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初めての乗馬
しおりを挟む「え? 馬に乗りたいですか……」
「はい。ダメですか? クララさんとジェシーさんも乗っていると聞きました」
何がしたいかと聞かれたからお答えをしたのだけれど、あまり良い顔をされないアーネスト様。
「危険ではないですか? 怪我でもされたらと思うと気が気では……」
怪我をするとアーネスト様に迷惑がかかるけれど、せっかくだから挑戦したい。
「あ、そうですわ。大人しい馬をお借りしてもよろしいですか? わたくしの執事ショーンが乗れますので教えてもらいますわ。アーネスト様のご迷惑にならない様に致しますわね」
名案だわ。と手をポンっと叩く。
ショーンは馬に乗れるから一緒に乗せてもらうだけでも良いかも。王子の婚約者をしていると、危険なことはさせて貰えないし絶対にダメと言われていたもの。ネコが飼いたかったのに、ネコは引っ掻く事があるからダメと反対されたのよね……(遠い目)
「いえ! それなら私がアリス嬢を乗せますよ! 私の愛馬は軍馬で二人乗っても問題ありませんし何があっても、命にかえてもアリス嬢をお守りしますよ!」
え、軍馬? って大きくてちょっと怖いイメージ。
「いえいえ、申し訳ありませんわ。最近はクララさんとジェシーさんとブラッシングも体験させてもらっていますし、少しの間大人しい馬を、」
「私がお連れします。そうだ! まずは乗馬をするにあたっての衣装が必要ですね。すぐに用意させます」
「アーネスト様! そこまでは必要ありませんわ! そうだわ。馬じゃなくてボートに乗りたいですわ!」
「ボートですか。良いですね。漕ぎ手は私に任せてください」
「アーネスト様が!? それはいけませんわ! お忙しいでしょうからお願い出来ませんわ」
アーネスト様は私を客人だと言ってくれて色々ともてなして下さり、やりたい事をやりましょう。と言ってくれるのだけど申し訳なくて……
「忙しくなどありません。アリス嬢を接待するのが私の仕事です」
「その様なことは仕事ではありません……それにそろそろあちらも動きがあるでしょうから、連絡が来るかもしれません」
グレマン領に来て二十日が経った。お兄様も陛下も帰って来ている頃だからそろそろ動き出す頃だと思うの。
今は朝食を摂っている最中で今日はその後夫人とお茶をする予定。クララさんとジェシーさんはスパでリラックスしたアーネスト様のお姉様がお迎えに来た。
クララさんに教えた挨拶を披露するとアーネスト様のお姉様はとても喜んでいた。
“お転婆娘がこんなに素晴らしい挨拶ができる様になるなんて……ありがとう。アリスさん!”
少し大袈裟な感じはするけれど喜んでもらえて良かった。小さい子の挨拶は見ていると癒されるのよね。一生懸命な感じが可愛らしいから無理もないし我が子なら余計に思うわね。
“アーネストの事もよろしくお願いしますわね”
アーネスト様も礼儀作法が必要なのかしら。そうは思えないのだけど……
ショーンが咳払いをして話が終わったのよね。クララさんとジェシーさんがいない今、私はする事がなく肩身が狭い思いをしているのよね。
夫人とお茶をしながらお話をしていると、グレマン伯爵が帰ってきたと知らせが届き、夫人と共に急ぎ挨拶に向かうことにした。
「おかえりなさいませ。お話は聞いていると思いますが、こちらアリスさんよ。訳あって我が家で滞在をしていますのよ」
グレマン伯爵には挨拶をさせてもらった事があるので少々気まずい。覚えていらっしゃるかしら……
「我が家の暮らしで何か不都合はありませんか? アリスフィア・ブラック伯爵令嬢、お久しぶりです。歓迎します」
すっと頭を下げる伯爵。
「あ、あの、頭を上げてくださいませ。私はただのアリスという者で、」
「はて、もしかして先日あった件についてでしょうが全て陛下が撤回しましたよ」
にこりと微笑まれる。
「まぁ。そんなことになっていましたのね。何も知らずにいましたわ。我が家もそろそろ動いている頃だと思うのですが、グレマン閣下は何かご存知ですか?」
そっと胸元から手紙を取り出すグレマン閣下。
「この手紙を預かってまいりました」
お父様とお母様お兄様ジェレミーにお義姉様達から。
「もうすぐブラック伯爵家から迎えが来ると思います。遅くなって申し訳なかった、と伝言を受けました」
「ありがとうございます。グレマン閣下のお留守中にお邪魔する形になり申し訳ございませんでした」
改めて礼を伝える。
「とんでもございません、王都から離れ長距離の移動も大変だった事でしょう。孫の世話までしていただいたと聞きました。我が家での滞在は残りわずかとなるでしょうが、心休まる様にゆっくりとお過ごしください」
なんてお優しい方なんでしょう(見た目とは違ってなどとは言えませんわね)
「残りわずか……父上、アリス嬢は馬に乗ってみたいと言っておりましたので、お連れしてもよろしいですか?」
結局乗馬をすることになる。
「それは構わないが怪我だけはさせない様にな。お前が一緒に乗るのであれば問題ないだろう」
「そういうことですのでアリス嬢いきましょうか?」
そこまで言われて断れない。
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