私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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目覚め

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 チュンチュンと鳥の囀りで朝を迎えた。こんなに穏やかに朝を迎えるのは久しぶりだった。疲れのせいか眠りが深かったのだろう。それに緊張もしていた。

 ロマーニ侯爵からマリアベルに会って欲しいと言われて断ることも出来たのだが、ちゃんと成長をして姿をこの目で確かめたかったと言うのもあった。

 あれから七年も経っていて家族と暮らすうちに俺のことなんて忘れているかもしれない。と思っていた。それならそれで良いとも思った。寂しくないといえば嘘になる。


 窓の外に目をやる。朝日と共に目覚めるのが好きだからカーテンは開けておいた。景色は朝起きてからの楽しみだと思っていた。

「起きるか……」

 流石に人の屋敷で剣を振る訳にはいかないよな。身体が鈍らなければ良いのだが……


 ベッドから下りようとした。その時

「リアンさん! おはよう」

 扉が急に開きドスっと体に衝撃が……

「お嬢様! いけませんよ! 勝手にお部屋に入るなんて」

 屋敷のメイドの声……俺の腰にはマリアベルが突撃してそのままベッドに倒された。

「お、おい! マリア離れろ」

「……ヤダ。リアンさんがちゃんといるって確かめなきゃ」

 ふわっとマリアベルから優しい匂いがした……って何を考えているんだか……


「約束しただろう、ちゃんといるぞ。確認したら離れてくれ。俺は寝起きなんだ」

 むすっとした顔を見せるマリアベル。貴族の令嬢は笑顔を貼り付けているもんだろう……俺は好きじゃないけど。

「むぅ。分かった……」

「おはよう、マリア……朝から元気だな……」

 ベッドであぐらをするような形で座り直した。マリアはメイドに怒られてベッドの際に立っている。

「お稽古しないの?」

 ……稽古? 俺はわからずにに返事をせずにマリアベルを見ていた。

「剣の稽古しないの? 毎日していたでしょう?」

 あぁ……覚えていたのか。

「流石に侯爵家でする訳には行かんだろう……」

 人の家で朝から迷惑だろ……


「? なんで? リアンさんと一緒にお稽古したくて呼びにきたんだよ! 行こっ!」

「……? 話が見えんのだが」

「着替えは?」

「するけど……っておい」

「手伝ってあげる!」

 シャツに手を出そうとするマリアベルはメイドに睨まれ「お嬢様! 良い加減になさいませ!」
 
 と怒られていた。怒られて当然だろ……うら若きレディが男のシャツを脱がせようとしているんだ!

 侯爵夫妻はどのように教育をしてきたんだ……自由すぎるだろ……



「……着替えるから待っていてくれ」

「えー。手伝って、」

「お嬢様!!」

「頼む。すぐに着替えるから待っていてくれ」


「……分かった。待ってる」

 よく考えるとマリアベルの服を着せてやったり一緒に住み始めた頃は風呂にも入れてやっていたが……俺もよく上半身は脱いでいたか……昔の話だ。


 ******

「待たせたか?」

 すぐに動きやすい格好になって扉を開けた。

「ううん。待ってない! 行こっ」

 俺の手を取り歩き出すマリアベル。昔と今は違う……手を繋いで歩くのはマズイだろ。

「手は繋がなくていい……」

「なんで?」

「マリアは成人したんだ。他人の俺と手を繋いではダメだろ? 俺は男なんだぞ……」

 マリアから見たらおっさんだけど……


「……マリアのこと嫌いなの? リアンさんの手は大きくて大好きなのに……」

 うっ……予感的中……その上目遣いはやめてくれ。涙もうるうると瞳に溜め込んでいる……

「マリアのこと迷惑なの?」


「好きにしろ……」

 って俺はバカだ……


「ありがとう。リアンさん」

 キュッと腰に抱きついてきた。俺は肩の力が抜けた……やはりマリアは人たらしだ。だからうっかり助けて一緒に暮らしていた。

 涙と笑顔で何とかしてしまう……末恐ろしい。

「分かったなら、そろそろ離れてくれ。朝の稽古だろ?」


 ん? そういえば一緒にって……言ったな。どう言う意味だ……?


 


 




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