【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの

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バカンスの離宮(ウェズリー)

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 白が基本で所々に王族の紋章が彫刻してある。王家所有! と言う重苦しい雰囲気……


 バカンスを楽しむというか、王家の自慢を見ろ! っと言ったところか……ここで国の高位貴族はバカンスを過ごし優越感に浸るのか……信じられない。


 バカンスとはのんびり過ごす事だと思っていたがどうやら見当違いだったようだ。



 我が国が今作っているリゾート地は海のすぐ側で、波の穏やかさに心を落ち着かせたり、夕日が落ちる様や海面が真っ赤に染まる美しい風景を見て癒されるための場所だ。


 さすが高位貴族と王族が権威を振るう国だと改めて感じた。ミシェルが身分を気にする訳だ……。


 お茶を飲みながら、ここでの話を聞いた。この離宮は広く、私達の他にも数組のゲストがいるらしい。晩餐はみんなで交流を深めるために取るのだそうだ。

 最後に警備は万全なのでご安心してお過ごしくださいと案内人は言った。


「他のゲストが居るとは聞いてなかったから面倒だね。当初よりも早く切り上げても良いのかもしれない」


 五日ほどの滞在予定だった。他のゲストが誰だかわからないが、高位貴族である事は確実だ。


 ミシェルに言うと、苦笑いしていた。緊張しているのだろうかいつもより笑顔は少ない。


 改めてミシェルを見るとシルバーの髪にピンクの瞳は可愛らしいが、もうすぐ成人を迎える十六歳になる。


 顔つきは愛らしいにも関らず、ふいに大人のような顔をすることがたまにある。

 ちょうど少女から大人になる時期なんだろうと思う。



 立居振る舞いは侯爵家で身につけたもので高位貴族にも引けなんて取らないし、恥じるところは一切ない。

 素直な性格ゆえ真面目に学び、借りている屋敷で妃教育をしている教師は褒めていたし、屋敷の使用人も皆ミシェルを認め屋敷の雰囲気も良い。何より私を信頼してくれているし、私もミシェルを信頼している。


 おかしいのはこの国なんだろう。ミシェルは自分の世界が狭かったと言った。
 私もそうだったのかもしれないが、恵まれていたんだろう。


 この離宮で過ごす貴族達がミシェルに害を及ぼさなければ良いのだが……。




「そろそろ部屋を見てくる?」

「はい、そうですね」


 案内人が部屋へと案内してくれた。部屋へ入ると広い室内に高い天井。無駄に豪華な室内で目が眩みそうだった。


「来客用のお部屋で一番良いお部屋を陛下がご用意しました」


 案内人に言われたが落ち着かない部屋だ。と思った。それに……



「わたくしも同じ部屋、ですか?」



 同じ部屋とはいえ、扉で行き来できる構造だった。気を遣ってくれたのか、そう言うものなのか分からないが結婚前の男女だぞ! どうしてくれるんだ! と言う気持ちになったが、気持ちを抑えた……。


「……同じ空間に居るだけだよ。メイド達もいるし過ぎたことはしないと誓うよ。鍵もついているし、内鍵をかけてくれ」


 ミシェルのおでこにキスを落とし安心させた。

「はい、そうですよね。気にし過ぎました、恥ずかしいですわ」



 ……気にはしてくれたんだ。頬を染めて可愛いじゃないか! 目が眩みそうになったのは言わないでおこう。


 豪華絢爛の広い部屋のバルコニーだけは気に入った。

 湖や木々が美しく見えるから。

 湖面から吹き込む風によって涼しく感じる。



「ミシェル疲れてる?」


「いえ、平気です」


「せっかくだから少し散策に行こうか?」

「はい! 良いですね」



 部屋にいると無性に意識してしまいそうで外の空気を吸いに行くことにした。

 ラフなシャツとベストそれにトラウザーズに着替え、ミシェルはワンピースに着替えて帽子を被っていた。



「そういうワンピースも可愛いね、似合っているよ」

「ウェズリー様も素敵です!」


 お互いにバカンス様の服に着替えた。


 南の国の服装とはまた違って新鮮だった。



 ミシェルは南の国にいる時は、南の国の衣装を好んでよく着ていた。生地は軽くて数枚重ねていても軽いものだ。だから涼しい。

 女性用のパンツも同じ素材で作られていて軽くて動きやすいのだが、この国で淑女がパンツを履くことはあり得ないのだそうだ。




「この国の夏は熱いね……髪の毛を切った方が良いのかもしれない」
 

 漆黒の髪は長くなり軽く編んでいる三つ編みは肩に流されている。



「お似合いなのに、勿体無いですね」

「この髪型? ミシェルは好きなの?」

「はい。南の国特有なんですかね? こちらでは見かけませんね」

「そうかもしれないね。長くしているのはお守りみたいなものかな、結婚後は切る者も結構いるよ。兄達も切ったからね」


 さっぱりした! と兄達は言っていた。


「そうですね。お義兄様達の髪は短かったですものね」


 ミシェルは兄達をお義兄様と呼ぶ。兄達がそう呼んで欲しいと言ったからだ。

 兄達はミシェルの存在を喜んでいるしそれは私にとっても嬉しいことだった。



 この国の男女は肌が白いことが自慢らしい。ミシェルは元々色が白い為、焼こうとしてもすぐ赤くなりじきに戻る。

 南の国は少々の日焼けをすることにより健康的に見られるので、貴族達も焼けているものは多い。白すぎると青白く病弱に見られることさえある。


 私は他国の人間だし王族だから杞憂に過ぎないが、肌の色で問題を抱えるものがこの国では居そうだなと思った。







 





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