田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの

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待ち人……来たる

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 レオが怖い。
 身長が伸び声も低くなった、お日様の匂いもしない、男の人の香水の香り。

「お願い、だから、離して」


「これからセイラに恥じないように生きる。一緒に故郷で過ごそう」


 何も言えないでいたら、体をくるりと向かされレオと対面する形になり、そのまま抱きしめられた。

「いやっ!」

 両腕でレオを突き放そうとするけれど、びくともしなかった


「セイラ、好きだ」

 顔が近づいてくるのが分かる。その後の展開も……


「やめてっ」

 そんなレオの顔を見たくなくて、目を瞑り顔を下に向けた


「やだっ!」



 助けて、助けて、ウィルベルト様



……思い出したのはウィルベルト様だった







「おいっ! 何をしている! セイラから離れろ」


 ウィルベルト様、来てくれた。その時に緊張の糸が解けたように力が抜けた



「ウィルベルト、さま」



 ウィルベルト様の顔を見てほっとしたのか涙が溢れてきた。急いで来てくれたんだろう、呼吸が乱れていた。
 ウィルベルト様に手を伸ばすと、しっかりと私の手を掴んでくれて、レオから引き離された。



「何の用だ? ウィルベルト・オリバス」


 レオの怖い声、ウィルベルト様に優しく肩を抱かれた


「貴様に用はない」



「セイラは俺がいるのに浮気をしていたのか?」


「お前と一緒にするな! お前との関係などもうないだろうが。今までセイラの事を放って自分勝手に遊んでいて、今更惜しくなったのか?」


「セイラに聞いているんだが?」


 レオが怖くてウィルベルト様の胸に顔を埋めた


「震えている、可哀想に」


 ぎゅっとでも、優しく抱きしめてくれた。ウィルベルト様の心臓の音を聞いていたら落ち着き始めてきた


「セイラ領地へ帰ろう。前のように自然豊かな場所で、魚を釣ったり、のんびりと暮らそう?」


 何を勝手な事を言っているんだろう



「帰らない。レオとは帰らない。領地をバカにしたじゃない! 勝手な事を言わないでよ」

「セイラ……?」


 懲りずにまた触れようとしてきた


「触らないで! 私の知っているレオはもういないの。これ以上レオの事嫌いにさせないでよ」


「そんな……セイ、ラ」


 掠れた声で私を呼ぶ声、もう私の好きだったレオはいない



「こんな事をセイラに言わせたかったのか? おまえは最低な野郎だな、セイラに振られて満足したか?」
 

 ウィルベルト様の凍るような声


「おまえとセイラでは芯の強さが違う。考え方も違う。セイラは変わらないのではない! 領地に誇りがあるんだ、だから美しい。おまえはコンプレックスの塊だ、だから流されやすい」

「ウィルベルト・オリバス、おまえに何が分かる?」


「セイラが好きなのにその存在を隠して女と遊んでいた。どれだけセイラを傷つけた? 勉強もやれば出来るくせに努力も放棄した。おまえは何がしたくて学園にいるんだ? 将来の為に学園で学ぼうとは思わなかったのか? 将来はセイラと結婚するない? バカな事を言ってセイラの将来を潰すな」


「セイラとの結婚は幼い頃から決まっていた。おまえは田舎暮らしをした事がないくせに偉そうな事を言うな!」


「田舎の良さを知っていて、王都での暮らしを受け入れられるセイラを見て、それでもそんな事を言えるのか? 領地の話をする時のセイラはとても楽しそうで、行った事はないが、ルフォール領の領民はきっと幸せなんだろうと思った。おまえこそ分かったような口を叩くな」



「ウィルベルト様」

 ウィルベルト様が言ってくれたことが嬉しくて、そっとウィルベルト様を見上げたら、うっと声を上げてポケットチーフを顔にかけられた


「悪い。ちょっと顔を隠しててくれ」


 顔を隠す? 泣いた顔が酷いのだろう


「レオ・ファーノン、おまえと話し合う必要性はないようだな。二度とセイラに近づくな! おまえの行った行動は責任を取ってもらう、十分反省しろ。おまえが去らないのなら失礼する」


 そのままウィルベルト様に肩を抱かれたまま歩き出しました。




「悪い、遅くなって」

 謝られたけど、ウィルベルト様は助けに来てくれた。約束をしたわけではないのに

「悪い……顔に、チーフを、掛けたままだったな」


 ぷっと吹き出すウィルベルト様


「歩きにくいと思ってました……ウィルベルト様、ありがとうございました、助けに来てくれて、嬉しかった」


「座れるところへ行って落ち着こうか?」


 手を繋がれてドキドキしたけれど、ウィルベルト様が笑っていたので、大丈夫。
 あんな事があったから余計に笑顔を見せてくれる。そういえば協力してくれるって言っていた、レオとの関係は今日で終わった。


 だからウィルベルト様との関係も終わりなのかもしれない。そう思うと寂しくなった

 連れて行かれた場所は、ガーデンの小さな噴水があるところだった。


「少し冷やしたほうがいい」


 顔を隠されたチーフを水で冷やして、目元に当ててくれた。


「ウィルベルト様。ありがとうございました」

「それはさっきも聞いた。出来ればあいつの話は忘れたい。腹が立ってしょうがない」


「はい、そうですね」


「せっかくの舞踏会なのに、遅れてしまった……」

「珍しいですね、遅刻だなんて」

「今更だけど、そのドレス君にとても似合っている」

 レオに褒められた時とは全く違う感情……嬉しくて、少し照れる

「ありがとうございます。ウィルベルト様もとても素敵です」

 いつもと違う髪型、前髪を半分上げて撫でつけるスタイルに、シルバーグレーのタキシード。

 助けに来てくれた時はとてもかっこよくて王子様のように思えたのは内緒です。


 






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