私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

文字の大きさ
35 / 81

リアン3

しおりを挟む

「マリア、今日は村へ行くが一緒に行くか?」

 狩りをして肉の血抜きを終えた俺は野菜や果物と交換をする為に村へ行く事にした。朝のうちに行かなきゃ良いものがなくなってしまう。

「うん、行くっ!」

 馬に乗り下の村へと向かう。マリアベルは俺の前に跨り落ちないようにその体を抱いていた。

「今日はお父さんだね! 大きな手で守られているみたい」

 笑顔でマリベルは言う。楽しそうでなによりだ。のんびりと馬を走らせ村へ行くといつもと違う顔ぶれの連中がいて警戒をする事になる。俺を探しに来たのか?


「マリア、一人で行くな! 見たことのない顔ぶれがいるから危ないぞ。何かあったらもうあえなくなるぞ!」

 大袈裟だがそう言うとマリアベルは俺の手を繋いできた。素直で良いが将来が心配になる……可愛いからきっと将来は男を手のひらで転がすようになるのではないか……

「手、繋いでるから大丈夫」

 唇を尖らせながら上目遣いで言ってくるが、これはすでに女の子の仕草だな……天然でそんな顔が出来るとは……やはり将来が不安に思えた。
 

「お? 珍しいものがあるな……」

 村の朝一で売っている品物ではない。先ほど見た男たちが売りにきたのか……

「わぁ、可愛い……」

 マリアベルが見ていたのは髪留めだった。花をモチーフにした物が多いようだ。

「絵本のお姫様みたいだね!」

 やはり女の子はこう言った物が好きなのか。

「買ってやるよ。自分で選びな」

「良いの?」

 俺が頷くと目をキラキラさせながら一生懸命に悩みながら選んだ物はスズランの髪留め。

「これ! これなら枯れないもん。毒もないし触っても良いよね」

 スズランを見に行った事を覚えていたんだな。ちゃんと毒のことも覚えていた。マリアベルはスズランを見て可愛いとずっと言っていた。白く可愛らしい花はマリアベルによく似合うし、白い服も似合うだろうな。ただ生活をするには汚れるから着せてやれないのが難関だ。

「これをくれ」

「あいよっ。兄さん初めての顔だね? サービスがてらまけてやるよ。可愛い妹さんだね、それともあんたの子供かい?」

 この店の女将がそう言って来たが子供は無理があるだろっ! 俺はまだ十八歳だ! マリアベルは……推定六歳? 七歳? かな? 詳しくは分からん……

「妹……だよ」

「似てないんだね。まぁそう言う家も多いからねぇ。はいお嬢ちゃん付けてやるよ」

 そう言って女将はマリアベルの前髪にぱちっと髪飾りを付けていた。

「おばさん、ありがとう!」

 ご機嫌なマリアベルだったがその後女将にもっと髪に櫛を入れてやりなよ! と言われ櫛も買わされた。商売上手な女将だ。たくましいことこの上ない。


 それから毎晩マリアベルの髪に櫛を入れるのが日課となった……マリアベルは俺のことをお母さんと呼ぶようになった……


 肉を野菜や果物に交換して家に帰る。ついでに川で魚を釣る。マリアベルも楽しそうに魚を釣っていた。

「おい、あまり川に近寄るなよ……落ちるぞ」

 そう言うと大人しく川辺から離れる。川に流されて来たんだから覚えていなくても苦手意識は強いようだ。一人では絶対に川に近寄らない。

「うん。もし落ちてもお母さんならちゃんと助けてくれるよね?」

 それはお母さんの仕事ではないような気がするが、我が子が落ちたら無理してでも助けるか……

「まぁな。俺は泳ぎが得意だからなぁ」


 のんびりとした空気が流れる。

 そして魚を釣り終えて、家に帰る事にした。

 食事を作るのは得意ではない。兎に角、口に入れば良いと思っていたのだが、マリアベルの栄養を考えると野菜や果物、肉が必要。女の子なんだからそのまま齧ると言うことはさせてはいけない。

 シンプルな皿やカトラリーを最低限揃えて、二人で食卓を囲む。

 今日はサンドイッチと野菜スープ、魚を焼いた簡単なものだった。野菜スープはたくさん作ってストック出来るから楽だ。

「今日のスープはトマト味だ!」

「あぁ。形が悪くて熟しているからスープがおススメだと言われてな、コクがあってうまいな」

「うん。美味しいよ」

 凝った物はできないが、バリエーションは増えたと思う。


 それにサンドイッチはパンに具材を挟むだけと言う素晴らしい料理だ。


 それから更に一年が経ち国の騒動も落ち着いて来たようだ。第二王子が王太子となり、第一王子は東の塔に軟禁される事になった。後継者争いにピリオドを打ったようだ。

 しかしもうしばらく様子を見る事にした。両親からはそろそろ帰ってこい。と手紙を貰った。

 となるとマリアベルも連れて帰る事になるが、急に違う国の貴族の家に連れて行く事は躊躇うな……

 俺の妹とすると親父の不義の子だと言われるだろうし……母にも悪いし我が家の遠い親戚かゲストと言う事になるだろう。親父には話しが通っているだろうから連れていきゃなんとかなるだろう。
 
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

処理中です...