婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
24 / 93

アリスの登場

しおりを挟む

『レイラ、落ち着いた? お茶の準備をしたからお茶にしましょう。殿下もどうぞ』


 アリスが二人の様子を見に庭へとやってきた。せっかく良い感じだったのに。邪魔!


 応接室でお茶を飲むことになった。アリスと私と殿下の三人。


 アリスに気分はどうかと聞かれた。

『殿下が謝ってくださって……とてもお優しい方なんですね。こんな素敵な婚約者がいてアリスフィア様が羨ましいですわ』

 甘える様な眼差しを殿下に向けるレイラ。

『へぇ、君はそんな風に私の事を見てくれるんだね。何処かの誰かとは大違いだ』


 アリスはすました顔をして微笑んでいた。


『……私は嘘はつきませんわ。こんな私に殿下は謝ってくださいましたもの。殿下は悪くありませんのに私が勝手に勘違いをしただけですのに』


『君は優しいね』


『私はレイラと申します。どうか名前で呼んでください』


 一瞬だったけどアリスの眉がピクリと動いたような気がした! ふーん。


『それではレイラ嬢、と呼ばせてもらおうか』


『レイラで結構ですわ』


 殿下もニヤリと口端を上げていたから、アリスが気にしている事を察したみたい。


『そうか。レイラだな。私のことも名前で呼んでくれ』


 へー。アリスも名前で呼んでいないのに私には許しちゃうんだ。


『フランツ様とお呼びします』


 二人でにこりと笑い合ったらアリスが

『私はそろそろ……』


 アリスがそんな事を言って席を立とうとした。もう、ここからが良いところなのにっ!

『母や義姉上達から伝言だ。今度の茶会に出席する様にとの事だ』

 フランツ様がアリスに素気なく言ったらアリスも素気なく答えた。


『……分かりましたとお伝えください。ご用はそれだけですか?』

『せっかくの機会だからお前の口からレイラの話をしてくれ、今まで話題に出なかったよな?』

『酷いわ……私の存在を知られたくなかったのね』

 悪口すら言っても無いってこと?! さっきの悲しみの演技が無駄じゃないの……ど、どうしよっ。


『わざわざうちの事情をお話しして殿下のお時間を取らせるのはどうかと思っただけですよ。レイラはとても本が好きなのですわ。授業のない時はいつも本を読んでいるのよね?』

 レイラと殿下の両方を見るアリス。


『ほぅ。読書が趣味なのか』


『はい。最近は刺繍も始めました。まだアリスフィア様みたいに上手くありませんし、先日は指を針で刺してしまったんですよ』


 殿下に手を見せてアピールしてみた。すると手を触れてきた。


『それなら今度王宮の女性達が使っているクリームをプレゼントしよう。とても良く効く様だから』

 と言ってから手を離してきた。ビックリして顔が赤くなってしまった。アリスを見るとやはり興味なさそうにお茶を飲んでいた。


『レイラ良かったわね。王宮のクリームは人気があるのよ。さて、今度こそ』

 アリスがまた席を立とうとした。

『アリス、私は客だぞ。わざわざこの私が伯爵家にまで足を運んだのだから相手をするのは当然だろう。席を立つなんて失礼じゃないのか? その様な態度を取っても良いと習っているのか?』


 アリスがフランツに注意されているわ! おもしろーい!

