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次の町は花の綺麗な伯爵領
しおりを挟む「ありがとうございました」
商人に乗せてもらった荷馬車を降りて礼を言う。
「いやいや。構わないさ、ついでだったし賃金まで貰っちまった。こんな綺麗な嬢ちゃんを荷馬車なんかに乗せて悪かったね。乗り心地も悪かっただろうに」
商人のおじさんにそんなことを言われた。たしかに乗り心地は伯爵家の馬車に比べると雲泥の差があるし、決して綺麗ではなかったけれど幌があるだけで幾分かは疲れが軽減され、経験したことがなかったのだから新鮮と思えば新鮮。途中で放牧している牛達に邪魔をされたりヤギに邪魔をされたりもしたけれど、微笑ましいハプニングだった。
商人のおじさんはこれから花の苗や肥料などを仕入れに行くのだそう。お礼を言って別れた。
「少し調べ物をしてきますので、アリスとミリーは休憩をしていて」
ショーンは町に着くと宿の手配や馬車の予約などをしてくれるから今回もきっとそうなのね。出来る執事がいて助かる……やはり一人では無理だったと痛感する瞬間。
「ショーン兄さん、いつもありがとう。ショーン兄さんは疲れていないの?」
私達には休憩を勧めてくるけれどどうやって手配をしているのか見てみたい気もする(今後の為に)
「あぁ、平気だよ。ここは花が有名な町だと商人が言っていた。植物園の中にカフェがあるようだから花を見ながら休憩をしたらどうだ?」
すぐ近くに植物園の看板が立っていた。大人しくお茶を飲ませておいた方がショーン的には楽なのかもしれないわね。
「そうね。ミリー姉さん良いかしら?」
「えぇ。そうしましょう」
マークの家から付いてきた護衛もいるし、別行動でも問題ないとショーンは思っている。
いつものようにホテルを探しに行こうとしていた。そして町のことも調べようと思い、宿泊先に最適なホテルはないかと商人に勧められたホテルのフロントへ足を踏み入れた。
「ピンクブロンドの髪色で年齢十七歳くらいの美しくて可憐な女性は泊まっていないか?!」
フロントで焦ったように声をかける男性。貴族だろうか? 身なりが整っている。
「いえ。そのような方はお見かけしておりません。もしいらしても我がホテルにお泊りのお客様の個人情報をお教えすることは出来ません」
「とても可憐で笑った顔は花が咲いた様で、ピンクブロンドの髪の毛は女神でさえ嫉妬するほどの艶があり美しいのだ。本当に宿泊していないのか? くっ、行き違ったのか」
「他を当たってくださいませ。お客様に迷惑がかかります。警備員を呼びますよ」
キッパリと返答をするフロントの女性。個人情報を売らないとはしっかりした対応だと思った。このホテルが空いていると良いな。と思いふと先ほどの男性と目が合った。
男性は“ピンクブロンドの髪で十七歳”と言った。ピンポイントでそんなことを言うだろうか? うちのお嬢様を探している? なぜ?
「すまないが、ピンクブロンドの髪色の美しくて可憐な女性を見ませんでしたか?」
男性に声をかけられた。この人は一体? 怪しい人には思えないが……
「失礼とは存じますが、あなた様は……」
一般市民に扮している身だから失礼に当たらないようにやんわりと聞いてみた。
「あぁ、失礼。私はアーネスト・グレマンという。人を探しています」
ショーンは一般市民に扮していてもここは高級ホテル。高級ホテルに臆することなくいると言うことは、そういうことだ。声をかけられても何らおかしくはない。
「! アーネスト・グレマン様? 人探しというのはもしかして……」
ショーンは小声でアリスフィア様の事ですかと聞いた。すると察したアーネストは頷いた。
「フェリクス殿下から手紙を貰った数日後にテイラー伯爵家のマーク殿から手紙をもらい、そろそろこちらに着く頃だと思い迎えにきました」
と言った。
「場所を変えましょう。私はアリスフィアお嬢様の執事をしております。ショーン・ロバーツと申します」
ショーンはアーネストとホテルを出た。そして最寄りのカフェに入り話をした。アーネストはフェリクスから手紙を貰い、グレマン領へアリスフィアが来る事を了承した。
「令嬢が大勢の前で婚約破棄されるなんて信じられない! 男としてあり得ない!」
と、憤っていた。あんなに可愛らしく優しい令嬢がと、ぶつぶつ文句を言っていた。
「グレマン様はお嬢様をご存知なのですか?」
ショーンが聞くと耳を赤く染めた。
「えぇ、知っています」
と言い目を逸らした。しかしそこは聞くと面倒くさそうなので聞くのは止めよう。本能がそう言っている。
お嬢様は植物園のカフェにいる事を伝え、ホテルを取ろうとしていた。と話した。
「疲れているのは承知しているが、すぐに我が家へと向かいましょう。急いでいけば本日中には着きます。馬車も手配済みですし護衛も連れてきています。テイラー伯爵家の護衛はここで帰しマーク殿に無事合流できたと手紙を書いて渡してもらいます。私は馬で一足先に帰って準備をさせますので、遠慮なく来てください」
腰の低い方だと思ったが、国境近くに領地があり隣国と和平を保ち領地を発展させた家だ。人間的に出来た人柄であるとともに表の顔だろうとも思った。
「はい。それでは遠慮なくお世話になります」
アーネストの用意した馬車に乗るためにお嬢様を迎えに行き、グレマン領へと向かうことにした。ゴール? まであと少し。
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