47 / 93
クレマン子爵
しおりを挟む「アリスフィア・ブラック令嬢を匿っているな?」
「へ?」
クレマン子爵は素っ頓狂な声をあげる。
「居るのは分かっているんだぞ」
「は?」
どうやら王都から来たと思われる三人の男達。私は何も知らないし急にブラック伯爵令嬢がいる。と言われてもピンとこない。
もし我が領地に来てくださるのなら歓迎をするに決まっているし、光栄な事だ。
「……む。本当に知らんと言うのか」
「はい。知りません。それにブラック伯爵令嬢は王子妃となるべく令嬢。子供の頃ならともかく、おいそれとこんな遠くへ足を伸ばすことは出来ないでしょう」
三人の男達は、がっかりしたように肩を落とす。
「それではどこへ行ったというのだ……私達はアリスフィア様をお守りしたいのに」
ん? よく見れば王宮の護衛騎士と思われるが……
「あの、何かあったのですか?」
言い淀む男達。
「令嬢の身に何かあったのですか? 言える範囲で構いません。私で何か手助け出来ることがあるかもしれません」
男達は悩んだが言える範囲で子爵に説明する事にした。こんなところまでやってきて、すごすごと引き返すことは出来ない。
「まず私達は王宮で第五王子の護衛騎士をしていました。王子の命令でクレマン領にアリスフィア様がいないかと探しに来ました。こちらへ来る途中にアリスフィア様の姿をお見かけしなくて……こちらで待たせていただくことは出来ませんか?」
「それは勿論良いのですが、なぜ令嬢がこちらに? 来られるのならどれだけでも迎えをよこしましたのに」
あー、それはー、そのー、あのー、など三人の男達の目が泳ぎ出す。しかしすぐにバレると思い、クレマン子爵に婚約破棄の件を伝える。
「はぁっ?! 第五王子とはそんなにバカで浅はかな男なんですか! アリスフィア様は素晴らしい令嬢なのですよ! 優しくて思いやりがあり努力家で、それであって可愛らしくて、周りをよく見ている。令嬢に救われた人間がどれだけいるか」
「子爵のおっしゃる通りです! 私達もアリスフィア様のお側に居たくて第五王子の護衛なんかをしていたのですから」
ん? 護衛なんかって……
「少々、その、言い方に気をつけた方が良いような気がしますぞ」
王子は確かに他の王子達に比べると出来が少々……アリスフィア様が上手く王子をフォローしているというイメージだ。
「良いんです! 第五王子はですね、アリスフィア様というお方がいながら浮気をし婚約破棄をし、身分剥奪に加え王都からの追放を言いつけたクズなんです」
はぁ? それが本当ならクズの中でもトップクラスのクズだな!
「相手はどちらの令嬢なのですか?」
「アリスフィア様に世話になっているレイラとかいう令嬢です。王子はあの女の本性に気がついていないんです! 見た目は悪くありませんがアリスフィア様の様に品があるわけではなく、」
「ん? 待った! レイラとは男爵家の養女となったあのレイラかい?」
あの時孤児院で令嬢が声をかけて男爵が引き取りその後養女にした。うちの息子の嫁になる予定で……って!
伯爵家でアリスフィア嬢の近くでマナーやらを学び立派な淑女になったんじゃなかったのか! 大恩人のアリスフィア嬢の婚約者を奪うような非道な人間だったとは!
こうはしてられん。クルー男爵に手紙を書く。もちろん婚約はなかったことに。そして王家にも手紙を書くことにした。しかしクルー男爵がうちに連絡をしてこないのはおかしいぞ。いや、待てよ。しばらく留守にしていたから手紙が溜まって……
「君たちは王都に戻らなくても良いのか? もしアリスフィア嬢が来たら丁寧にもてなすぞ」
うちとしては喜んでもてなそう。ブラック伯爵は昔から尊敬しているし、今ではアリスフィア嬢の事も同じくらいに素晴らしい方だと思う。
「申し訳ありませんが二十日程お邪魔してもよろしいですか? 何か手伝うことがあれば仰ってください。ただで滞在させてもらうのは気が引けますから」
男達は悪い人間ではなさそうだが、悪者とは悪く見えないようにするのが奴らの手段だから、すぐに信用は出来ない。本当に護衛騎士かどうかはまだ分かっていない(証拠がないのだから)護衛騎士風を装う事も詐欺師なら簡単だろう。うむ、どのように見極めるか……
「それなら、少し行った先の山にクマが出て作物の被害が報告されているのだが、クマを倒してくれないかな?」
三人の男達はパァーッと顔が明るくなる。
「そんな事でいいのですか?」
「おー。久しぶりだな。腕がなるぜ」
「騎士団の合宿を思い出すな!」
ん? やはりこの男達は正規の騎士団なのか。疑ってすまん。
「お願いしてもよろしいですか?」
「「「もちろん」」」
その後男達は五日ほどでクマを三頭捕え、領民達にクマ鍋とやらを振舞って領民達と和気藹々と過ごしていた。
やはりアリスフィア嬢の周りの人間に悪い奴は……っと近くにいたか。そろそろ婚約破棄の噂も聞こえてくる頃だろう。
166
あなたにおすすめの小説
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~
れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。
しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。
ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。
ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。
セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。
それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。
*前半シリアス、後半コミカルっぽいです。
*感想欄で所々ネタバレしてしまいました。
感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m
*他サイトでも投稿予定です
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます
よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」
婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。
「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」
「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」
両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。
お姉様からは用が済んだからと捨てられます。
「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」
「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」
ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。
唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。
ここから私の人生が大きく変わっていきます。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる