私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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リアンさんと一緒!

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「……マリー嬉しい気持ちはわかるが、離れなよ」

 ヴェルナーがマリーの肩にポンと手を置いた。恨めしそうにヴェルナーを見るマリアベル。

「だって……いなくなるもん」

 不貞腐れる感じでヴェルナーを見る。


「卿は約束してくださっただろう? マリーの涙で卿の上着にシミを作っているんだよ! 離れるんだ」

 上着のシミを確認したようで申し訳なさそうにリアンから離れるマリアベル。

「……ごめんなさい。汚してしまいました」

「なに、気にする事はない。マリアに汚されたシャツは一枚や二枚じゃ済まないよ。今更だな……」

 ハハッと豪快に笑うリアン。



「マリーもこんな調子だし、もう会場には戻らなくても良いみたいね? あなた……」

「そうだね。邸へ案内しますのでどうぞ」

 申し訳ない顔をして夫妻はリアンを邸へ誘おうとする。


「せっかくのデビュタントなのに勿体ない……マリアは良いのか?」


「うん。もう陛下にご挨拶したしダンスも踊ったからやる事ないもの。後は帰るだけでしょ? 兄さま違うの?」

 きょとんとした顔で帰る! って言うマリアベルに問題なさそうな家族たち。ペルソナ公爵に至っては

「もう用はない。帰るに限るね」

 帰ることを推奨している。後で知る話だが姪であるマリアベルに変な虫がつかない様に牽制している様だ。デビュタントで見染められ求婚の話もある。勿論断る事は身分的にも可能だけどしつこい男というのはどの世にもいる。


「そう言うわけで帰るとするか」



「うん! マリアはリアンさんと帰る」

 リアンの腕を組むマリアベル。何か言いたそうなリアン……


「……ダメに決まっているでしょう。マリーはヴェルナーと帰りなさい! 家に帰ったらゆっくり時間があるでしょう。我儘は許しませんよ?」

「ママのケチンボ! ねぇ、パパだめ? マリアはリアンさんと、」

 にこりと笑って頭を撫でられた。


「ダメだ。卿に迷惑になるからね。うちだけの問題ではないから却下! ヴェルナー! 先にマリーを連れて邸に帰るように」

「はい」


「……リアンさん……あとでね」

「あぁ」

 ******


「卿、申し訳ない。邸に帰ったらすぐに上着を洗濯しますので……」

 マリアベルの涙? 鼻水? とにかくマリアベルから出た液体やリップが上着とシャツにべっとりとついていた。

「あぁ、これですか……別に気にしなくても、」

 苦笑いするリアンに申し訳なさそうな顔をするロマーニ夫妻だった。

「よっぽど嬉しかったんですね、あの子」

「あぁ、卿には本当に感謝しかありません。この度はありがとうございました」

 ロマーニ夫妻が頭を下げる。


「礼など不要ですと、何度も申していますよ。あの時は私も楽しく暮らしていました。それに田舎にいたので夫妻がマリアを探しているとは知りませんでした。もっと早く気づいてやれなかった事は私のミスです」

「いいえ。娘が今元気に過ごしているのは卿お陰だと日々感じています。こうして過ごせるのも卿が娘を見つけてくれたからです」

「それを言われると……マリアはとても成長していて一瞬誰だか分かりませんでした。私の中のマリアは八歳のままでしたから」

 優しく笑うリアンを見て夫妻は幸せそうに笑った。


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