう思う。


「お母さんも一緒に来てくれる?」

 目に涙をいっぱいためながら、俺の顔を見るが……


「いや、遠慮しておく。お迎えの人がたくさんマリアの為にきてくれているだろう? それにほら、立派な馬車まで用意されているぞ」

 何かあったらすぐにマリアベルを連れて逃げられるように扉は開けたままだった。すると馬車が家の前に止まり、メイド服を着た女性が二人馬車から降り頭を下げた。


 俺はマリアベルを馬車の前まで抱っこして連れて行き女性に挨拶をする。

「よろしくお願いします」

 そう言うと女性は恭しく礼をした。俺のような身なりをした奴にも礼儀正しい。ちゃんとした貴族の家なんだろうと察する。


「畏まりました」


 マリアベルを下ろすと女の人に手を引かれて馬車に乗ろうとした。


「待って!」


 マリアベルは大きな声で女の人に向かって叫ぶ。



「マリア、どうした?」


 ぴょんと飛び降りるマリアベルを見て驚く。


「お母さんから貰ったクマさんのぬいぐるみ持って行くの。大事なぬいぐるみだから一緒に行く」

 走って家の中に入りクマのぬいぐるみを抱きしめて戻ってきた。


「お母さん……行ってきます、待っててね」

 マリアベルはクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きながら涙を流していた。


「……おう、じゃあなマリアベル」

 

 元気でな……もう会う事は……ないかもな。


 
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