婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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アリスフィア嬢

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 ~アーネスト視点~

 ん? 殿下から手紙が? 珍しいな。何か隣国で不穏な動きがあるとか? そう思い開封した手紙の内容に驚きを隠せない!



 ───────!



 なんていうことだ! 第五王子はバカなのか! 婚約破棄? 王都からの追放? クレマンへ行けと言われたからグレマンに行くように言った。

 追っ手が来てもクレマンとグレマンうちなら逆方向だからな。


 第五王子の婚約者といえば、ピンクブロンドでグリーンの瞳が特徴的な美しい令嬢だ。幼い時から王宮で王子妃となるべく礼儀を学び将来は外交の仕事をすると聞いている。

 令嬢の両親も他国との繋がりが深い方で陛下と共に外交にも力を入れている。令嬢の兄は王太子殿下の側近だし、王妃からの信頼も厚い伯爵令嬢だと聞く。

 令嬢は覚えていないかもしれないが、私は令嬢に会った事がある。



 王宮の庭園の片隅で泣いている令嬢がいた。明らかに裕福な貴族の令嬢だった。

“ぐすん、ぐすん。なんでこんなに覚えが悪いのかしら。先生に時間ばかりとらせてしまって……悔しい。もっと勉強しなきゃ。うっうっ……”

 そんなに目を擦ると傷がついてしまう……この令嬢は負けん気が強いのだな。それに先生を思いやれる優しい令嬢だ。見られたくないからこんな庭の片隅で泣くことしかできないのか……と思いそっと隠れる。


 慰める言葉も思い当たらないし、知らない男に声をかけられたら驚くだろう。そっとしておきたいが気になっていた。

 
「あ、アリスちゃんここにいたのね? そんなに目を擦っちゃダメよ。アリスちゃんはすごく頑張っているし先生が真面目で教え甲斐があるって褒めていたわよ。私と一緒にいらっしゃい。家の人に心配をかけたくないのでしょう?」

「シャロンお義姉様……」

「アリスちゃん、美味しいお茶とお菓子があるのよ。落ち着くまで私と一緒にお茶をしましょうね」

 手を引いて令嬢を連れて行った。





「ふぅん。盗み見? シャロンに気があるとか?」

 そこに立つのはフェリクス殿下だった。

「ま、まさかっ! 先ほどの女性はフェリクス殿下の婚約者でしたか」

 優しそうな雰囲気を持ちほわっとした感じがするがフェリクス殿下の婚約者となると一筋縄ではいかない様な女性なのだろう(顔はよく見えなかった)


「迎えに来た令嬢が私の婚約者。泣いていたのは一番下の弟の婚約者。アリスちゃんっていうんだけど、頑張り屋さんでさ、たまにこうやって一人で泣いてるんだ。私が声をかけるより女性同士の方が良いだろう?」

 そりゃそうだ。

「弟はまだ幼くてさ、アリスちゃんがしっかしりしなきゃと頑張りすぎて……周りの期待もプレッシャーなのかもしれない。っと、こんな話をして悪い。アーネストはパーティーに参加するの?」

「はい、父に連れられてやって来ました」

「珍しいね。王都に出てくるなんて」

「えぇ、まぁ、そうですね。王宮に来るのも久しぶりなもので、庭園を散歩中に先ほどの令嬢が涙している所を目撃してしまいました」


 それからフェリクス殿下と何気のない会話をして屋敷に戻る。次の日パーティーで涙していた令嬢が笑顔で社交を行っている姿に胸を打たれた。


 私が父といるとブラック伯爵に声をかけられた。隣にいた令嬢は昨日の涙していた令嬢だった。
 隣国とのちょっとした争いを収めたのが私の父でその後私は父の補佐で隣国との会談に付き合わされ、その時に負傷した腕がまだすこし痛い。誰にも気付かれていないと思っていたのだが、令嬢に“腕を痛めているのですか?”と言われた。“いえ、大したことはありませんよ”と答えた。

“それでもお大事になさってください”と言う。誰にも気付かれていないのに令嬢だけは気がついてくれたんだな。と心に温かいものが芽生えた。


 しかし彼女は第五王子フランツ殿下の婚約者だ。と自分に言い聞かせた。その後会う事もなかった。


 ******


「きゃぁぁっ。高いです」

「アリス嬢、大丈夫ですよ。落ち着いてください。アリス嬢の緊張が馬に伝わってしまいます。私がしっかりと支えていますのでご安心を」

 しっかりと支えるってなんだよ……変な意味はない!

「まずは目を瞑って深呼吸しましょう」

 一緒に深呼吸をすると石鹸の香りがした……どこから香って……アリス嬢からしかないよな。これはヤバい。

 すーはーすーはー。と素直に深呼吸をするアリス嬢に申し訳なく思った。

「ゆっくり目を開けて周りを見て下さい、風景を楽しみましょう」

 ゆっくりゆっくりと目を開くアリス嬢。

「下を見ないように。今からゆっくりと歩き出しますので、それに身体を合わせるのです」

 ゆっくり歩き出す馬にアリス嬢はようやく落ち着いて来たようだ。

「風を感じますね」

「すこし余裕が出て来たのなら早歩きにしましょう」

 この馬はリタという馬で初心者が乗るには丁度いい優しい性格の馬だ。私の愛馬は軍馬で足腰が強くとても速いのが自慢だが、軍馬に令嬢を乗せるな! と父に言われた。
 私の愛馬は気性が荒いからだ。気に入らないと暴れる事もある……そこも可愛いのだが、誰にも理解してもらえない。


 三周ほど周った所で声を掛ける。初めて馬に乗ると……体が(お尻)が痛くなる頃だ。メイド達に念入りにマッサージをするように言っておこう。

 楽しんでくれたようでよかった。一人で乗れるようになるには一・二回では無理だから滞在中には叶わないだろう。

 


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