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夜明けと謹慎生活
しおりを挟む「父上、ご無事でお帰りになられたようで何よりですっ!」
翌朝、王の執務室に呼ばれフランツは扉を開け開口一番に笑顔で言った。
「座れ」
低い声で一言だけ。
「は? えぇ」
素っ頓狂な声を出すフランツは言われた通りに座った。
「早速だがお前が下した命令は王である私の名を持って“なかったこと”になった」
「私の命令? ですか」
「そうだ。くだらない命令をアリスフィア嬢にしただろうっ! 話を聞いた。慰謝料が発生する、」
「え? 婚約破棄は認められたのですか? しかも慰謝料まで貰えるんですか? そうですよね、アリスが悪い、」
「お前による過失での婚約破棄に決まっておろうが! 慰謝料を払うのはこっちだ!」
「え? なぜです? ブラック家は金に困ってませんから慰謝料などいらんでしょう。それにブラック伯爵家とクルー男爵家は血縁関係があるから婚約者が変わっただけです。内部でのチェンジという事で、」
頭を抱える陛下……
「こんなに話が通じないやつだとは思わなかったぞ……フランツに聞く。お前は第五王子として、紳士として、男として、人として愚かな事をした、それは何かわかるか?」
紳士として、男として、人として決して愚かな事? なんだろう。
「わかってないのか……今まで何を学んできたのだ。アリスフィア嬢という婚約者を蔑ろにしたじゃろう。彼女は幼き頃から王族に嫁ぐものとして努力してきた。常に大勢の貴族から見られ自由な時間もなく貢献してきたのだぞ、分かっておるのか?」
「私の婚約者レイラが言うにはアリスはいつも勉強をサボって茶会ばかりしていたと言っていました。それに執務も放置して、母上や義姉上達とお茶会ざんまい、」
「しっかりとこなしておったよ。お前はそんなこともわからんのか? いや。分かろうともしなかったのだな。ここでいうお茶会とは情報を集める場所だ。ただ楽しくお喋りばかりしとるわけないだろう! 執務を放置? アリスフィア嬢は周辺国の言語を理解し流暢に冗談を交え会談に参加しているだろう。どれだけ助かっていると思っている? お前はその会談をサボって浮気相手の令嬢と遊びに行っていた様だな」
サボった事がバレていた!
「学園を卒業後お前とアリスフィア嬢には外交をと思っておったがお前にはムリだ」
「え! 何を仰るのですか! 私はやれますよ。レイラと共にまず周辺国を周って、」
アリスの代わりにレイラと周れば良いだけだ。今のままではレイラは間に合わないかもしれないが、私の周りには優秀なものも多いから喜んでレイラを助けてくれるだろう。
「そのレイラ嬢の義父がレイラ嬢では王子妃は無理だと断ってきた」
「無理ではありません! レイラは頑張れます。レイラがアリスより優れている女性だと分かれば結婚を認めてくれますか!」
「ほぅ、良いだろう。アリスフィア嬢より優れていると分かれば誰も文句は言わんじゃろう」
そうか! レイラが頑張れば問題ない!
「その代わり教師をつけてください。このままでは母上や義姉上達も認めないでしょうから、ある程度マナーが上達するまで会わせることは出来ませんが父上からもそう伝えてもらいたいのです」
先日の義姉上達の様子を見るにまだレイラと合わせるのは早い。きちんと挨拶ができて時事ネタについて行けるまでにならないと、食事やお茶会すら無理だな。
「あい、わかった。わしもそれまで会うことはせん。嫌な思いをしたくないからのぅ」
「え? 嫌な思いとは?」
「マナーがなってない者と会うことは出来ん。わしは国の顔。わしが会いたいと思う様な淑女になる様に頑張ることじゃ。いいな?」
父上は国王で国の顔。息子の婚約者でもおいそれと会うことはできない存在。そんな父が会いたいと言ったならこっちの勝ちだ!
私とレイラは離宮に住むことが許された! 王子妃に相応しい教育係も付けた。
私は朝から晩まで執務に追いやられることになるが二人で頑張ろう。と約束をした。
******
「え! 外国に遊びに行けるの? 行ったことないから凄い楽しみ!」
レイラに外国語の習得を約束させた。
「フランツは何ヶ国語が話せるの?」
話せるかと言われれば……
「三、いや。四カ国語くらいだな」
挨拶や単語が分かるくらいだけど、通訳は必ず居るから問題ないし共通語は話せるからな! 共通語を話せない方がおかしいんだ。そうに違いない!
「え~すごぉ~い! フランツ天才!」
「そ、そうか? それほどでもないぞ。一緒に外国へ行くためにはレイラにも習得してもらいたい。レイラ言っていただろう? いろんな国へ行きたいって。仕事も外国の客人を招くことが前提なんだ」
結婚後は屋敷が与えられ、その屋敷に外国人ゲストを招くことも多くなるだろう。だから各国のマナーも含めて学ぶことは多い。アリスは十年掛かった。素直なレイラなら二~三年もあれば共通語とその他挨拶やマナーくらいは身につくだろう。
勉強するにも素直が一番だからな。
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