 すると笑みを浮かべて

『殿下が会話を楽しんでいらっしゃいますのに、退席をしようなどと失礼をお詫び申し上げますわ。私に会いにきたんでしたものね』

『わかれば良い。アリス茶を淹れてくれ』


 温くなったお茶を淹れ直すアリス。まるで使用人みたいだとレイラは思った。


 お茶会のホストはゲストに対して目を光らせ自ら茶を淹れる必要もある。
 お茶を淹れゲストに楽しんでもらうと言うのはお茶会の醍醐味である。


 産地にこだわり香りを楽しむのは至高の世界であり、美味しいお茶を淹れると言うのは嗜みともされるが、自信がないのなら、それはプロ使用人に任せれば良いだけのこと。


 アリスはその辺も王宮でしっかりと学んでいた。フランツの母でありこの国の王妃は、お茶会を開く時に息子の妻や婚約者達にお茶を振る舞うのが大好きで、その逆も然り。


 レイラはまだその境地に達してないだけ。だから使用人みたい。などと思うのだ。


『アリスが淹れる茶は美味い』


 アリスは私の前にもお茶を出してきた。伯爵家御用達の香り高い茶葉を使っているだから美味しく淹れて当然だわ。なによ、それくらいで偉そうに……とレイラは思った。



 それからしばらくしてフランツは帰って行きお茶会の招待状をアリスに渡していた。王家の紋章入りの見るからに豪華な手紙だった。


『私も連れて行って欲しいわ』

 王宮のお茶会ならきっとお姫様の様な気分を味わえるわね。王妃様とお近づきになって、それから……ふふっ。貴族って凄ーい!


『連れていきたいのは山々だけれど……王妃様のお茶会だから呼ばれていない人は行けないのよ。王妃様主催の公なお茶会が年に何度か行われるからお呼ばれされる日が来ると良いわね。その日のためにレイラはマナーの授業をしっかりと受けなさいね』


 ですって! ちゃんと受けてますけど!?


『マナーを身につけないとね、鎧をつけないまま戦場に行く様なものなのよ? そうすると傷つくのは自分なのよ』


 ですって! だからちゃんとやっているってば! えっらそうに!


『そうならないように頑張りますわね!』


 にこりとレイラは笑い、応接室から出た。あっ、王子様とのロマンス溢れる本を読まなきゃ! 今後のためにねっ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

婚約破棄ですか? 損切りの機会を与えてくださり、本当にありがとうございます

水上
恋愛
「エリーゼ・フォン・ノイマン! 貴様との婚約は、今この瞬間をもって破棄する! 僕は真実の愛を見つけたんだ。リリィこそが、僕の魂の伴侶だ!」 「確認させていただきますが、その真実の愛とやらは、我が国とノイマン家との間で締結された政略的・経済的包括協定――いわゆる婚約契約書よりも優先される事象であると、そのようにご判断されたのですか?」 「ああ、そうだ! 愛は何物にも勝る! 貴様のように、金や効率ばかりを語る冷血な女にはわかるまい!」 「……ふっ」  思わず、口元が緩んでしまいました。  それをどう勘違いしたのか、ヘリオス殿下はさらに声を張り上げます。 「なんだその不敵な笑みは! 負け惜しみか! それとも、ショックで頭がおかしくなったか!」 「いいえ、殿下。感心していたのです」 「なに?」 「ご自身の価値を正しく評価できない愚かさが、極まるところまで極まると、ある種の芸術性を帯びるのだなと」 「き、貴様……!」  殿下、損切りの機会を与えてくださり本当にありがとうございます。  私の頭の中では、すでに新しい事業計画書の第一章が書き始められていました。  それは、愚かな王子に復讐するためだけの計画ではありません。  私が私らしく、論理と計算で幸福を勝ち取るための、輝かしい建国プロジェクトなのです。

婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ

鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。 平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」 婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。 彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。 二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。 ……はずなのに。 邸内で起きる不可解な襲撃。 操られた侍女が放つ言葉。 浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。 「白の娘よ。いずれ迎えに行く」 影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。 守るために剣を握る公爵。 守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。 契約から始まったはずの二人の関係は、 いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。 「君を奪わせはしない」 「わたくしも……あなたを守りたいのです」 これは―― 白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、 覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。 ---

【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」 「成功だ! 召喚は成功したぞ!」 聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。 あっ、そうか、あの魔法陣……。 まさか私、召喚されたの? 突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。 まったく。転生の次は召喚? 私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。 また、同じような世界に来たとは。 聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。 こんな理不尽許してなるものか。 私は元の世界に帰るぞ!! さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか? 作者独自のファンタジーの世界が舞台です。 緩いご都合主義なお話です。 誤字脱字多いです。 大きな気持ちで教えてもらえると助かります。 R15は保険です。

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ
恋愛
 父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。 「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」  庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。  少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *) HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい! 色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー! ★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!  これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい! 【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

処理中です...