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フランツ
しおりを挟む『書類の整理をしておきました。向かって右は急ぎのものですから早めに目を通して下さい。来週末は他国からお客様が来られます。我が家のパーティーに出席してくださるので殿下もお忘れなく』
西の国から使節団くるんだったな。王弟の子息がその中に加わっていて歳も近いことから交流をするんだったな。
『あぁ、分かっている』
『そうですか。それでは私は失礼しますね』
ん? 私はまだ執務室に来たばかりなのにもうどこかへ行くというのか? 婚約者として交流を深めようとは思わないのか?
『帰るのか?』
時間を見る限りまだ王宮に来たばかりだろう。書類の整理だけの為に来たのだろうか。確かに執務は膨大でアリスに手伝って貰っているのは助かる。最近顔を合わせるのはこの執務室でくらいだ。アリスがデートをしたいと言うのなら時間を設けてやっても良いと思っているのだが、可愛げのないアリスは言ってこない。
『今から王妃様のお茶会です』
あぁ。茶会か……忙しくても行われる恒例の茶会。母は娘が欲しかったが五人の子は皆息子だった。
娘が欲しくて最後の望みにと頑張った結果産まれたのは私だったものだから、母は私が産まれた後にショックで倒れたらしい。
しかし王妃としては五人の子を元気に産み育てた功績は大したものだ。娘が欲しかったようだが五人の息子に相手ができれば、義理だが娘は出来るのだから。
五人の息子は厳しく育て普段はその婚約者達には優しいが、妃教育の間は厳しかったようだ。メリハリと言う事か?
アリスも相当参ったようでよく泣いていたらしい。せめて私の前で泣けば可愛げがあるものを庭の隅で泣いていただの、帰る途中の馬車で泣いていただのと報告を受けた。
慰める暇もない。泣いている姿を私に見せないという事は知られたくないという事だろう。
お茶会は最低でも月に二度は行われる。国のトップレディ達が楽しむ茶会を、国王であっても邪魔ができないのだ。
それなのにレイラは王妃不在の茶会で義姉上達に話しかけた。ある意味勇者だとは思うし怖いもの無しというか……冷や汗しか出なかったぞ!
義姉上達は本当の姉妹のように仲が良い。よって結束力が強い。アリスと婚約破棄をした私を恨んでいるだろう。末の妹ととして可愛がっていた。
その時は、それがレイラに変更しただけだと思っていたんだ。
しかしなんだ、あのカーテシーは……驚いた。それに一介の貴族の令嬢が王太子妃に声をかけるなんて……王妃不在の現状では一番身分が高い女性なんだぞ!
アリスと婚約破棄をした。全校生徒の前で宣言した事により翻る事はない。まさか兄のフェリクスが来るとは思わなかったが、フェリクスが来た事によりパーティーは中止となり解散となった。
今日、長兄で王太子ヴィンセントが帰ってくる日だ。側近として付いていったアリスの兄クレイグも帰ってくる。文句を言いにくるだろうがきちんと説明すれば問題はないだろう。
婚約者が変更になっただけだ。
******
「兄上無事にお帰りになられたと聞き安堵しています」
兄が帰ってきたので挨拶へと行った。
「あぁ、おまえか……」
チッ。と私の顔を見て舌打ちをした。王太子妃である義姉が何か吹き込んだのだろうか?
兄は王太子として幼い頃から厳しく教育をされていたが、私達弟や婚約者にも優しく接してくれていた。とても尊敬している。いつも私達の気持ちに寄り添ってくれて時間が許す限り話を聞いてくれるような優しい……
「兄上? お疲れですか」
「おまえの顔を見たら余計に疲れが出た。何か用か? ないのなら出ていってくれ」
え? 兄のそのような姿を見たことがなかった私は狼狽した。
「あ、兄上に話があります」
「何度も話すのは面倒だろう、明日クレイグが来た時に話してくれ。私は疲れて一刻も早く休みたい。アルミナとの時間を邪魔するな」
そう言われれば出て行くしかなかった。クレイグ殿もくるのなら一回で話を済ませた方が良いのかもしれない。クレイグ殿はアリスの兄だしな。
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