婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
80 / 93

隣国のパーティー

しおりを挟む

「アーネスト殿! 珍しいな。とうとう結婚を?」

 隣国の伯爵家のパーティーにアリス嬢と出席した。

「いや。残念ながらそうではなく、私の仕事を手伝ってもらっているのですよ」

 アリス嬢を紹介した。今日のアリス嬢は気品があってとても美しい。紺色と白の色合いはアリス嬢の肌の白さを引き立て、上品で、美しくも可愛らしく……褒め言葉しか出てこないのだ!

「こんな美しい人があんな辺境に? それは勿体無いな! 良かったらダンスを一曲、」

「えぇ、喜んで。アーネスト様よろしいですか?」

「もちろんですよ。すぐに戻ってきてくださいね」

 先ほどアリス嬢と一曲踊ってきたのだが、とても踊りやすくあっという間に終わってしまったのだった。アリス嬢がダンスをしている姿をぼぉーっと見ていた。軽やかにステップを踏む姿を見て胸が苦しくなる。努力の結晶なのだろう。と。


「アーネスト殿では無いか!」

「あぁ。テリー殿か、いつもワインを送って貰い感謝しているよ」

 この男は隣国の伯爵家の長男でそこそこ仲良くしている。ワインが送られてくるのでうちからは紅茶を返す仲だ。

「まさか一人ではないよな? パートナーは?」

 嫌味ったらしい男だな! 自分も婚約者がいないくせに今日は誰をパートナーにしているのか!

「ははっ。私の今日のパートナーは従姉妹だよ。デビュしたばかりで場慣れさせるためにね」

 聞いてないけどな。

「アーネスト様、お待たせしました」

「いえ。知り合いと話していましたのであっという間でした。ダンス素敵でしたよ」

「え! もしかしてアリスフィア・ブラック伯爵令嬢ですか?」

 テリーめ! 勝手に話に入り込むな!

「えぇ。そうですわ。あなた様はアーネスト様のご友人ですか?」

「はい私はテリー・ボールドウィンと言います。アーネスト殿とは仲良くさせて貰っています。ところでなぜ貴女がアーネスト殿と? まさか……婚約を?」

「その口を縫われたくないなら余計なことを口にするな! アリス嬢にはいま私の仕事を手伝ってもらっているんだ」

「ふふっ。そうですの。助手をしています。こうして隣国へ来られたのもアーネスト様のおかげですのよ」

「なんと! いつでも歓迎しますよ。そうだ、お近づきのしるしにダンスを一曲踊っていただけませんか!」

「アーネスト様よろしいですか?」

「……えぇ。一曲だけ踊ったらすぐに戻ってきて下さい」

 テリーのやつ、アリス嬢を知っていたのか! なんだ鼻の下を伸ばしてデレデレとしやがって! 

「それにしても彼女、綺麗だな。品もあって上品で笑顔が眩しい。この国にはいないタイプだな」

 そうなのだ。この国の女性はどちらかというと……よくいえば明るい。悪くいえば図々しい。控えめな女性は(失礼ながら)珍しいのだ。

「いいね、彼女」

「……あぁ。とても素晴らしい女性だよ。っと、テリー殿どこへ連れて行く気だ! すまないが失礼する」

 アリス嬢は苦笑いだったけど、テリー殿は舌打ちをした。

「人のパートナーを誘うなんてマナー違反だ! アリス嬢こちらに」

「はい。それではボールドウィン卿失礼しますね」

 エスコートをしドリンクコーナーへ行く。

「全く! 何か失礼なことを言われませんでしたか?」

 言われたのなら抗議してやる。国際問題だからな!

「いえ。大丈夫ですわ。あの時は飲み物を取りに行きましょうと言われてすぐに戻るつもりでしたのよ」

 それでも心配だ。その後数人の知り合いに声をかけられ、ダンスに誘われるアリス嬢だったが断りを入れた。

「アリス嬢は思ったよりも顔が知られていましたね……この国ではイエス・ノーをはっきり言っても失礼になりませんから、断りを入れても問題ありません」

「外交問題に発展、って単なるゲストの一人ですものね。疲れていても無理してダンスをする必要はない……」

 ぱぁっーと明るい顔になるアリス嬢。

「そうですよね。失礼のないようにお断りをすればよろしいのですね。今までダンスを誘われたら断ってはいけなかったので」

 王子の婚約者というのは国の顔でありダンスは接待のようなものだったのだろう。

「靴擦れをして痛くても笑顔でいる必要がない……足を捻って冷やしてでも踊らなくてはいけない事はないのですね」

「えぇ。勿論です。そんな辛い思いをしながらダンスを踊らなくて良いので、無理しないでください」

 聞いていると胸が苦しくなる。そこまでして踊らなくてはならんのか……

「はい。セーブしますね。でも失礼のない程度には頑張りますね」

 その後ダンスはセーブしたが、声をかけられることが多かった。ブラック伯爵は顔が広くアリス嬢も“お久しぶりです”などと会話を楽しんでいた。その顔はとても生き生きとしていて、まるで周りに花が咲いたような雰囲気になった。そして夜が深まる前に会場を後にした。

「アリス嬢、今日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました。こうして他国のパーティーに出られてとても勉強になりました」

「また勉強ですか? 真面目すぎますね。少しは楽しんでも良いのですよ」

「楽しかったですよ。ただ学びがあると思った分余計に楽しく感じたのでしょう……私はこういう生き方しか出来ないのですね」

「楽しみ方は人それぞれですから、良いと思います。宿につきましたね。明日は昼から少しこの町を散策しませんか? ワインが有名なのでお土産に買っていきましょう」

 キリッと辛いワインも良いが女性の好きそうな甘いワインも種類が豊富だから一緒に選ぶのも楽しそうだ。

 翌日テリー・ボールドウィンに邪魔される事になるが、とっておきのワインを土産にと渡された。テリーはアリス嬢に渡したのだが、一緒に飲みましょう。と笑顔をで言われて“楽しみですね”と返すとテリーに睨まれた。




******


 いつもご覧いただきありがとうございます。毎日更新を続ける予定でしたが、流行りのウィルスに感染してしまい高熱で朦朧としていますので数日更新が出来ません……数日後に復活します
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

セラフィーヌの幸せ結婚  ~結婚したら池に入ることになりました~

れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。 しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。 ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。 ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。 セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。 それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。 *前半シリアス、後半コミカルっぽいです。 *感想欄で所々ネタバレしてしまいました。  感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m *他サイトでも投稿予定です  

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...